16話 魔王様(女)が本気出すそうですよ?
遅れてすみません!
「何だよ……あれ……」
そこには悪魔とも鬼とも捉えられる“化け物”が壁を壊して現れた。全身赤黒く、所々から肉が剥き出しになっている。僕は見た瞬間に嫌悪感で鳥肌が立つ。魔王様も顔を険しくさせており、他の皆の顔も強張っている。これは、先程の男とは違う嫌悪感……心の奥底ーー本能的、生理的にあの化け物を受け付けなかった。
「あぁ〜あ……グリサルは負けたのか」
化け物は、グンセオ達に負けた男を一瞥する。しかし、その顔には心配するどころか同情の色もない。まるで、壊れたおもちゃを見ているかのような……。
「これはもう助からないね〜……はぁ〜……召喚って結構大変なんだけどな〜……」
そう言いながら男を摘み上げると、後ろへと投げ捨てた。男の体は、投げられた事により何回転か回って、壁へと激突する。まるで男を道具とでも言うように乱雑に扱う。
「まっ、代わりはいくらでもいるんだけどね〜」
「代わり……?」
確か魔界召喚は増大な魔力が必要だった筈だ。そんな何回でもホイホイできる代物でもない。なのに、この化け物は“代わりはいくらでもいる”と言っている。矛盾しているのだ。
「あれ?こいつらを助けに来たんじゃないの?」
化け物はそう言い、奥の扉を全開にする。するとそこには……
「っ……!?」
鉄格子の中に押し込められている人々がいた。そして、その人々というのが……
「僕の……同級生……?」
元の世界で見かけた事のある顔がいくつかあるから間違いない。それにこの人達は都市伝説で連れてかれたって話題になった人達だ。その顔は、涙によってぐちゃぐちゃになっており、風呂などに入れてもらえなかったのか髪もボサボサだ。そして、僕が最も目が行ったのは……
「ひどい怪我……!」
魔王様が口を覆い、喉から絞り出したような声でつぶやく。……そうだ。腕や顔、足に掌……色々な場所に痣や擦り傷が沢山ある。どんな酷いことをされたのか……それを考えるのも恐ろしい。
「くっそがぁぁあぁ!!」
「おいっ!?待てっ!!」
ガムイの制止の声を掛けるが遅かった。グンセオが剣を構え跳躍し、化け物めがけて剣を振り下げる。化け物はそれを避けようとはしない。グンセオの剣があと数ミリで化け物に当たると思った瞬間、“それ”は起こった。
フッ
「!?」
「消えた……!?」
化け物はグンセオの前から一瞬にして消えたのだ。当然グンセオの剣は空振り、皆はあたりを警戒する。その瞬間ーー
バキっ!
「がっ……!?」
突然グンセオは後方へと吹き飛ばされ、壁に激突する。何も……見えなかった。化け物が攻撃した瞬間も、化け物が移動している時も……何も見えなかった。音も完全に消えており、早く移動したのではなく、まるで瞬間移動だ。それに、グンセオは男の早さには対応できていた。警戒も人一倍していたグンセオに気づかれないで攻撃を食らわせるなんて……
「くそっ……そんなのチートじゃないか……!」
姿が見えない、何処からか攻撃を食らう……それもとてつもない威力の……。こんなのにどう太刀打ちしろっていうんだ……。そんな事を考えていたら、ある人物が化け物へと近づく。
「魔王……様……?」
それは、いつもの可愛らしい表情ではなく、強い……怒りに満ちた顔をしていた。
「おやおや魔王様……そんなお怒りでどうなさったんです?まさか先程の白髪の人を殴ったからですか?」
化け物は魔王様を挑発する。でも、魔王様の表情は変わらない。そして、魔王様が口を開いた。
「私の部下は……いつでも命を落とす覚悟が出来ています……。そうしないと魔界なんてところで護衛などやっておりません。しかし……関係のない人を牢獄に入れて、まるでペットを飼っているようなあなたは……許せません!!」
魔王様がそういうと、化け物が立っていた付近が爆発する。そこを何とか回避した怪物に魔王様が結界を張る。化け物が中で結界を壊そうと攻撃魔法や物理攻撃で暴れている。少しずつだが結界が壊れ始めてくる。魔王様はその間に何かをしている。あれは……魔法か?遠くて声が聞こえないが、ブツブツと何かを唱えているようだった。
バリーン!!
とうとう結界が壊れてしまった。化け物はすぐに拳を構えるが、魔王様が一歩早かった。
「マグネメテオ!!」
魔王様がそう唱えた瞬間、何処からともなく岩が生成され、炎を纏わせ空中を彷徨う。魔王様が化け物を指でロックオンした瞬間、その岩達は一斉に化け物へと飛んでいく。化け物は、拳で殴ったり、キックで粉砕したりと対応している。くそっ!それも対応出来るのかよ!
「これで終わりですか……?残念……もっとましなのがあると思ったのですかが……」
化け物がいやらしい笑みを浮かべる。これで終わりなのか……?そんな僕の考えは魔王様の発言で間違っていたという事がわかった。
「いえ、ここからが本番です。先程のは時間稼ぎなので」
「時間稼ぎ……?」
「はい」
魔王様はそう言うと、手を前に突き出す。するとその瞬間、魔王様の背後に、黒く迫力のある大きな両開き扉が現れた。




