12話 魔王様(女)は敵地に入るらしいですよ?
「なによ〜!そんなに驚かなくてもいいじゃない〜!」
急に現れたリアスに驚いた僕の反応に、リアスは不服そうに頬を膨らませた。いやね?急に背後から声がしたら誰だって驚くじゃん?
「それはともかく、ちょうどいいところに来たなリアス」
こういう事には慣れているのかメイゲルは普通に対応していた。魔王様も同様だ。リアスはたった今来たらしく、メイゲルの言ってることが分からない様子だった。首を小さく傾げ、キョトンとしている。漫画とかだったら頭の上に?がついているだろう。
「時間が惜しいから簡潔に話すぞ?あの洞窟の入り口にコウモリがいるだろ?あれをいつものようにどこかへ誘導して欲しい」
「えぇ〜……あんなのに私の可愛い使い魔を使うの〜?」
リアスは、あまり乗り気ではない様子だった。でも、黒幕に気づかれないようにするためには、あのコウモリをどこかへ誘導する必要がある。なんとかしてもらわないと……。そんな事を考えていると、魔王様がリアスに向き直り、上目遣いでリアスを見た。
「リアスちゃん、お願い……」
「分かりました」
「早い!?」
まさかの即決……。前々から思っていたけど、魔王様ってこの人たちに好かれるんだな……。……一人異常な奴いるけど。
「では、早く終わらせちゃいましょう」
リアスがそういうと、リアスの目が怪しく光った。すると、リアスを中心にコウモリがブワァと大量に出てきた。その数、恐らく数万匹はいるだろう。そのコウモリはリアスの周りをグルグルと飛び回る。
「私の可愛い可愛い使い魔達!あそこにいるコウモリをどこかへ誘導しなさい!」
リアスがそう指示を出すと、コウモリの群れの数匹が洞窟に向かって飛んでいく。洞窟前にいたコウモリを取り囲むように飛んでいたと思ったら、リアスのコウモリと一緒にどこかへ行ってしまった。
「これでいいかしら?」
「ありがとうリアスちゃん!!」
「いっ、いえ!そんな滅相も無いです!!」
リアスは頬を赤らめて急に挙動不審になる。どうしたんだろ?と、そんなやりとりしている間にもメイゲルは何やら考え事をしていた。
「メイゲル?どうしたの?」
「あ、いえ……。少し気になる事がありまして……」
「気になる事……?」
何やらただ事じゃない様子だ。そんなに重要な事なのだろうか……?
「いえ……、思い過ごしだったら良いのですが……。さぁ、洞窟も入れるようになりましたし、行きましょう」
「えっ、あ、うん……」
僕はメイゲルの様子にモヤモヤした気持ちが拭えないまま洞窟に向かった。洞窟は岩陰から見てたよりも大きく、奥の方は暗くてよく見えない。
「暗いけど……どうするの?」
流石に灯りな何かがないと危険だ。この先、黒幕の手下なんかがいないとも限らないし……。でも、その灯りになりそうな物を誰も持っていないように見える。
「大丈夫ですよ菜糸君。私たちは皆、火の魔法を使えます。灯りはそれで確保出来るでしょう」
「あぁ、なるほど」
ここに来る前に魔王様の魔力を目の当たりにした。あれほどの魔力を使いこなせるなら、火の魔法などは簡単に出せるだろう。
「では、行きましょうか」
魔王様がそう言うと、メイゲルの指先から小さな火の玉が現れた。その火の玉はフヨフヨと洞窟の中を少し漂ったと思ったら、徐々に大きくなっていく。初めは豆程度の火の玉が今はバスケットボール並みの大きさになった。そして、その火の玉は一定の場所で止まり、僕たちの視界が良い具合に悪くならないように照らしてくれた。
「便利ですね、この魔法」
「この魔法は初級魔法なんです。この魔法から色々組み合わせて攻撃魔法や援護魔法などを覚えるんです」
メイゲルが魔法について少し教えてくれた。魔法か〜……、僕も使ってみたいな……。魔法といったら男子の憧れといっても過言ではないだろう。使えるのなら使ってみたい。それが男子に生まれた性なのではないだろうか?
「僕にも魔法使えますか?」
一応聞いてみる。憧れへの期待を胸にメイゲルに質問する。そして、メイゲルは言った。
「菜糸さんは……残念ながら使えません……」
僕の期待を一瞬で粉々にする事実を……。マジか〜……。
「そもそも人間にはそれほど魔力を持っていないのです。稀に人並み以上に魔力を持っている人間はいますが、魔法を使えるほどではありません」
男のロマンが……憧れが……。僕はその事実に落ち込まずにはいられなかった。そんな様子を見た魔王様はどうにか励まそうとしているのか「魔力なんてあっても、あまり変わりませんよ!」と言っていた。魔王様……そういう問題じゃないんだよね……。
「……!!みなさん伏せて!!」
「へっ……?」
ヒュッ!ドスッ!
メイゲルの警告が聞こえた瞬間、僕の目の前を槍が通り抜けていき、壁に突き刺さった。
「えっ……!!ちょ!?」
僕は急な攻撃に軽くパニック状態になった。もしもう一歩先にいたら……考えるだけで恐ろしい。壁に突き刺さってる事から、とても速い速度で飛んできたのが分かる。
「て……敵!?」
「いえ、恐らくトラップの類でしょう……。ざっと見るだけでそこら中に設置されているようです……」
「嘘だろ……」
僕はここに来てようやく思い知った。もうここは、敵地の中なのだと……。




