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犬としての生を終えて、約200年。命は巡り巡って――ようやく訪れた「ご主人さま」と同じ時代に生きるこの身体。
元、犬――今は、乙津 夏澄という名の高校生。運悪く生まれた地は「ご主人さま」と離れてしまったが、カミサマのあつらえにより、転校生として「ご主人さま」と同じクラスにしてもらうことができた。
「おい、マメ。張り切りすぎはよくないぞ」
「大丈夫、人間としての暮らしも板に付いてきたし。変な行動はとらないよ」
シンクがけだるそうに夏澄に声をかける。
シンクは、カミサマの使い・天使だ。元犬であるマメが、転生後の世界を滞りなく生きていけるようにサポートする役割をもっている。
そもそもマメが夏澄として転生できたのも、シンクのおかげだ。天使は、まっとうに生きた生物を選び、転生するチャンスを与える。それに選ばれたのがマメというわけだ。マメは死に別れた「ご主人さま」を今度こそ幸せにしたいという想いを胸に、今世に生まれ変わった。
「ご主人さま……今の時代は、深見 楪って言うんだよね。ふふ、会えるの楽しみだなあ」
「たぶん、見た瞬間わかるぜ」
「そうなの?」
「オマエと深見 楪は、縁のある存在だからな。会えば、ビビッとくるわけよ」
「ふうん。ご主人さまも、僕を見てビビッとくるのかな?」
「それはどうかね。あっちは天使の介入がない。オマエの記憶も全くないはずだ」
「そっか……。それは残念だけど……そうだな、友達になれたらいいな。僕、がんばってくるね!」
靴を履きながら「バイバイ」と手を振る夏澄に、シンクはハイハイと返事をする。
まるで尻尾を振っている犬のようなその後ろ姿に、シンクは苦笑するのだった。




