4話 魔王様(女)の料理は危険度MAXらしいですよ?
「〜♫」
キッチンから煮込む音や、トントンとリズムの良い音が聞こえてくる。…相変わらず何かの断末魔が聞こえてくるけど…。だけど僕は、女性の作った食べ物なんて母さんのしかない。心なしかワクワクしていると、隣の残イケが青い顔をしている。…てか、そろそろ残イケの名前覚えないとなぁ〜…などと考えてると、彼はこちらを向き口を開いた。
「お前…魔王様の料理スキル知っているのか…?」
「…?知らないけど?」
その顔は、自分の死を悟っているような…いや、もうどこか諦めているような顔をしていた。…どうしたのだろうか?と声をかけようとしたら…
「出来ましたよ!」
「おぉ!」
「………」
彼女はキッチンから鍋などを運んできた。煮物か味噌汁かカレー等かなど色々考えているうちに鍋の蓋が開かれた。
「………え?」
鍋の中には、紫色のドロッとした液体が入っていた。液体の表面から、まるでマグマのような泡立ちをしていた。具なのかは分からないが、何やら目のような物が入っている…。
「魔王様は…絶望的に”料理音痴“なんだよ…」
いや…これは料理音痴のレベルではない気がする…。どうやったらこういう料理が出来上がるんだ…。さすがにこれ食ったら僕死んじゃうよ…?
「これは愛の試練だこれは愛の試練だ…」
なんか残イケがブツブツ言っている。魔王様を見ると、それはもう女神ではないかと錯覚してしまいそうな美しい笑顔をしている。…魔王だけど…。
「うぉぉぉぉ!ゴクンッ!…ガハッ!」
「!?」
この瞬間、儚い命が一つ散っていった…。なんか痙攣して白目を向いてるんだけど…。この料理で世界征服出来んじゃね…?
「…?グンセオさんはどうしたんでしょうか…?」
「多分魔王様の料理が美味しすぎて夢心地になっているんですよ」
「…!本当ですか…?」
彼女が彼のことを心配そうに見ている。良かったなグンセオとやら、死んでからだけど最愛の人に心配してもらえたよ。…元凶だけど。それよりマズイ事になった。これを食べたら間違いなく僕は死ぬだろう。しかし、食べなければ彼女を悲しませる。それは絶対に嫌だ。
「菜糸君?どうかされました?」
どうする…?この絶望的な状況を打開するには…。その事を考えていたら、さっき気絶したグンセオが目に入った。
「…………」
この時僕は、自分は悪魔なんじゃないかと思った。。。
「魔王様…グンセオがもっと食べたいらしいですよ?」
「!?」
僕はこの時、これ以上ないくらいの笑顔でグンセオの処刑を告げたのだ。グンセオは、僕の言葉で意識を取り戻したようだ。ちっ!勘のいいヤツめ…!
「おまっ!?何言ってるむがっ!?」
余計な事を口走る前に僕はグンセオの口を押さえた。さっきの料理のおかげであまり力が出せていないようだ。助かった。
「本当ですか…?」
「〜〜〜〜!!?」
はい、落ちた。魔王様の必殺、無意識上目遣いが炸裂した。魔王様は無意識にやっているようだが、それが逆にタチが悪い。魔王様に上目遣いされた者は、どんなヤツだろうと必ず落ちてしまうだろう。だから、僕は魔王様の上目遣いをした瞬間目を逸らしたからセーフだ。
「魔王様のためなら…うぉぉぉぉぉぉ!!!ゴクンッ!…グハッ!?」
デジャヴ…。でもあの一瞬で鍋の中ごと食べるとは…グンセオ…意外とやる男のようだ。少しだけ見直したよ。僕も死なずに済んで良かったよ。君は僕の命の恩人だ。
「すごいです…全て食べてしまわれました…。これでは菜糸君が食べられる分が無くなってしまいました…」
「ううん大丈夫!僕はその気持ちだけで十分だから!」
「菜糸君…!」
彼女は嬉しそうな顔をした。これでみんな幸せになれた!…一人以外。
「じゃ、じゃあ僕部屋に戻るね」
「分かりました!」
僕は魔王様にそう言い残し、グンセオを担いでその場を後にした。流石にその場に置き去りにできないからね…。
◇ ◇ ◇
「ふぅ〜…」
何だかんだ色々あって、やっと落ち着ける状況になった。ベットに横になり、これからどうするかな…等考えていたら、ドアをノックする音が聞こえた。
「ん…?」
「あの菜糸さん?僕です、グンセオを前に回収したメイガルです」
あぁ、以前グンセオに絡まれた時に助けてくれた人か。なんか背中の服が破けていたのが印象的だ。
「今開けます」
そう言い、ドアを開いたら、そこにメイガルが立っていた。
「どうかされました?」
「いや、グンセオが何か倒れている気がしたので回収しにきました!」
この人、何かレーダ的なものを持っているのか…?そんな事を考えている間に、メイガルはグンセオを担ぎ、「お騒がせしました〜」と言い、どこかに言ってしまった。まぁ、倒れる原因作ったの僕だけど…。てか回収って物だと思っているか…?あんなに優しそうなのに闇の深い…。
「はぁ〜…僕これから生きていられるかな…?」
何回命の危機に瀕したか分からなくなってきてる。とりあえず明日も死なずに頑張ろう…そんな事を心の中で決心した…。
遅れてまい申し訳ありませんでした!!!