5話 魔王様(女)の知り合いらしいですよ?
「………暇だ」
僕は自分の部屋で一人そんな事をこぼしていた。この世界の“娯楽”は他種族を殺すというものだ。なにそれ怖い…。もちろん僕にそんな事を出来るはずもなく、自分の部屋でずっとゴロゴロしている日々だ。
「スマホはあるんだけどなぁ〜…」
そう、この世界には“インターネット”なるものが無いのだ。スマホの電波の部分を見ても圏外になっており使えない。もちろんゲームなども持ってきてるはずもなく…つまるところ僕にとっての”娯楽“が無いのだ。
「なんか面白いことないか…な…?」
「……………」
「!?」
僕が寝返りをすると、目の前に小学生くらいの女の子の顔が現れた。髪が透き通るような青色をしており、とても印象が強い。どこから現れたんだ…と思っている間にも彼女はこちらをじっと見ている。何か言わなければ…何故かそんな気がしてくる。
「えっと…君は誰?」
「…………」
「あの……」
「……………」
いや、何か喋ってよ!?こっちが気まずいわ!!僕のそんな気持ちなんてつゆ知らず彼女はこちらをじっと見ている。そんな気まずい空気を…
くぅ〜
「…………!」
ある音が壊した。今の音は…
「さっきの音、君の?」
「…………」
彼女の顔がみるみるうちに赤くなっていき、目も泳ぎ始める。先ほどの無表情からのギャップは僕にとっては大ダメージだった。
(か…可愛いすぎる…!!)
顔を抑え、僕は悶絶した。彼女は、小さな手をお腹に当てて、どうにか音を消そうとしている。そんな仕草も可愛くて仕方がない。
「お兄ちゃんと一緒にご飯行こうか?」
「…………!」
彼女は一瞬目を輝かせたかと思うと、また無表情になり小さく頷いた。てか、さっきのセリフ聞きようによっては危ないんじゃ…などと僕は彼女の手を引きながら考えていた。
◇ ◇ ◇
僕は女の子を連れて、食堂に来ている。厨房には何か小さな魔物がいて、今日の夕食の仕込みをしているようだ。
「あの〜…何か食べられる物ありますか?」
仕込みをしていた魔物に聞いてみる。魔物はこちらを向きコクリと頷くと、冷蔵庫らしき機械から何かを取り出した。見てみると、今日の昼食の残りだった。トンカツにサラダ、米に味噌汁と僕に合わせて作ってくれた料理だ。確かこれはグンセオの分だった気が…。あいつ生きてるかな…?
「ありがとうございます」
魔物達にお礼を言って彼女の元へ戻る。彼女は、まだ彼女の背丈に合っていない椅子にちょこんと座っている。顔は無表情なのに、足を揺らしたりしており、ソワソワしているのが分かる。
「お待たせ。たくさん食べてね」
彼女の目が側から見ても分かるぐらいの煌めいた。僕はテーブルに肘をつき、彼女を微笑ましく見ていると後方からドアが開く音がした。
「お腹すきました〜…」
ドアを開け、食堂に入ってきたのは魔王様だった。心なしか元気がない。目の下には隈があり、足元もおぼつかない。確か最近、奇妙な事件が起こっており、そのせいで魔王様の仕事が増えたとか…。
「あっ…!菜糸君〜!!」
「…!?」
魔王様はいきなりこちらに走ってきて、僕に抱きついた。顔を僕の胸に擦り付け、見ていると猫を思い出す。お腹触ったらゴロゴロって言うのかな?まぁ、そんなことしたらグンセオに殺されるけど。
「菜糸君で充電中〜…」
「僕は電池ですか」
「菜糸君は電池じゃないですよ?」
「知ってますよ!?」
僕はそこでふと女の子の事を思い出した。見てみると、お皿の上には綺麗サッパリ何も残っていなかった。あれ…?さっきの料理の量は確か高校生基準だった気がするぞ…?
「これ一人で食べたの…?」
「…………」
彼女はコクリと頷く。まじか…これ僕でも食べると腹苦しくなるんだけど…?そんな量を小さな女の子が一人で平らげ、平然としてるって…何か負けた気がする…。そんなどうでもいい事を考えていると、魔王様が女の子の存在に気がついた。
「あれ…?シュリじゃないですか!何かご用ですか?」
「…………」
彼女はコクリと頷くと、僕の方を向き指差した。えっ?何?どうしたの?
「…この者の様子を見にきた」
その顔は先ほどの無表情に変わり、目の温度がすごく冷たいのを感じた。でも、今の僕が気になっている事はそんなことではない。
「えっ…?君喋れたの?」
「当たり前じゃ」
「……………」
何でだろう…何かすごく悔しいんだけど…?何か子供にしてやられた感が激しくてすごく悔しい…。
「じゃあ、何でなかなか話してくれなかったんだ?」
「話す必要が無いと思ったのでな」
たしかにそうですけど〜…!!そして彼女は、コホンと小さく咳払いをして先ほどまでの会話を終わらせると、本題に入り始めた。
「さてと、わしがここにきた理由じゃが…最近どうも周りの魔物が騒がしいのじゃ」
「でもシュリが住んでる場所の近くの魔物はおとなしいはずですよ?」
「そうなんじゃが…魔物が騒がしくなったのは最近の事じゃ」
話を聞くと、いつもおとなしい魔物が互いに争いを始めたり、シュリが育てた作物を食い荒らしたりするなど、暴れまわっているようだ。そこで、魔王様に何か起こったのか確認しに来たという事だったが…
「それなら何故僕の部屋に…?」
「ついでだから、魔王様の伴侶を一目見ておこうとお思ったのじゃ」
ついでって…。まぁ、今はこの話は置いておこう…。しかし、何故急に魔物が…?そんな事を考えてると、魔王様が口を開いた。
「心当たりは…あります。しかし、この話は私の部屋で…」
もしかして、結構やばい事なのか…?シュリもただ事では無いと感じとったようだ。それもそうだ。わざわざ自室に呼び出しての説明だ。ただ事のはずがない…。僕とシュリは、緊張を感じながら魔王様の自室に向かった…。




