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おはよう、ゆずちゃん。
楪が居間まで下りてくると、祖母と祖父が迎え入れてくれた。すでに朝食ができあがっている。
白いご飯と焼き鮭、それからお味噌汁。ふわっと広がるお味噌の匂いが朝を告げている。
楪が座ると、三人そろって「いただきます」をした。
音量が大きなテレビからは、朝のニュースが流れている。海開きが行われました。みてください、こんなに人が! こちらの方にお話をうかがってみましょう。こんにちは~!
もぐ、と楪は焼き鮭を口に運ぶ。朝一番には塩辛い鮭が食べたくなる。鮭と白いご飯の組み合わせがよい。これを食べると頭がキリッとする。
お味噌汁で食事を締めて、ごちそうさま。朝はあまりゆっくりしていられないので、せっかくのご飯をじっくり堪能はできない。ちょっともったいないとも思う。
楪は立ち上がると、仏壇の前に座る。百円ライターで線香に火をつけて、香炉にさす。りんを二回鳴らして、手を合わせる。
「いってきます。お父さん、お母さん」
顔をあげれば、遺影に映る父と母が微笑んでいた。「いってらっしゃい」と言ってくれているようだ。
――父と母は、楪が中学生のころに交通事故で亡くなった。車の正面衝突だった。後部座席に同情していた楪は無事だったが、父と母は緊急搬送された病院で亡くなってしまった。
それからというものの、楪は誰かと親しくできなくなってしまった。失うのが怖いのだ。大切な大切な人を失ったときの悲しさ。怖さ。それに、これ以上耐えきれる気がしなかった。
だから、楪は他人を拒絶する。人と距離をとる。祖父と祖母にすらも。
「いってきます。おじいちゃん。おばあちゃん」
祖父と祖母が「いってらっしゃい。気をつけてない」と笑った。彼らは、よそよそしい態度をとる楪にすらも、とてもやさしかった。




