18話 魔王様(女)の四天王の一人は怒ったら怖いらしいですよ?
「えっと……メイゲルさん……?」
起き上がったと同時に、メイゲルに似つかわしくない汚い口調だった。えっ、何?怖いんだけど……?メイゲルの目は、ここに来た時の優しい目ではなく、鋭く、相手を殺さんばかりに睨みつけている。
「また始まったか……」
「あ〜あ……私、知〜らないっと……」
「おいおい……アイツ止めんの結構大変なんだぞ?」
四天王の人たちが、そんな不穏な会話をし出した。得体の知れない寒気が僕の背中をなぞる。やばい。僕は本能的にそんな事を思った。
「あぁん?お前はグリサルにやられたやつじゃねぇか?」
化け物はメイゲルの姿を見た瞬間、訝しげに顔をしかめた。それはそうだ。自分が来た時に伸びていた奴が、こちらを射殺さんばかりに睨みつけているのだから。
「…………」
メイゲルは黙っている。化け物はメイゲルの行動を警戒して動けないでいる。すると、メイゲルはゆっくりと腕を上げ、化け物に照準を合わせるようにして、腕を前に出す。化け物は、その行動を理解するのに一瞬遅れた。
「死ね」
「……っ!?」
ドゴンっ!!
その一言を合図に、化け物の体がふわりと浮き、そのまま壁に向かって猛スピードで吹き飛んだ。化け物も一瞬の事だったので、受け身も取れず無防備のまま壁に激突した。……普通ならそこで終わっていただろう。
「ぐっ……!?がはっ!?がっ!?」
壁に激突したのにも関わらず、まだ壁にめり込み続けている。それも、壁がすぐに壊れないギリギリの力加減で……。なんか壁にめり込むたびメキメキッって聞こえんだけど……。やめて!音が……!音が痛い……!!
「動けっ……ねぇ……!!」
化け物は何とかぬけ出ようとしているが、どうやら動けないようだ。必死に手足を動かすが、無意味だった。
「くそがっ……!!こんなの……!!」
「……うるせぇな」
メイゲルがそう言うと、もう片方の腕を前に突き出す。しかし、今度は指を銃の形にしている。すると、指先に黒い魔力が集まっていく。その魔力は徐々に大きくなり、野球ボールぐらいの大きさになる。
「やっ……やめろっ……!!」
化け物はその魔力弾はやばいと感じたのか、顔を歪ませもがいている。メイゲルはそんな様子を見ても、なんとも思わないのか冷酷な目で化け物を見ている。そしてーー
ドキュン!!
メイゲルの指先から魔力弾が離れる。その魔力弾は、目には止まらぬ速さで化け物へと近づく。魔力弾が通り過ぎた場所は、地面にヒビが入り、周りの草や石などは粉々になっていく。あの魔力弾を例えるなら、小さなブラックホールだ……。
「がぁああぁあぁ!!??」
その魔力弾が化け物に当たると、化け物の全身に雷が走った。魔力弾も消えることはなく、化け物に密着した状態で継続して雷を出している。密着部分は、熱により肌が徐々に黒くなっていっているのが見えた。恐らく弾も高熱なのだろう。
「がぁ、ぁぁ……がっ……」
魔力弾が消える頃には化け物の目は白目になっていた。身体が不規則に痙攣を起こしており、まだ雷の余韻がまだバチバチいっている。僕は、なんか一種の拷問を見た気分になっていた。うわぁ〜……。
「エゲツねぇ事するな〜……」
「うわぁ……」
「アイツだけは怒らせねぇよう気をつけろよ?」
他の四天王がメイゲルの攻撃に若干引いていた。もちろん僕も……。メイゲルはストレス解消できた人みたいに、爽やかな笑顔をしていた。
「それでは魔王様。最後に」
「分かりました」
魔王様は、先程作っていた扉を背後に佇ませ、化け物を見る。そして、魔王様の目が紅く輝いたと思ったら、扉がバタンッと勢いよく開いた。するとーー
グォォォォ!!
扉の中に吸い込むかのような風が起きた。僕は急な事で吸い込まれそうになったが、ガムイさんに手を掴んでもらい助かった。危ねぇ……。
「……!!化け物が扉の中に……!!」
扉から吹いた風は、化け物を浮かせ、扉の中へと連れ去った。化け物が扉の中に吸い込まれたと同時に、扉が勢いよく閉じた。あまりに一瞬の事で、僕は理解するのに時間がかかった。
「魔王様……。あの扉はいったい……?」
僕は扉の正体を、魔王様に聞いた。魔王様はふっと微笑み、僕の問いに答えてくれた。
「あの扉は、ヘブンズゲート……地獄の扉です。あの扉の向こうは直接地獄へと繋がっており、一度地獄に落ちた人は二度とこちらには戻ってこれないのです。まぁ、きちんと罰を受けたら転生という形で現世に戻れますが。あの化け物はもはや生物ではありませんから、一生地獄で生き続けることになるでしょう」
その話を聞いて僕は背筋が凍った。僕は一瞬、あの扉に吸い込まれそうになった。もしあそこでガムイさんが助けてくれなかったら、僕は今頃、地獄にいたかもしれない。
「さっ、菜糸君のお友達を助けてましょう!」
「そっ、そうですね……」
多分この経験は、しばらくは僕のトラウマになるだろう……。
◇ ◇ ◇
「助けたのは良いのですが、この人達どうするんです?」
「私の城に一緒に住んでもらいましょう!」
「無理に決まってるじゃないですか!!菜糸さん一人ならともかく、こんな大勢の人間の面倒なんて見切れませんよ!!子猫じゃないんですからね!!」
「しゅん……」
なんか魔王様とメイゲルが言い争っている。魔王様がしゅんってしているの可愛い……などと場違いな事を考える。皆無事だけど、僕の同級生の人達は恐ろしい事を経験しているし、これからどうするんだろう……。社会には戻れるのかな……?
「おい」
「ん?グンセオ?」
僕がそんな心配をしていると、背後からグンセオに話しかけられた。何の用だろう?
「ちょっと面貸せ」
なんかただならぬ雰囲気に僕の身体に緊張が走った……。




