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――シンクとの約束を、いきなり破ってしまった。
突然見知らぬ転校生に「ご主人さま」と呼ばれた楪は、ギョッとした顔で見ていた。それは、周囲の生徒も教師も同じだった。
(や、やってしまったー!)
転入の挨拶もろくにせず、楪に突進していった転校生。挙げ句の果てに「ご主人さま」呼びである。どこのご令息だ。どこの時代だ。誰がどうみても「ヤバイヤツ」である。
けれど、やってしまったのだから仕方ない。
ずらりと並んだクラスの生徒たち。そのなかで一際輝く一番星のような生徒。一目見た瞬間にわかったのだ。あれが「深見 楪」だと。あれが「ご主人さま」だと。
もう200年も待っていた。たった一人の大切な人。とにかく抱きしめたい、とにかく話したい! そんな想いは止められるはずもなく、頭のブレーキは一切かからず、全速前進。
楪は完全に固まってしまっていたが、夏澄はめげない。周りの白い視線なんか気にしない。
「きみ、深見 楪だよね! 僕、乙津 夏澄! 友達になろう!」
「えっ……、なんで俺の名前……いや……なんで?」
ごほん、と先生が咳払いをする。そして「乙津くん、こっちで挨拶を」と教壇に来るように促した。
まあ……初手でちょっとやらかしたけど、大丈夫かな? そんなことを思って、夏澄は「はあい」と返事して教壇に戻るのだった。




