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演劇の練習は、ほぼ毎日行われた。役のある生徒は全員参加していたのだが、やはり練習のメインとなるのはシンデレラと王子様。夏澄と彩愛は二人で生徒たちの中心になって、愛し合うシンデレラと王子様を演じる。
休憩になっても、彩愛は夏澄のもとを離れなかった。彼女はどんどん夏澄に話しかけて、距離を詰めていく。
「乙津くんって演劇やっていたの? すごく上手だよね」
「いやあ……そうかな。僕はこういうのあんまり得意じゃないんだけど」
そこに、一人の女子生徒が突っ込んでくる。「でも、モデルやってたから演じるの得意じゃないの?」と言って。
「え、乙津くんってモデルやってたんだ?」
「本格的なものじゃないよ。バイトくらいの感覚で」
「すごいね。なるほど、そりゃカッコいいわけだ!」
きゃいきゃいと話す三人を遠巻きに楪は眺める。じとっと影を被るようにしながら。
「あ……僕、楪と、」
「そうだ、乙津くん! このあと一緒にご飯行こうよ!」
「ええっと」
「あ、用事あった?」
「いや、大丈夫だけど……」
ああ~、これまずいやつかな。
ふいに夏澄は、少し前のことを思い出す。二人でスタバに行く約束をしていたのに、女子生徒の誘いを断り切れなかった。そして、楪が怒ってしまった。
今は、楪と約束はないものの、似たような状況に感じてしまう。
「ゆ、楪! 一緒に行こ!」
遠巻きに自分を見ていた楪に、夏澄が大声で言う。その言葉に、彩愛たちもハッとしたようだ。「深見くんも来て!」と笑顔で楪を誘う。
しかし、楪はじーっと見ているだけで黙り込んでいる。
あー、これ怒っているやつ! と思った夏澄は慌てて「ごめん! やっぱり今日行けない!」と彩愛たちに言うのだった。
夏澄は楪に駆け寄って、ガバッと抱きつく。「う」と言いながら、楪は夏澄を受け止めた。
「今日は一緒に帰ろうね、楪」
「なんで? 松山さんたちと一緒に行けばいいじゃん」
「だって、楪、いやでしょ?」
「いやなんて言ってないけど……」
楪は「いやとは言っていない」と頑なに言う。しかし、その声がどこか安心したような色をしていて、夏澄は、断ってよかったとホッとした。
監督役の生徒が「はい、そろそろ練習再開しま~す」と声をあげる。二人は慌てて、自分の位置に戻った。




