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未定世界の知り方を  作者: むち神
第二章 【旅は道連れ】
44/110

42.いこう

 三回戦目。一試合。ユイトは心を落ち着けて会場へと上がる。


 相手は・・・長い棒を片手に佇んでいる。


「さあさあ!!もはや説明は不要だろう!!誰もが認める猛者二人!!!強弱など素人にはわからない!!!アシュラ対サバイ!!!!開始です!!!」


――ゴォォォォォーーーン!!


 見合う。お互い様子を見ている。攻めてくる気配がない。控室で治療をしてから休んでいて、今回も対戦相手がどんな戦い方か知らない。攻めるか。


 こちらが剣を振りかぶる。今回は一撃目から力一杯に斬りつけるが、棒を巧みに使い受け流される。だが、こちらは二本目がある。左手の剣を横切りにするが、棒を時計回りに回転させて、下から剣を叩かれ、相手の頭上に剣が逸れてしまう。その頃には。右の剣が自由になっているのでもう一度繰り返そうとすると、回転させた棒を停止させ、先端をこちらに向けて胴体を突く。

 なかなかの威力に少しの距離ができる。それがちょうどこちらの剣は届かずに相手の棒であればギリ届く距離だと気づかずに剣を振るうが、これは余裕を持って躱され、先端をこちらの頭目掛けて突いてくる。

 

 頭を後ろに倒してなんとか避けるが、バランスが崩れて後ろによろめいた。その時に足元に薙ぎ払いをくらって転びそうになる。――転ぶのはまずい!


 それだけはわかっていたので、手を思い切り地面に叩きつけて、受け身を取り。あえて転がりつつ離れた所で起き上がる。


――ハァ・・・。ダメだ。実力で負けてる。


 今までも剣術の腕前で勝ってきたとは思っていない。力、予想外、脚力、治癒魔法の存在。それら他に、持ち得る物で勝ってきたと思っている。

 それなのに、今回はそれら含めても負けていると感じるのだ。――どうすれば・・・。


 相手は攻めてこない。受けの姿勢。そちらが得意なのだろう。有利な点を考えろ。


 もう一度、仕掛ける。


 左手の剣を頭上から縦に振る。当然受け流されるが、力を抜きながら、柄から手を放して腰のナイフに持ち替えて投擲する。受け流していた方とは逆の先端を回転させて弾くがその時には、右手の剣が迫っている。同じように受け流すのは無理なのか、真っ向から受け止めた。一瞬の硬直。

 相手が苦痛の表情に変わる。剣を受ける少し前に投げた。二本目のナイフが脚に刺さったからだろう。最初に投げたナイフを回収しながら引く。

 相手が会場の隅にナイフが刺さった状態で飛んでいったが立ち上がっていた。


――やはり、武器を多く持ってきて良かった。


 武器を持ちすぎれば、様々な俊敏性や質が落ちる。鎧も同じだ。だが、防御力や手数は増える。一概には言えない。拮抗しているのなら、あったら勝てた、なかったら勝てた。状況によるだろう。

 そして、今回はあったからこそ、有利に運ぶ。


 じりじりとすり足で相手のズレを狙う。

 刺さった痛みからか、脚の震えを感じ取った。すぐさま、駆ける。 

 ナイフを投げる。正面から。当然、あたりはしないだろう。そのナイフが到達する前に、両手の剣を横なぎと真っ向斬りで同時にかかる。


 他所から見れば変な姿だろうが、当のサバイは冷や汗を流す。

 

 こんな戦い方は経験していないこともあるが、両手を広げて同時に斬りかかってくるなら胴体が、がら空きなのだ。そこを突けばよかったはずなのだが、正面からナイフ・・・。投げてくるナイフがかなりの速度。なのに、本人のスピードも速いせいで、ナイフを受け流したらすぐに剣が襲い掛かってくるだろう。ナイフは避けるのが最適解・・・脚の怪我を負うべきではなかったな。


 ナイフを避けるのも弾くのも諦める。

 投げたナイフを無視してサバイの胴体に突き刺さるが、代わりに、ユイトの身体に突きを放って吹き飛ばす。


――カハッ!


 腹に突きを食らって会場中央に戻った。ナイフを無視するなんて・・・驚いた。だが、こちらは鎧を着ていてダメージは少ない。内臓に衝撃が渡ったがそれだけだ。相手はナイフが二本も刺さっているのだ。


 再度、相手を注視して様子を窺っていたら・・・攻めてきた。


 ナイフが二本も当たったからだろう。持久戦ではこっちが有利になったのだ。

 相手の横なぎ、突き。それらを剣でなんとか防御する。片方の剣が弾かれて手から離れてしまう。――しまった。


 一本の剣でなんとか必死に守るが、徐々に攻撃を受けてしまう。一進一退の攻防の末――



「・・・おいらの負けだ」


 まだまだ、動けそうなのに、サバイが敗北を宣言した。


「勝者~!!!!アシュラ!!!!!!!」


 大量の拍手の中、質問する。


「どうしてですか・・・?あなたはまだ、戦えそうなのに」


「大人だからな、見栄を張っているだけだ。もう倒れる寸前だが、スタミナ切れで倒れたくはないな」


 恥じらうように笑って、去っていった。背中を見つめ、見送ってから、僕も会場を後にする。


――強かった。決勝がこの人以上なら優勝は・・・。


 自信が打ち砕かれそうになりながらも、でも勝ったのだからと前に進む。決勝へ。

 

失礼します。

ここまでの獣人に関する補足を入れておこうかと思い、書いておきます。



・基本的に獣人は、子供に優しい種族です。ただ、同時に働かざる者食うべからずを地で行く種族でもあります。ですので、ユイトやネルは途轍もなく相性が良く。頑張っている子供は、それだけで好感度MAX状態になります。ただ、皆大人なのであまり表に出したりはしません。


・上記のことを含めて、今回のサバイ戦、実はサバイは孤児院のような施設を運営しておりまして、特に子供に優しく。実は槍が得意であり、攻めと防御を繰り返す戦法だったのですが、子供相手だったので・・・攻撃をあまりできず、かといって、ここまで来た強者に露骨な手加減もしたくない葛藤の末、刃がない棒を使って防御に本気で専念するという事態になりました。最後も自責の念で負けを認めた部分もあるのかも?


・見物人でそのことに気づく人もいます。実力者や毎年見に来ている人ですね。それでも、野次ったり、馬鹿にする人がいないのは、上記が大きな理由です。


失礼しました。

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