54.捜索
どれくらいの時間が経ったのか、目の前で二人が話をしているが内容は入って来ない。
鼓動を鎮めているうちに、人が動き始めたのを境になんとか聴覚を取り戻す。
「俺はもう行く」
「お気をつけて」
そんな会話をしていたと思う。
咄嗟にまずいとだけ思って声を張り上げる。
「僕も行きたい!」
黙っていた少年が急に大声を出したことで驚かせてしまった。エストが振り返る。
「君は・・・ここに残りなさい」
厳しく、正当で優しい言葉だ。足手纏いになる、実力不足。気持ちはわかるが残れと言われているのだろう。
だが、エレディアナが割り込んでくれた。
「いいだろう」
「姉上!?本気ですか!?」
「かまわん」
なぜかはわからない。だが、同行を許可してくれた。
「であれば、騎士の・・・私でも誰でも連れて行ってください!」
「お前は円滑な指揮に必要だろう。それに、俺についてこれる奴がいない」
エレディアナの身体強化は一流だ。治癒魔法のように体内魔力を作用させ、原初魔法のように操る技術。日々の強制的な肉体の動きによって鍛えられた筋肉は体格の差を超越した力を授けた。
獣人という種族から来る肉体に勝るとも劣らないレベルに引き上げられた。そこに強化魔法が加わるのだから、誰も追い付けない。ユイト以外は・・・
「ということは・・・。この少年はついていけると」
「身体の使い方がなっていないが、及第点だ」
なんと・・・。と思わず息を呑んだ。
「いくぞ」
「はい」
それを無視して、出発する。これまでの疲労など、とうに忘れていた。
第一発見は北西方面だそうだ。王都から近い北西の街に一先ず向かう。昼前には到着できたが・・・街と呼べる建物はなかった...。
元々大きな建物だと思われる残骸、王都の破壊よりも酷い惨状。動きを止めて生存者を探るが見つからない。エレディアナが周辺を観察して声をかけてくる。
「おそらく、森だ」
なにがだろうか。
「敵・・・ですか」
「いや、避難民がだ」
気配を見つけた・・・?いや、なら予想ではなく断言しているはずだ。推測だろう。
近くの南にある森に近づいていく、森の入り口には、倒れた死体が転がっている。頭部がなく片手を前に伸ばした姿で―――酷い。
足を踏み入れ進んでいく、出てくる魔物はエレディアナによって一刀両断にされる。
そんな、魔物達の気配に隠れて微かな人間らしき存在を捉える。あまりにも小さな気配。魔力がないのだろう。急いで接近する。
木に寄りかかりなにかを抱えている。騎士の風貌。
「なにがあった」
エレディアナが肩を少しだけ揺らしつつ治癒魔法をかけて語り掛ける。
「団長ッ・・・やつ・・・東に」
奴・・・東に向かった・・・?
「・・・おねがぃしま......」
なんの願いかは言葉にできていなかった。だが、ボロボロの片腕で持っていた何かをエレディアナに差し出す。
エレディアナが視線を向けると顔が青白くなった赤ん坊・・・息はもうしていなかった。
「あぁ・・・お前が守ったのかよくやってくれた」
微かに笑って力なく息を引き取る。もう、五感に欠如していた部分があるのだろう。
騎士の横に魔法で穴をあける。二つの命をその穴に丁寧に降ろす。今までの死体を埋めている余裕などなかった。もし一人一人していたら間に合わなかっただろう。この人だけ特別なのか、なら他は蔑ろということになってしまうのか、僕にはわからなかった。
エレディアナが独り言を漏らす。
「団長としての・・・せめてもの褒美だ」
陰鬱な背中で即席で作った墓を数舜だけ眺めてから移動を開始する。
「東だ」
「え・・・でも、違うんじゃ・・・」
この人達が亡くなったのは侵攻されている時で今は北に向かったんじゃないかと・・・。
「襲われてから、そうは経っていない。奴らは途中の街を無視して王都を襲った」
拳を握り締めながら悔し気に話してくれる。表情は真顔なのがさらに気持ちを表している気がした。
具体的なことを聞いている時間などなかった。東のどこにかはわからない、ならもう一度近くの街に行ってみるしかない。東北東に向かって走り出す。ずっと空振り続きで気分が落ち込んでいく、エレディアナも同じだろう。だからといって、投げ出すことなどできないのだ。走るしかない。
しばらくして前方、街が燃えているのが見える。また、出遅れてしまったかと俯きそうになるが正面を見る。俯いても仕方がないのだから。
すると、街の左に集団が北に移動している様子が確認できた。――あれは!
エレディアナが駆けだす。元々走ってはいたが速さが違う。僕は走り続けた疲労から遅れてしまうがなんとか後を追う。
接近してからわかる。あれは、人族ではない。薄緑の髪を持つ人のような見た目もいるが、その横に緑の髪に手足らしき部分が木でできた存在がいる。あれが――自然種




