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未定世界の知り方を  作者: むち神
第四章 【死角の動き】
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73.どうしよう

 浅いような深い眠りから目を覚ます。

 後頭部にじんじんとする鈍痛に顔を顰めながら、記憶を探りつつ周囲を見る。暗くて揺れていて無人、揺れ具合から馬車だろうと見当がつく。


 横たわった状態から起き上がろうとするがうまく起き上がれない。手や足に枷がつけられている。


――なにが・・・。


 なにやらわからない。たしか・・・財布を盗られて・・・そこからなんだったか。

 頭痛の影響で思考が阻害される。回想を諦めて、これからどうするかの方に切り替えることにする。まず、枷を外せるかどうか試してみるが・・・壊せない。


 素材はわからないが、鉄以上の硬度で分厚く作られている。手首を大きく動かせる隙間もないので、力をうまく伝えることができなくなっている。これが、枷ではなく棒であれば力で曲げることも可能だったかもしれないが、枷を引っ張って壊すには無謀なことがわかる。


――無理だ・・・枷より前に手首が痛すぎる・・・。


 枷が壊せない以上、脱出は困難になる。せめて、脚が動けば走れたのにと考えていると。御者席の方から一人の男が入ってきた。


「お目覚めかな」


「あなたは・・・財布泥棒!」


 僕のセリフに目が点になった表情を見せる。


「驚いた。これも、わかるのか」


 ようやく記憶も戻ってきた。財布を盗られて、盗っただろう相手の容姿がなぜか違っていたことを。だからこそ、おそらくこの人が泥棒だろうと口にしただけ。

 ユイトとしては、そういった魔法や方法があるんだろうくらいのことである。世界をあまり知らないからこそ、異常がわからない。


「ここどこ?なんで枷をつけられてるの?」


「普通の質問だな。馬車で移動中だ。枷は、君を逃がさないためだ」


「外してよ...」


「断る。逃げられたくないんでな」


 ふぅ。と一息ついて馬車の後方にある(ほろ)を開けて、外の景色が見えるようにしてから腰かける。

 どうやら、夜中になっているようだ。


「どこいくの」


「君を売りに行くのさ。恨み言なら今言っとくのがおすすめだ」


 隠すことなどないとばかりに、正直に現状を話していく。


「売り?なにを?」


「?君をだよ。人身売買というやつだ」


 僕?人を売るっていうのはどういうことだろうか。買ったところでどうもできないだろう。食べる?人を食べる存在ならいそうである。

 ユイトは頭の中に巨大な魔物を想像しながら、推測を立てる。


「・・・なんとかならない?」


「ならないな。自然の摂理やなんとやらってな。諦めずに恨みをぶちまけるだけぶちまけておきな」


 ダメか。しかし、どういう経緯で売られるのかいまいちわからない。ユイトからすれば、雲を掴むような出来事に混乱する。


「どうして(人を)売ったりするの?」


 売られたらどうなるのか、人を売ってどうなるというのかの質問を、どうして人身売買をしているのかという問いだと受け取る。

 それにまさしく、苦虫を嚙み潰したような表情で苦し気に答える。


「素朴な疑問だな・・・。どうして・・・か」


 この人にも具体的なことはわからないのかもしれない。

 なんてことを考えている傍らで、真剣に答えようと思考を巡らしている男。


「・・・なんとなくだな。流れに身を任せてってことだろうさ」


 明確な回答ではないだろう。だが、男としては正直に真剣に考えた結果。これは、男の知能が低いということではない。ただ、自身の半生を振り返ってなぜ自分がこうなっているのかを説明できる者は、人身売買に手を出していないだろうというだけのこと。


「なんとなく・・・?」


 追及のような言葉。真剣に答えてもらえなかったと思っての抗議にも聞こえる。


「勘違いするな、真面目に答えてる」


 ユイトは、いまいち要領を得ないなと思いながらも。とりあえず、この人にもわからないのだろうということだと受け取る。

 そんなユイトの懐疑的な表情を読み取って、続けて話す。


「俺としても、人を売るってのは初めてでな。多少気後れする」


 懺悔の様に告げられるが、だったら売らないでくれたらいいのではないだろうか・・・。


「なら、枷外してよ・・・」


「気後れってだけなら、初めてのスリも気後れしたからな。やめる理由にはならないさ。善人ぶる気もさらさらないしな。まあ、運悪く捕まった時に買い手がいた不運を呪うこったな」


「うーん...」


「誰だって運命に納得なんてできてないさ。せいぜいやれるのは、運命の流れにうまく身をまかせるだけってな」


 身を任せたら売られちゃうじゃないか・・・。なんとか脱出の糸口だけでも見つけられないものか会話をしながら考えているが、どうしようもないことだけがわかる。せめて・・・


「どこに向かってるの?」


 目的地ぐらいは知っておこうと質問する。意味なんてないが・・・。


「北の街。ペザウントって街。知ってるか?」


「し、知らないかなぁ・・・」


 北部らへんを出身みたいな話があったから、知ってるふりをしようかと思ったが、すぐにバレる嘘はやめておいた。


 そうして、最低限の情報収集が終わった...。


――さて・・・どうしよう・・・。

津波大丈夫でしたか・・・?

何事もなく、平和に暮らしたいですね。

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