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未定世界の知り方を  作者: むち神
第三章 【沼】
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64.想定外

 反対されているなら残った方がいい。その言葉が喉まで登ってきたが引っ込めた。


 事情はあるだろうけど、本人が行きたいと言っているのだから連れて行ってはあげたいのだ。しかし、逃亡計画と言われても・・・正直な話、そこまで難しくないと思うのだが。


「反対って言われてもマロさん自身が行きたいなら止められないんじゃない?」


「う~ん、どうなんだろうね?本気で止めに来るなら家の者達に加えて、国の騎士に協力してもらおうとするだろうけど・・・どこまでするのかは、わからないね」


 そうなると・・・大変だね。


「でも、今日出発とは言ってないんでしょ?」


 ネルがそれなら大丈夫なんじゃない?と聞く。


「そうだけど~心配性だからね」


「まあ・・・とりあえず、街の入り口まで行ってみようよ」


「そうだね~」


 計画はそんなにない。まずは、なるべく見つからないように入り口まで向かってみるだけだ。馬車なのだから難しい部分はあるだろうけど、見つかったら見つかったでそれから考えればいいのだ。

 前とは違う。わからないことは未だに多い点は変わっていないかもしれない。だが、知ったことも多くある。王族の人達が優しいことも、騎士が真面目で親切なことも知っている。なにも怖くない。


 マロさんを心配しているからこその行動なのだ。だから、計画も簡単でいいのだ。


 宿から少し移動した所に買ったと言っていた。馬が繋がれた馬車が一台あった。御者はネルに任せることにして後ろに乗り込む。

 マロさんの案内で道を進んでいると、ネルが気になったことを質問する。


「門から離れたり近づいたりを繰り返しているようにも見えるんだけど、そんなにはっきり場所がわかるの?」


「そうだよ~。知り合いはなるべく避けて移動してるよ」


 くねくね動いてるなと思っていたら、そんなことをしていたらしい。方向的には門に向かっているようだったから気づかなかった。


「お~すごい。まるで、気配察知だけど範囲がすごく広そうだね」


 似ているとは思っていたけど、明確に相手を知覚できる気配察知とは違ってなんとなく方角がわかることもあるようだったから、まったくの別物と思っていたけど、周囲の人まで深くわかるのなら気配察知を広くした感じなのかもしれない。


「前はできなかったからね~特異って思ってたより便利だったんだね」


 ほのぼのとした会話をしながらも順調に門まで進んできたが、門番がいる所はそうはいかない。とはいっても、止められても確認まではしないだろうとのことだ。


 念の為にマロさんは外から見えないようにしゃがんでもらってから進む。


 馬車をゆっくりと走らせて門まで近づいてから、呼び止められて停止する。


「外は現在、厳戒態勢にあります。何用で出られるのでしょうか?」


 僕達を迎えてくれた人とは別人の騎士が問いかけてくる。


「知り合いを探しに行こうかと思いまして」


「・・・気持ちはわかる。だが、やめておいた方がいい」


 やはり親切心から言ってくれているのだろう。でも、危険は承知の上なのだ引き下がる気はない。


「もちろん、わかっています。忠告ありがとうございます」


 ネルが嫌味に聞こえないように注意を払って感謝を伝えようとしているのがわかる。


「そうですか、ならこれ以上なにも言う必要はありませんね。お節介でしたね」


「いえ、ご親切にありがとうございます」


「確認のために中を見せていただいてもよろしいでしょうか?」


 ・・・まずい。町に入ってくる人は検問するだろうけど、出る人まではしないだろうという話をしていたからこそ、門に来たのだが思っていたのと違う。


「・・・なぜでしょうか。見せるのは構いませんが、出ていく人まで確認しているんですか?」


「昨日までは、危険の声かけだけだったんですけどね・・・今日からの命令が少しありまして、確認させて貰っています」


 門は閉まっている。先ほど言っていた通り、厳戒態勢だからだろう。開けてもらわなければ突っ込んで逃げることもできない。


「僕達も急ぎたい理由があるので、よければ門を開けながらの対応をお願いできませんか?」


 マロさんが使っていた手と同じ手法でなんとか門だけでも開けて貰えれば、走り出すことも可能になる。走りさえすれば、どうとでもできるだろう。今の僕達なら簡単だ。


「・・・できません。過去に一度、門を開けての確認で逃げられた思い出がありまして、すみません」


 終わった・・・。よくよく見ると、門番の人は王都から逃亡する時と同じ人だった。――そりゃ・・・開けてくれないよね。


 どうしようかと思っていると馬車の扉が開けられて見つかってしまう。


「やはりでしたか・・・ご安心を捕らえろという命令は受けていませんよ」


 ?どういうことだろうか。


「では、どんな命令でしょうか?」


 身を潜めていたマロさんが立ち上がり椅子に腰かける。


「陛下からのお言葉です。ご家族からの要請は受けたが見付からなかったと説明しておく、こちらは気にせずに、自由に好きに生きるといい。とのことです」


 ハッとした表情を戻してから答える。


「そうでしたか。ありがとうございます。とお伝えください」


「はい、承りました」


 和やかなやり取りが終わり門を開けてくれる。最後に門番から一言だけ貰って


「次からは、逃げようとしない時にお会いしましょう。本当に・・・心臓に悪いので」


「フフッ、そうですね」


 門番にとって、最大限の皮肉を貰って出発する。だが、人と人の繋がりを感じる――


 温かい言葉であった。

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