13話 魔王様(女)は悟るようですよ?
遅れて申し訳ございません!!
「菜糸君!!そっちは……!」
「わぁああぁ!?」
「菜糸さん!!危ない!!」
「うおぉぉおお!?」
火炎放射器に毒やり、振り子斧に落とし穴……数々のトラップが僕達に襲いかかってきた。主に僕に……。皆がトラップに引っかからないように気をつけているのか、僕が不注意なだけなのか……どっちにしろ全て僕が見事に全てのトラップに引っかかりました。やったね!……はぁ。
「大丈夫ですか菜糸君!?」
「だ……大丈夫だよ……ははっ……」
僕、絶対足手まといだ……。僕一人では恐らく何もできないだろう。魔王様達がいなかったら、今頃僕は死んでいただろう。そんな自分が……今は情けなかった。
「……?菜糸君?どうしたんですか?」
「……なんでもないです」
……今は考えないようにしよう。今は黒幕を倒すのが先だ。まぁ、倒すって言っても、僕は多分できることはないんだろうけど……。
「……皆さん。どうやらトラップもここで終わるらしいですよ……」
「えっ……?」
僕達はメイゲルが見ている方を見る。そこには洞窟には不自然な人工的な木造の扉があった。まるで、ここまで来いと言っているようだった。皆の顔に緊張が走る。体が……震えている。指先が冷たくなり、心臓の鼓動が速くなる。
「……行きましょう」
魔王様の一言で皆の覚悟も決まる。……この先に黒幕がいる……。もしかしたらここで僕は……そんな嫌な考えを無理矢理ふりきった。
「1、2、3で行きますよ……?1……、2……、」
メイゲルがドアに手をかけ、カウントダウンを始める。たった3秒のカウントダウンなのに、異様に長く感じる。そしてーー
「3……!!」
バタンッ!!
合図とともにドアを思い切り開く。魔王様達は中に入り、攻撃体制に入る。その顔には、いつもの可愛らしい魔王様の面影は少しもない。その顔は……何かを守る人の強い顔だった。その時僕は、場違いながらも思ってしまった。
(僕もいつか……魔王様みたいに……!)
尊敬してしまった。憧れてしまった。何も取り柄もない……何も持っていない僕に無いものを魔王様は持っている。僕も彼女のように……!
『おやおや……皆さんお揃いのようで」
僕の思考を、突如として聞こえてきた声により中断された。その声は低く、どこまでも嫌悪感を感じさせる声だった。その声音も、僕達を嘲笑うようだった。
「……っ!?攻撃準備!!」
メイデルが声のする方へ警戒を強める。その先にはまたしても扉。それも、先ほどの木造の扉ではなく、鉄でできた頑丈そうな扉だった。その扉が、ギギギッと重い音を出しながらゆっくりと開く。皆の前進に緊張が走る。
「ようこそ。我が拠点へ……」
扉の向こうには、体をマントで包み、左目には眼帯をしていた。その顔は、ニヤニヤと不気味に笑っており、見ているだけで嫌悪感や憎悪感を一気に押し寄せる。髪は女みたいに長く薄い紫色だ。そして、マントの陰からは……
「あの刀身まで黒い剣……まさかっ!?魔剣ゲルシャル!?」
メイゲルはあり得ないという顔でその剣を見ている。魔剣……前にグンセオから愚痴のように言われたな……。
『なんだよ魔剣って!!剣っていうには自分を磨き、鍛錬した者にだけ答えてくれる。しかし魔剣は、何もしないで凄腕が
作った剣を優位に越える。要するに、お前がいた世界でいう“チート“ってやつだ。それを、さも自分のおかげなんて思うなんて……!あぁ!!まじでムカつく!!』
要するに魔剣は、通常の剣より尋常いない程強い。水の魔力を込めた魔剣は湖を作り、自然の魔力を込めた魔剣は森林一つ増やす。そして、奴が持っている魔剣は……
「よりによって闇の魔力か……!」
闇の魔力……魔王様からしか聞いていないことだけど、闇の魔力・魔法は今現在使用を禁止しているらしい。闇の魔力・魔法は禁忌とされており、もし使ってしまったら死刑判断がその場で決まる。物騒な世の中だな……。
「闇の魔力を知っているようですね……」
男は、それなら説明不要ですね……と言い、魔剣を構える。その構えは、素人の構え方ではない。少なくとも、10年は剣道や訓練をしているのだろう。黒の魔剣からは、禍々しいオーラが出ている。悍ましく、僕達の恐怖を煽る。
「では……いきますよっ!!」
「っ……!?」
男はそう言いながら、脚をバネの様にしてこちらに突進してきた。その速さは尋常ではなく、気がついたら僕たちの目の前に迫っていた。急いで攻撃態勢を立て直そうとするも、当然間に合うはずがなかった。
「ぐあっ!?」
「メイデルさん!!」
男は、持っていた魔剣でメイデルに斬りかかった。メイデルは咄嗟に簡単な防御魔法を展開していた。しかし、男はそんな物は気にせず、防御魔法とともにメイゲルを吹っ飛ばした。吹っ飛ばされたメイゲルは壁に強く激突する。まだ意識はあるようだが、壁に衝突した反動がまだきているのか動けないでいる。
「あらあら………。魔王軍の四天王が来たという話だったのですが……とんだ拍子抜けですね……」
その様子を男は呆れたように見ている。リアスは魔王様の前に立ち、魔王様を守っている。僕は……何も出来ないから、どうせなら邪魔にならないようにと扉の影に隠れている。そして、今僕は、信じられないものを見ているのだ。
(あいつ……本当に人間なのか……?)
僕と同じ人間……。なのに、四天王であるメイゲルを一撃で落とすせるほどの実力。そして僕たちは悟る。こいつは外には出してはいけないと……。




