90.様子
僕達をその妖精がいる場所へと案内している道すがら
「いやぁー。歳のせいで忘れっぽくなっちゃたんよ。許してね」
同じく笑って誤魔化すラキュちゃんさん。
「歳のせいってこともあるのかもしれんが、ほとんどは、あんたの元からの気質だろうさ」
ムッとした表情で後ろを振り返る。
「あー。じゃ、そちは忘れたりしないんね。あーあ。もし、なにか忘れたらルール違反で罰ゲームなんよ!」
「どこの法律なんだよ。勝手に作ってんじゃねえ」
「ふっ、わたちルールだから作り放題なんよ。逆らうものは!皆・・・なんかしてもらうんよ」
「なんも決まってねぇんじゃねえかよ。好き勝手し過ぎだろお前」
「ラキュちゃんって呼ぶんよ。次、別の呼び方したら、処刑なんよ」
「重すぎだろ。ふざけんな」
テンポ良くそんな会話をしている間にも到着する。
「ささ、ここらへんにいるはずなんよ。探して、話すように。じゃ」
「おい」
どこかに行こうとするが、ボスさんは、それでもまた止める。
「・・・なんなんよ」
前回のことがあったからなのか、少し弱気で詳細を尋ねている。
「ここらへんってなんだよ。正確な場所ぐらい言ってからにしろ。案内役すらできてねえじゃねえかよ」
ただ、聞こえた後は元の様子に戻り、反論する。
「なにかと思えば、おかしなことを言うんよ。正確な場所なんて誰も知らないんよ。探して、聞くのが常識ってやつなんよ!」
キメポーズで締めくくってどこかに素早く消えていったラキュちゃんさん・・・。
「なんなんだあいつは、無視して行くか?」
「それは・・・やめておいたほうがいいんじゃないかな・・・」
「?なんでだ」
僕が指差した方向をボスさんが首を動かして確認すると・・・いる。
「聞いているんよ?約束破りは許さないんよ?あと、名前で呼ぶよういったんよ?そちは何も覚えられないんよ?忘れてるんよ?なら、罰の重複刑に処すんよ」
オーラや何かではなく・・・。誰にでもわかるだろう強風・・・いや、暴風を巻き起こし、ボスさんを威嚇する。これが、威嚇で済むのかどうかは・・・ボスさんのこれからの発言次第だろうことだけがわかるが・・・。
「・・・悪かった」
スンっと風が急激に止み。ラキュちゃんさんの機嫌も元に戻る。急下降ならぬ急上昇。
「ふん!わかればいいんよ!許してあげるん」
許されたみたいだ。たぶんだけど・・・さすがに、僕じゃ止められないんじゃないかな・・・。規模が違い過ぎる。
再び、どこかへと消えてしまった。ただ、ずっと何かに包まれた感覚は残っていることから近くにいるのだろう。または・・・遠くにいても感じているのかもだが。
「おっかねえ。魔法ってのはえげつねえな」
「魔法というより・・・ラキュちゃんさんがだけどね」
「あんなや・・・・・・まあ、行くか」
何かを言いかけはしたが、ルールに抵触するのだろう。切り替えることにしたようだ。
「で、やるのはいいがどこだよって」
「うーん、あっちかなぁ」
「わかんのか?」
「たぶん?」
引っかかる者があるのはあるが・・・沢山引っかかっている。その中からさっきまで居た方向にいるだろう妖精達を除外して、一人になっているだろう存在を検知する。
しばらく歩いた先にぽつりと座りながら、一人でいる。水色の髪の人物。おそらく、正解だろう。
「いたな。で、どうやって声をかけるか」
それなのだ。具体的なことを知らない以上、第一声になんて言えばいいかわからない。つまり、話をするための取っ掛かりがないのだ。
「・・・こんなことで、ごちゃごちゃ悩む気もおきやしねぇ。適当に近づいて考えるとするさ」
そういって、独りでに歩き出した。僕は考えたかったけど・・・別々に行くのもどうかと思うので、行くことにした。
「おい、そんなところに一人でなにやってるんだ?」
突然の声かけにもかかわらず、ゆっくりと落ちつた動作でこちらへと視線を向ける。
視線が交差した先、水色の瞳に僕達が写り込んだ。
「誰?」
「そりゃそうだわな」
「僕は、ユイトって言います。初めまして、こっちがボスさんって名前だよ。よろしく」
小さな少女の不可解な面持ちが心に刺さるが、なんとか自己紹介を終える。
「ハナリって言うん」
返事してくれた...。
「ハナリさんって名前なんだ。綺麗な名前だね」
「うん」
・・・会話が終わった。横目でボスさんへと念を飛ばしてみるが、睨まれる...。なんで...。
「はぁ...で、君が元気ないって聞いてね。族長?村長?みたいなのから頼まれたのさ。話してみてってな」
それ・・・言っちゃっていいんだ・・・。ダメかと思ってた。
「そう...。心配性だから。わたちは大丈夫って伝えておいて」
う、うーん・・・。これは達成したってことになるのか・・・?ならないだろうなぁ。
「あぁ、伝えとくさ。ただ、俺達にもしがらみってのが多くてな。悪いんだが少しだけ雑談でもしないか?」
「そう...。いいけど・・・話すことなんてないん」
「そう、考える必要もないさ。適当でいいんだよ。まずは、ここ最近の楽しい出来事とかでも話すとしよう」
そうして、隣へと座り込んだ。僕も習う。
あれやこれやと考える必要はないのかもしれない。まずは、ただ言葉を聞いてみることにした。




