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未定世界の知り方を  作者: むち神
第三章 【沼】
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53.損害

 作戦会議・・・ネルがいればいつものように空気を和らげてくれたのかもしれない。

 ネルの不在を明確に感じ取り寂しさが溢れるが、想いとは無関係に話は進む。


 ―――――――――――――――――――――――


「姉上はこれからどうされますか」


 瞑目している。瞳を開き現実を直視するために口を開く。


「被害状況はどうなっている」


 現状の確認は取れた。未来の行動を決めるためにも直視しなければならない。


「国民に大勢の死者がでてしまったのは目にしたと思われます。・・・陛下が非業の死を遂げたとのことです」


「・・・」


 後に振り返れば長い沈黙だったと言える。だが、この時はエストも同じ気持ちで一瞬に感じる程、短く感じた。


「そうか。アフェイトは避難できたのか」


「はい...避難経路を二つに分けてリスクを減らした結果・・・」


「北部はどうなっている」


「・・・不明です。連絡が途絶えました」


 他にも聞きたいことはあるだろう。だが、現状は把握できたことからこれからの話へと変わる。


「であれば、お前たちは本隊と合流しろ。南西の街へと避難してガラード国と連携を取るように伝えろ」


「姉上はどうされるのですか」


「北の街へ生き残りと敵の捜索をする」


「・・・危険です」


 溜めを作ってからわかっているだろうことを敢えて口にする。以前であれば、わざわざ理解していることを言わなかっただろう。


「知っている。だが、見捨てる選択肢は端からない。すでにこちらは手痛い痛手を負った。行くべきだ」


 これから攻勢に出ると言っても、瀕死の国は報復すらできないだろう。被害を減らし将来に向けて蓄える。もしくは、相手にも痛手を与えることが最善。とはいえ・・・。


「姉上に何かあれば......国の復興すらできなくなります...」


 戦力として全てを預けているという訳ではないが、騎士団の頂点が敗北した。その言葉は国民に絶望を与えるだろう。騎士団員にはそれ以上、もはや国の滅亡は確定・・・を意味し兼ねない。


 それほどの危険性を孕んだ上で、行動するほどの効果は得られるとは思えない。姉上の発言ではなく、部下が言っていたら反対していただろう。

 だが、それを言っているのは他でもない姉上である。なにか、別の思惑があるのかもと。


「リスクは当然ある。だが、ここで引けば我々はこの地を捨てることになるだろう。今一矢報いなければ、再興はない」


 感情論が含まれている。実行しても本当に・・・。


「奴らの立場になってみろ、万全の状態である我が国を襲ってほぼ無傷で帰らせては、次の侵攻は間もなく起こる。こちらの危険性を理解させなければ被害は増すばかりだ」


 そうだろう。だが、すでに良いようにやられた後、目的はわからないが次はある。少しの痛手でその決定が変わるとは思えない。――姉上なら、とも思わなくはないのは、盲信だろうな。


「我々の分水嶺はここだ」


「・・・姉上が言うのであれば、わかりました。こちらはお任せを」


 そういえば・・・姉上についてきていた。この、黒と白が混じった髪の少年は一体誰なのだろう。


 ―――――――――――――――――――――――


 偉い人達の会話を邪魔したくない。なにも知らない、知り合いの安否ばかりを気にしている僕が口を挟むべきではない。それぐらいはわかってきた。


「そちらの・・・少年は一体」


 エレディアナの後ろで突っ立っていた僕に話題が移る。


「あぁ、例の逃亡犯だ」


「あ!姉上が追いかけたという」


 エレディアナの横をすり抜けて、僕の目の前までやってくると、いきなり頭を下げられた。


「うちの者が迷惑をかけたようで申し訳なかった。なにやら誤解があったようで強制的に捕まえることになっていたらしい。君は当然、無実だ」


 逃走犯じゃなくなった・・・。誤解って言われても、なんの誤解なんだろう。いや、そんなことはどうでもいい。


「よかったです。クロイトさんやルキさん、オウキさん、マロさんは無事ですか」


――スイラスさんは、あの時いなかったから大丈夫だよね。


 あの時に手助けしてくれた人達が捕まったりしていないかを質問する。だが、エストは今回の被害状況だと受け取った。

 生存確認だと思うだろう、普通の流れである。だが、この時のユイトは楽観的であった。死んではいないだろうと心の奥底では確定してしまっていたのだ。軽々しく聞いた問いに重い事実が伸し掛かる。


「クロイトとは学園の教師で治癒だったか・・・おそらく、亡くなっている。ルキは、中継に配属され消息不明。他も、わからない」


 場が凍るとはこのことだろう。想像していた知らせが一つもない。黒くドロッとしたものが心臓を覆い隠すかのような錯覚に陥る。でも・・・見てはいない。そのことが最後の希望となっている。


 空気が凍り、身体が動かない。口元が動かない。


「わ・・・・・・は、はい」


 反射で返事をするのが精一杯だった。


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