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未定世界の知り方を  作者: むち神
第二章 【旅は道連れ】
33/110

32.いっぱいあるよ・・・

 武闘大会は三週間後。

 それまでやることは沢山ある。ユウジは訪問。ネルは大道芸。僕は・・・ない。

 

 やらなきゃいけないことはないけど、やりたいことはある。まず、防具を買うことだ。大会は魔法禁止なのだ。使った所でバレないのではとネルが言っていたが、禁止なことをやろうとは思えなかった。小市民である。

 他にも、武闘大会に出るのだから、なるべく鍛えて強くなるべきだろう。



 ということで・・・。僕は今、自由組合で依頼を探しに来ています。

 嫌々ではあります。やりたくありません。ネルもそんな僕を見て、お金なら芸で稼いだ分があるから買うよと言ってくれてはいた。その天使の誘惑を全て断ち切って、強くなる必要もあるから。となんとかここまで来ていたのだ。対人戦の経験は得られないだろうが、少しは・・・為になるはず・・・。


 受付の人に近寄って聞いてみる。


「すみません、強くなれる依頼はありませんか?」


「つよく?...強くなる依頼ですか?」


「はい」


 意味が伝わらなかったのだろうか。考え込んでしまう。


「すみません、強くなるとはどういった類の依頼かお聞きしても?」


「えーと、戦う?魔物とか人とか、鍛えられそうな依頼?です」


「・・・ランクなどはいくつでしょうか?」


 見た目が子供なのだ。血の気の多い依頼は出しにくい。かといって、望む依頼を出すのも受付の仕事なのだ。まず、実力を確認して適正な依頼を探そうと聞いてみる。


「Dランクって聞きました」


「D・・・ですか、だとするとー。どぶさらい、清掃、荷運び・・・。荷運びはいかがですか?」


 荷運び・・・身体を鍛える意味は薄い気がするので。首を振って他の依頼はありませんか。と悲哀な表情でもう一度聞いてみる。


「う~ん。近くの弱い魔物は高ランクの方がついでで倒すので...依頼はありませんし・・・」


 受付の人がこちらを見つめて、決心したようにこそこそと紹介する。


「実は...依頼ではないんですが・・・最近、高ランクの方々には話したのですが、北の山脈。ゼル樹海の魔物を狩ってくると報酬がもらえますよ」


 ゼル樹海。あの大きな山の麓にある森。ユウジさんが言っていたな、魔物恐慌がどうのって・・・大丈夫なのだろうか...。


「あの~...。魔物恐慌などは大丈夫なのですか...?」


 受付に合わせるようにひっそりと聞いてみる。


「?もちろんです。少数がなにかした所でどうともなりませんよ」


 子供を諭すかのように安心させる。

 山脈か・・・距離はあるだろうが、帰って来れるのだろうか。帰って来れるのであれば、悪くはない気がする。幸い、依頼ではないらしいので日時は決まっていない。なら、まずは確認だろう。


「ありがとうございます。知り合いに確認してみて問題なければそうしようと思います」


「はい、お気をつけて」


 自由組合を後にしてユウジ家に帰宅する。運が良いのかユウジがいたのですぐに聞いてみることにした。


「ユウジさん、自由組合の依頼でゼル樹海って所に魔物討伐をしにいってもいい?」


 一応、計画に支障がでないのかも含めて。

 

 ユイトなら実力に心配はないだろう。


「ああ、構わない。だが、中層以上は危険だ。気を付けた方が良い。ただ、上層は絶対に入らないように。入れないとは思うが」


 あっさりとした承諾を頂いた。受付の言葉通り、そこまで気にするようなことではないみたいだ。過敏になりすぎてたのかな。


「なら、行ってこようかな。どのくらいかかるのかな。間に合うよね?」


「馬なら・・・ゆっくり七日くらいだろう。今からか?ネルーロに聞かないのか」


 そんなわけがない。出発は明日にしよう。・・・道中も魔物は出るんだろう...どうせね...。


 そうして、久しぶりに家でのんびりとした時間を過ごす。だが、なんだろう。今まで気にしたことがなかったのに。一人でいるのが・・・こんなにも静かだったなんて。

 静かな部屋で寛ぐ時間のはずが、心が休まらずに時間は経過する。・・・いつの間にかネルが帰宅していたらしい。


 おかえりとただいまの挨拶を終えて、さっそく本題に入る。


「依頼を探したんだけど、良いのがなくて・・・ただ、山脈で魔物討伐すれば報酬があるみたいなんだ。だから、行こうかなって」


「いいと思うよ。ユウジには聞いたんでしょ?なら、賛成だよ」


 肯定してくれた。続けて、


「なら、また、馬車?いや、馬かな。での旅になるね」


「あれ?ネルは来るの?来ても大丈夫なの?」


 ネルには大道芸があるのだ。中央から離れることができないと思っていたが。言葉の抑揚的に一緒に来る話しぶりに聞こえた。


「もちろんだよ!なに?置いていくつもりだったの!?」


 大袈裟なリアクションで非難する。ここまでの付き合いで冗談なのはわかっているが・・・。


「いやー...路上での芸はいいのかなって・・・。もちろん!ついてきてくれたら嬉しいよ!」


 取り繕うように言ってはいる。少し前までは一人で行く気満々であったが・・・二人で行ったほうが楽しいことに気づいたのだ。ついてきて欲しい。でも、邪魔はしたくはないのだ。


「道中の街でも公演してれば十分、名声に繋がるだろうし。帰ってきたら大々的にやれば、しばらくぶりってので大盛り上がりだよ。たぶんね」


 そう聞けば、問題はなさそうに聞こえる。


「なら、ついてきて欲しいな」


 フフッと口角を上げて――


「もちろん。どこまでもついていくよ」


 そう。言ってくれたのだった。

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