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犬が転生したら飼い主と同級生になった件  作者: さく
第四章

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 演劇の練習は、ほぼ毎日行われた。役のある生徒は全員参加していたのだが、やはり練習のメインとなるのはシンデレラと王子様。夏澄と彩愛は二人で生徒たちの中心になって、愛し合うシンデレラと王子様を演じる。


 休憩になっても、彩愛は夏澄のもとを離れなかった。彼女はどんどん夏澄に話しかけて、距離を詰めていく。



「乙津くんって演劇やっていたの? すごく上手だよね」


「いやあ……そうかな。僕はこういうのあんまり得意じゃないんだけど」



 そこに、一人の女子生徒が突っ込んでくる。「でも、モデルやってたから演じるの得意じゃないの?」と言って。



「え、乙津くんってモデルやってたんだ?」


「本格的なものじゃないよ。バイトくらいの感覚で」


「すごいね。なるほど、そりゃカッコいいわけだ!」



 きゃいきゃいと話す三人を遠巻きに楪は眺める。じとっと影を被るようにしながら。



「あ……僕、楪と、」


「そうだ、乙津くん! このあと一緒にご飯行こうよ!」


「ええっと」


「あ、用事あった?」


「いや、大丈夫だけど……」



 ああ~、これまずいやつかな。


 ふいに夏澄は、少し前のことを思い出す。二人でスタバに行く約束をしていたのに、女子生徒の誘いを断り切れなかった。そして、楪が怒ってしまった。


 今は、楪と約束はないものの、似たような状況に感じてしまう。



「ゆ、楪! 一緒に行こ!」



 遠巻きに自分を見ていた楪に、夏澄が大声で言う。その言葉に、彩愛たちもハッとしたようだ。「深見くんも来て!」と笑顔で楪を誘う。


 しかし、楪はじーっと見ているだけで黙り込んでいる。


 あー、これ怒っているやつ! と思った夏澄は慌てて「ごめん! やっぱり今日行けない!」と彩愛たちに言うのだった。


 夏澄は楪に駆け寄って、ガバッと抱きつく。「う」と言いながら、楪は夏澄を受け止めた。



「今日は一緒に帰ろうね、楪」


「なんで? 松山さんたちと一緒に行けばいいじゃん」


「だって、楪、いやでしょ?」


「いやなんて言ってないけど……」



 楪は「いやとは言っていない」と頑なに言う。しかし、その声がどこか安心したような色をしていて、夏澄は、断ってよかったとホッとした。


 監督役の生徒が「はい、そろそろ練習再開しま~す」と声をあげる。二人は慌てて、自分の位置に戻った。



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