第四十三話 家宅捜査② 納戸編
ここから田園生活の奮闘が!
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第四十三話 家宅捜査② 納戸編
祠の水を代え、斎藤は朝の収穫をして縁側に座って休憩をしている。
村長に連れられて小麦畑の管理を習ったりしているが、病気や害虫が発生し無いかぎり忙しいと言うほどでは無い。
山に放ったレンジャーが今夜には帰って来るらしいので、明日はクマの水没している滝壺に向かう事になっている。
「さて、今日は何をしようか?」
生簀では水神様が悠々と泳いでいらっしゃるが、不満は無いのか実に大人しい。餌の魚は取り敢えずまだ十匹ほどチョロチョロしているのでその心配も無い。
斎藤は再び周辺の散策を行う事にした。
下手をすると何処よりも危険なブルケの住んでいた家には、まだ手付かずの場所が幾つかある。
家の中の納戸と呼ばれる物置、二階にあるロフト部分、そして台所の奥の鍵の掛かった部屋、そして庭にある大きな蔵だ。
「そういや初日に蔵の中に何かいたな」
触らぬ神に祟りなし、斎藤は蔵の探索を後回しにし、家の中を調べる事にした。
因みに佐倉さんはエルザさんに連れられ、生産系の一つ、薬草について習い始めているらしく、今日は朝から森の中に向かって行った。番犬が二匹付いているので護りは堅い。後で戦果報告を受けよう。
♢
護身用にライノとシェイドを連れ、俺は先ず納戸に向かった。縁側の奥にある扉の奥が納戸になっている。鍵は掛かっていないようだ。
そっと手を掛け〈カラリッ〉と開けると少し湿気った感じがする。この時点でブルケの魔法の影響下には無いと判断した。
『う〜ん、何だかカビてます〜』
風の妖精であるライノ的には閉鎖空間である納戸はイマイチの様だ。
「そうか? こんなもんだろ」
マジックトーチを点灯し、周囲を探る。シェイドが触手を伸ばしあちこち確認するように調べているが、反応は無い。ここには布団とか服が置いてあるだけの様だ。
すると、棚の片隅にバッグを見つけた。なんだろう? 手に取って調べてみると、鞣した皮で出来ているようで大変触り心地が良い。水色をベースに中間色を多用した色合いは中々のものに思える。ただ、バッグを綴じる金具に付いている紋様は、[壺]にある物と同じだった。
「……魔法の鞄…なのか?」
『むむっ! この鞄は隠蔽効果が付いてるみたいですね〜』
やはりブルケの装備の一つなのだろうか?
奥に目をやると宝箱のような大きな箱がある。そして当然の様に鍵が掛かっているようだ。
(まあ、そりゃそうだろうな)
『これが本命かもです☆』
見るからに重厚そうな宝箱(正確には昔の日本で使っていた行李と呼ばれる物入れに似ている)には何かが入っていそうだが、これは鍵を見つけてからだろう。
そして立て掛けられている錫杖の様な棒を見つけた。直ぐ手に取れそうなのはこれだけか。色々棚には置いてあるが、よく分からないので壁に掛けてあった緑色主体で迷彩服の様な不思議な模様のローブと、皮のブーツ、そして立派そうな鉈を見つけてたので合わせて持ち出す事にする。後でリデルに聞いてみよう。ユニークスキル大賢者ほどでは無いが知識はありそうだからな。
俺は納戸を後にして台所に向かう。
♢
『どれどれ、では拝見させていただきましょう』
生きた魔道書とは言え、鑑定機能はあくまでも予備的な物なので抜けは多いらしいが、得られる情報は少しでも多い方が良いからな。
「じゃあ、頼むよ」
ブレスレットから現れたリデルが、納戸の戦利品を調べ始める。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
納戸の戦利品
・魔法の鞄
見た目よりも広い内部空間を持つ魔法の鞄。無限では無い。収容出来るのは00〜99までの分類上か重量500㎏か体積でおよそ3㎥のいずれか
コンテナ、袋に入れてまとめる事も出来る。
生き物不可。
魔法空間の為時間は流れ無い。
・エルフの森迷彩服/エルフギリィローブ
森や草原などの緑のマナの影響下において効果を発揮する魔法のローブ。周囲に溶け込み気配を遮断するので、狩りや危険な場所の突破に役立つ。
若干ではあるが対物理、対魔法、対属性防御を上げる事が出来る。
・スレイプニルブーツ
八つの足を持った馬の姿をした幻獣の皮を使って創られた移動力を高め、移動タイプを変えるマジックアイテム。
流石に飛ぶ事は出来ないが、壁を走ったり水面を跳ねたり、忍者と同じ移動力と移動タイプを持つ事が出来る。ただしあくまでも本人の能力を底上げするタイプのマジックアイテムなので
本物の忍者の様になるにはやはり訓練を必要とする。
・怒りの鉈
攻撃力に加え、ハードヒットやノックバックを連発する魔法が込められている。ただ、その力は木を斬ったりするのに役に立つので、その為に所有するレンジャーも多い。相手の装備を破壊するブレイク効果も持つが、使いにくいのであくまでも補助武器として認識されている。
・錫杖????
魔力を込めると変化する。
形状は数種類ある
改造も可能
武器と言うよりは道具
魔法を使えなければ役に立た無い。
ただし、聖なる加護を受けているので、邪悪な者に対する効果はある。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『これらは武具や防具と言うよりは道具として使われていたのでしょう。それに若干の防御力や攻撃力を最低限加えてあるのですな』
「じゃあ、普通の服よりはマシな感じなの?」
『そうですな、ただ、この機能が必要な局面があればその有用性はさらに増す事になりますな』
「局面ねえ」
人食いグマやオーク何かには役不足な気がするが、普段の狩り何かには有効なのか? 少しレベルアップしたという事にしておこう。
『この[錫杖????]は形状を変化させるもの様ですが、恐らくこれがオリジンと呼ばれる原型かと思われます。類似した物はありませんな。斎藤様が実際に使ってみなければその効果と性能はわかりませんです』
形状変化……十得ナイフみたいなもんだろうか? 大きさからして用途は農作業とか? 今度試してみるかな
すると〈トントンッ〉と扉を叩く音がする。
「斎藤さん、いますか?」
佐倉さんだ♡
「はい! おりますです!」
扉を開けると佐倉さんが大きな瓶を持って立っていた。
確か佐倉さんは早朝から薬草を採りに行っていたはずだ。ならその瓶は
「それは佐倉さんが造った秘薬ですか!」
「いえ! さ、流石にそこまではーーこれは薬草茶なんですよ。練習がてら造らせて貰ったんです。直接薬に加工するのではなく、乾燥させて保存してあるのに、もう廃棄するのがあったんで、香りの良い奴を分けて貰って、私がお茶にしました♡」
「おおっ! 佐倉オリジナルですね!」
その瓶の中には数種類の薬草が入っていると思われる茶漉しの網カゴが入っている様だった。
ノルン村では山菜もさる事ながら薬草や薬になる木の実が豊富に採れ、しかも質と量はこの国一だと言われているらしく、この村の基幹生産物の一つらしい。だから佐倉さんも薬草を学ぼうとしていると言う。
狙いは悪くない。
てかかなり良いんでは無いだろうか?
「ではテイスティングしてみましょうか」
「は、はい!」
『は〜い☆』
『yoqha! makaseloo!!!』
そうか……こいつらもいたんだな
二人と二匹で試しに飲んでみる事にした。既に一度沸騰させているらしいから十分エキスは出ている筈らしい。麦茶みたいなもんだろうか?
コップを四つ出し、一度皆で顔を見合わせる。
「ではーー」
「ゴクンッ」
「コクンッ」
「ペロッ」
「ペチョ」
「「「「…………」」」」
「「「「……ぶはぁーーっ!」」」」
「に、苦いです〜!」「こ、これは過激ですね(思わず心肺停止からも蘇生しそうな衝撃だ)」『口がゴワゴワします〜』『nigaaa!!!』
流石にこれは市販するのはまずい気がする。パーティジョークなら別だろうが
佐倉さんも流石に無理だと思ったようだ。
「……ダメですね……」
ああっ! その目から光が消え失せている! だが……確かにこれではダメだ。
「佐倉さん、まだ分かりませんよ! 飴に加工したり、食材の下味にしたり、捨てる薬草を使えるのは間違い無く有効ですからね! また違う方法を試してみましょう」
「……はい。まだ薬草は色々ありますから。試してみますね」
「はい、楽しみにしてますよ。先ずは基礎を学び、それを元に濃度とか効能のバランスを取れば開発は出来ると思いますよ」
薬草摘みも俺の妖精が居ればかなり効率的にやれそうだしな。
それでもこれは佐倉さんの選んだ仕事なのだ。これからの課題となるが、一つづつクリアしていくしかない。そうやって生きていく術を見つけなければ、このノルンで暮らす事は出来ないのだから。
その後ーー佐倉さんは微妙に落ち込みながらも薬草茶の瓶を抱えて家に戻っていった。この後はエルザさんにピクルスとザワークラウトの作り方を習うらしい。
そして夜は針子仕事を教えて貰うと言う。これは村長の嫁も一緒に習うらしい。その道のーーエルザさんみたいなツワモノがいるそうだ。
さすがノルン村だという事か。
俺は少しノルン村の周囲の森が気になり始めていた。薬草の採れる森、木の実が採れる森、一度妖精達を連れて探索してみよう。俺にしか出来ない仕事が見つかるかもしれないからな。そして佐倉さんの仕事の為になる発見もあるかも知れない。
肩を落としながら、それでも薬草茶の瓶を持って帰る佐倉さんを見送りながら、俺はノルン村の周りに広がる森を見回しながらーー村長が歩いて来るのを見つけた。
さあ、俺も一仕事だな。
( ̄◇ ̄;)
さすがに三作を毎日更新するとヘロヘロになりますが、途切れ途切れになりながらも頑張りまーす
区切りまで書き上げたら加筆修正する予定でございます。
 




