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未定世界の知り方を  作者: むち神
第三章 【沼】
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60.奏上

 

 ギルサルが執務室で帰還の報告をする。


「おぉ!よく戻った!」


「ハッ!このギルサル只今戻りました」


 よいよい。と返してからこちらへと振る。


「セイズ侯爵の娘かよく無事でいてくれた。嬉しく思うぞ」


「ありがとうございます。陛下」


 呼ばれ慣れていないのか、遅れて返事する。


「いやしかし、慣れぬな。特に小さな頃から知っている者にそう呼ばれるのはむず痒さがある」


「フフッ。慣れてくださいね」


「手厳しいな。まったく、子供の成長とは早い」


 旧交を深めながらも話はスムーズに進み、僕に手を向けながら紹介してくれる。


「陛下、こちらは私の学友であり、今回、帰還するにあたり多大な貢献をした。ユイトです」


「おぉ!そうか!よくやってくれた。ユイトと・・・ぅん?どこかで聞いたような」


 隣にいた。エストが補足する。


「はぁ・・・お伝えしたでしょう。我々の手違いで拘束しようとしてしまった少年ですよ」


 両手をポンッと打って、思い出す。


「そうだった、そうだった。覚えているとも、その件では迷惑をかけてしまったな」


「い、いえ、お気になさらず」


 なんと言えばいいかわからず、無難に答える。


「すまんな。見ての通りで褒美を与えれるような状況ではなくてな。謝罪も兼ねて盛大な物をといいたいところではあるのだがな」


「そんなの・・・必要ありません」


 失礼になっていないだろうか?でも、僕は褒美を貰っていい立場じゃない。さて・・・切り出さなければならない。


「あの!――」


「それと、報告があります」


 マロイトが割り込む。ギルサルとエスト、アフェイトがユイトに向けた顔をすぐさまマロイトに変える。


「帰還までの――」


「先に僕が報告を」


 話を中断させる。マロイトへの視線が僕に戻る。


 立場としてならマロイトが報告するのが正解だろう。だが、友人だと言うのであれば報告させるべきじゃないはずだ。当事者でもないのだから。僕話すのが筋だ。


「こ―――」


「まずは、私が話すよ」


 遮られる。僕からマロイトへとまた目が行く。


 さすがに僕もマロさんと視線を交わす。

 マロさんの優しい視線を見ると気持ちが揺らぎつつも、僕が言わなければという気持ちも強くなる。


 会話がなくなり、お互いの牽制がぶつかり合っている中に唯一入り込める者が止める。


「まぁまぁ、落ち着け。今回はセイズ公女に頼もうか」


 冷静な人間が決めるなら必然の結果になる。僕も、第三者に言われては引き下がるしかない。謝罪を籠めてマロさんに目を伏せる。


 優し気な微笑で返事をしてから、陛下へと報告を開始する。


 まずは、北部の情勢から始まり、自然種達の動向。戦いの結末。騎士の死亡、団長が亡くなったことを最後に告げる。


「・・・報告に感謝する」


 空気はガラッと変わったのを感じるが、冷静に労いの言葉をかける。


「疲れただろう」


 そう言って、扉の前を護衛していた一人を呼びつける。


「宿に案内を頼んだぞ」


「ハッ!こちらです」


「では陛下、失礼します」


 部屋を退室する。


 最後に振り返ってみた、エストさんの表情は――凍り付いていた。


 ―――――――――――――――――――――――


 ふぅっと息を吐き切って、片手で顔を覆う。


「そうか・・・あの姉上が・・・」


 アフェイトは長男として産まれたが、エレディアナの弟である。小さな頃から、姉と比べられて自分に自信なんて持てるはずもなかった。さらに、弟が産まれる。

 その弟も優秀であった。能力だけで判断できるのであれば、エストこそ次代の王になるべきだろう。性別の垣根を越えれるなら、姉が一番に変わりはないのだが・・・。


 それもあってか、弟は優秀でありながらも玉座を目指すようなことはしなかった。より優秀な姉が王にならないのに、なりたいとは思えなかったのだろう。


 それからは、男児は産まれていない。王位争いは歴史を見ても最速で終わった。弟を担ぎ上げようとした勢力も存在はしただろうが、危険分子と判断したのか、全てを父上に報告して過激な者に関しては、騎士の立場を使って処罰していたのだから徹底している。


 実際・・・。弟は私を敬っていないだろう。王になるのも流れでなっただけの能力も足りない兄のことなど認めていなくて当然だろう。

 それでも、王族だからなのか騎士だからか、国に全力で協力してくれている。


 真面目で柔軟な奴だ。国に仕えなくてもどこでだってやっていけるだろう。――これも・・・姉上の影響なのだろうな・・・。


 その姉上が亡くなったのだ。私は、年を重ねるごとに姉との関りは減っていった。今になって思うと、無意識に避けていたのかもしれない。殺されても死ななそうな姉に対する安心もあったのだろう。いつでも話せるのだから・・・と。


 だが、弟は・・・。姉を誰よりも尊敬していた。目を手で覆い隣の弟を見ずに心配する。


――はたして・・・立ち直れるだろうか・・・。


 唯一の弟を心配する。


 今日も心配事は増えていくのだった・・・。


 ―――――――――――――――――――――――



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