85.寄る辺を求めて
「よし、状況を整理しよう」
黄昏時に差し掛かっている。歩き疲れて休憩、もしくは一泊のためにもなるべく見晴らしの良い場所に陣取りながら、魔物を調理する。
血抜きなどは・・・難しい。効率良くできる自信なんてないが、頑張ってやっている。切り傷も多すぎると良くないって聞いたから、本当に難しい。僕の場合、健康云々を考えても正直、火に通せばなんとかなると思っている。今までもそんな感じでするものだと教えてもらったしそうしてきた。
でも、ボスさんは、僕以上であった。丸ごとで食べると言い出す。豪快である。四肢を斬って、火を通せば皮ごとでもいいだろ栄養があるっていうしな。なんて言ってる。それだと・・・美味しくないでしょと僕が、なんとか止めた。
人を変だと言うが・・・ボスさんが変ではないだろうか?
それから、僕は調理当番になった。頑張って調理している所で、手持ち無沙汰になったボスさんのセリフが、状況整理をしようであった。
「暇なんでしょ」
「違ぇよ。そろそろ、迷子もあれだからな。方角もそうだが、何か起こった時の対応も事前に意思統一しておいた方がいいって話さ」
正論だが、僕は忙しく頑張ってるのだ。今言い出すのは、ズルく感じる。道中でも話し合えたでしょ。
忙しい僕を無視して会話を続ける。
「その、方角に関しては置いておこう。わからんからな。でだ、自然種共に出会った時の対応だ。どうするかだ」
「・・・戦うしかないんじゃない?捕まえられてる訳だから」
「物騒だな。人間ってのは皆武闘派なのかよ。魔人族なら、良い奴と悪い奴ってのがいる。それはどこでも一緒だと思ってたがなぁ?」
「・・・あの人が悪い奴で、良い人とも出会うかもってこと?」
その可能性も、もちろんあるのだろう。絶対ないなんてことは言えない。
「かもな。まぁ、人間は全員物騒らしいから、自然種も全員悪党だってこともあるかもな」
「...人間にも色んな人がいるよ。でも、見分けなんてつかないよね?」
「そりゃ、誰だってそうだろ。どうした?」
「え、なにが?」
「・・・なんでもない。だから、対話でなるべく行くかって話だ。見つからずに行くのでもいいが、それにしちゃ土地勘がなさすぎる」
「まぁ、うん。道は聞かないとわからなそうだよね。話して教えてくれるといいけど・・・」
「そこだ。だからこそ、森人以外に積極的に聞くのはどうだ?」
「森人?以外?」
「そうだが、まさか、知らないのか」
「どこかで聞いたかも知れないけど・・・気に留めてはなかったかな」
「やっぱり、森育ちだろ。色々と知らなさすぎる。俺ですら知ってることをなんで何にも知らないんだよ。一、二個くらいならまだしもな」
「あんまり・・・人と関わってこなかったから、鋭意勉強中だよ」
「そう、なんだろうな。教えてやるとするか、こいつの礼だ」
ようやく下準備が終わり、後は火で焼くだけである。近くに落ちている、なるべく丈夫そうな枝を拾って、形を整えてから串刺しにしたので、焼きやすいはずだ。
小枝を余計に拾って枯れ葉と一緒に僕達の真ん中に積み上げる。そして、僕の魔法によって着火して焚火を完成させた。
その肉を受け取って、礼代わりだと知っている知識を話してくれる。それが無くても話してくれただろうが、たまに悪ぶるのだ。
「いいか?自然種ってのは、括りだ」
「括り?」
「今じゃ魔人族って名だけが残ったが、魔人族も昔は括りってことで、色んな種族名が大量にあった。なんて話もある。多くの種族を一緒として仮に呼ぶってことさ」
そして、自然種には森人、樹人、妖精族などがいると言う。など。というのは、少数の種族がちょこちょこといるが、全貌を把握はしていないからとのこと。ただ、この三種に加えて、その他の少数種族がいるってことくらいは常識らしい。
「でも、これぐらいだけなんだがな。ほら、国境のあれがあるだろ。あまり知らんのは同じだ」
だったら、僕と同じくらいとも言えたのでは。
「上の連中は多少交流がある?みたいな話を小耳に挟んだことぐらいならあるがな。俺には関係ない。大事なのは、俺達を誘拐したのは、おそらく森人だってことだ」
「見た目で判断できるの?」
「多少はな。樹人は木っぽい。妖精族は小さいって聞くしな。それぐらいだが、森で大きい街を形成していた所から少数種族じゃなさそうってのも追加で」
「うん。出会えたら聞いてみるのもいいと思うよ」
「じゃあ、それで行くか。ただ、杞憂だといいが・・・心配事もあるのがネックだ」
「そうなの?どんなこと?」
「自然種は、種族を区切ってるくせに仲がかなり良いらしい。魔人族が種族を区切ってた頃は仲があまり良くなかったって聞く。だからこそなのか、統一したって話があるくらいだ。逆に、統一なんて形式にこだわる必要がないくらい仲が深いって可能性だ」
「だとすると・・・教えてくれないかもってことかな」
「そういうことさ。そうなったら、また追われる身だが、それでも聞いてみるか?」
「・・・うん。ずっと迷子が一番困るからね。追われたら、頑張って走ろう」
「・・・俺は体力に自信がないからな?なんとかなることを祈ろう」
暗く深い森での一幕。感じ、考え、知りながら、広い世界の中で眠りにつく。




