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全裸の魔女と世界を救う話  作者: 火海坂猫
第一部 

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番外編 全裸の魔女のバレンタイン

イベントごとの番外編とか書くつもりはなかったけどなんか思いついてしまったので。短めだけど楽しんで頂ければ幸いですが、書き終えてなんでこんな話を書いてしまったのだろうと思わないでもないです。

 世界がこんな風になる前にあったイベントごとは有名どころに限ってではあるけど今でも行われている。そんなことは資源の無駄だと議論されたこともあったらしいけれど、閉鎖された空間ではどうしても生活が閉塞的になってしまうのでそういったイベントがある方が都民の精神安定にはいいだろうと結局は盛り上げる方向へ傾いたらしい。


 そんなわけで東都ではイベントごとは都も予算を出して盛り上げる…………今日のようなバレンタインもその一つだ。そもそもの由来は別の国のものだし、流行った理由も菓子販売企業の戦略らしいけれど崩壊前の世界でも毎年行われるほど定着したイベントだったようだ。


 好きな相手がいる女性が異性に対してチョコレートを贈る。告白の後押しをするのにはもってこいのイベントなので、孤児院でも毎年その時期には男女ともに盛り上がっていた。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか…………」


 そんな風に世間が盛り上がっているその日に、僕は少しばかりの不安を胸に結の暮らす倉庫へとやって来ていた。それは当然ながら彼女からチョコレートを貰えるかどうかに対する不安ではない。自意識過剰ではなく結は僕にチョコレートをくれるだろう。ただ問題はそのチョコレートをどんな渡し方をされるかなのだ。


 長年孤独に苛まれていたせいで彼女の僕に対する感情は常軌を逸…………いささか過激になっているし、性癖がもうちょっと落ち着いて欲しい感じになっている。例えばであるが全身にチョコレートを塗りたくってわたくしがプレゼントとか言いだしてもおかしくはないのだ。


「いらっしゃい、なの」


 しかし僕を出迎えた結は意外というか何でもない様子だった。もっとこう、なんというかすごいアピールしてくると思っていた僕としては肩透かしだ…………実は僕の自意識過剰だったのだろうか。


「その顔は困惑している顔なの」

「…………そんなことないよ」

大方奇抜きばつな発想でチョコレートを渡されるとでも思っていた顔なの」

「…………ソンナコトナイヨ」


 思わず繰り替えす声が上ずったのは聞かなかったことにして欲しい。


「どう見ても嘘の反応なの」


 呆れるように結が僕の顔を見る。


「大方わたくしが体にチョコでも塗りつけていると想像していたの」

「はは、まさか…………」


 あくまでやりかねないと思っていただけだ。


「流石にわたくしもそんなドン引きされるような真似はしないの…………変に騒がれる方が嫌がると思ってちゃんと普通のチョコレートを用意してあるのよ」


 そう言って結は手に持っていたチョコレートの包みを持ち上げて見せる。綺麗にラッピングされたそれは奇抜な点はどこにもなく…………ごく普通のバレンタインの贈呈用チョコレートだ。


「ええと、なんかごめん」


 見透かされている以上は誤魔化すのも不誠実だろうし僕は謝罪する。


「そうだよね。いくら結にが少しばかり露…………裸を見せる趣味があってもそんな馬鹿な真似はしないよね」

「別にわたくしはもう開き直っているのだから露出狂と言われても問題は無いのよ?」


 むしろ開き直らないで欲しかったと僕は思う。


「それに陽は一つ勘違いをしているの。確かにわたくしは露出狂ではあるのだけど…………だからこそその肝心の裸体をチョコレートでコーティングしたら何の意味もないのよ!」


 どん、とその後半を勢いよく結が言う。ああ、そうですかという以上の感情は僕には浮かばなかった。


「ええとまあ、とにかくありがとう」


 僕はうやむやにして結からチョコレートを受け取ろうとする。


「ちょっと待つの」


 しかし結はそう言うとチョコレートを引いて僕の手から遠ざける。


「チョコレートは食べるもの。つまりコーティングされたチョコレートを陽が舐める事で少しずつわたくしの裸体が露出する?」


 なんかもう僕の理解し難いことを今気づいたように結が口にする。


「それは何というかとても興奮する気がするの。その先を考えていなかったとはわたくしの想像力の欠如なの…………とてもありな気がするのよ」


 僕としてはとてもなしだと叫びたい。


「陽、一時間後にもう一度来て欲しいの」

「そのチョコレート今すぐ受け取れないなら今日はもう帰って二度と来ない」


 結と出会ってからしばらく経つけれど、その日初めて僕は彼女を突き放すような言葉を口にした。


「ひ、ひどいの。わたくしの夢を奪うの?」

「来ない」


 いつ夢になったんだと思いつつ、僕は断固とした決意で拒否を示した。


 お読み頂きありがとうございます。

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