13.これが力
ガタガタと揺れながら走り続ける馬車。
さっきまでとは違い。床ではなく座席に座っているにも関わらず痛みが継続していることに苦し気な顔をしながら、後ろを見る。
遠くの後ろの方に見えていた門番達が見えなくなってきていたことに安堵する。
「追って、来ないね」
「うん、そうみたい。オウキ君が何かしたんだろうね」
「すごいな~」
マロさんが気の抜けた状態に戻っている。まだまだ、引き締めた方がいいのではと思わなくもないが今更である。門番さんと話した時だけだったな。
後ろに明らかに門番達よりも素早い馬が駆けてくる。
「来てる!でも、一人・・だね?」
大勢でないのは良いものの、それでも追っては向かってくる。
「一人ならなんとかなるんじゃないかな」
そんな力強い発言をしてくれるネル。だが・・
「あれは~無理だね、この国の騎士団長様だから」
マロがそんなことを言っている。
「騎士団の頂点・・・一応聞くけど、ネルなんとかできるの?」
「できないね...。」
当然だろう。ネルはいつだって優秀でなんでもできそうな雰囲気を纏っているからこそ。聞いてみた。
騎士団長を乗せた馬がさらに速度を上げる。もはや追い付くのは確定した。どころか、真後ろまで迫ってきている。
「やってはみようかな!」
――土達磨
ネルが窓から手を出し、地面に向けて大きめの丸い岩を放つ。それは、地面にそのまま落ちていきゴロゴロと土の上を転がっていく、無駄に見えた行動。それが、段々と土を巻き込み巨大な土の塊となって騎士団長に迫る。のだが、柔らかいのか騎士団長の一撃で壊されてしまう。
「だけど、土が舞う」
土が騎士の目の前を塞ぎ視界を遮る。すぐに払いのけようとする騎士団長だが、
そこに、追い打ちをかけるように魔法を打ち込む。
――水散弾
威力はそこまで込めてはいない。だが、相手がまだ、土を払いのけていない今、土が水に濡れて騎士団長目掛けて纏わりつくかのように飛んでいく弾となる。不快であり速度も落ちる。馬を狙う。
そして、防がれたとしてもネルだからこそできる。とっておきの方法。原初魔法を馬の脚目掛けて放っておく、馬には申し訳ないが躓いてもらおう。
奇しくもその方法は騎士団のそれと似通っていた。魔法を囮にして同時に原初魔法をしかける。大きく回避しなければならないが、馬の視界が遮られる目前に完璧に操れるかどうかが鍵となるだろう。
相手が騎士団長でなければ、全てを防いだとしても時間稼ぎは確実の一手。
騎士団長は違う。なぜならば、馬は見栄えや疲れから乗っているだけであり、走った方が.....速い。
騎士団長は馬を傷つける可能性のあるものだけを防ぎ。飛び降りる。馬は土が煩わしそうにじたばたしながらも減速してまっすぐに走っている。それを置き去りにして馬車に追いつく騎士が屋根に飛び乗る。
「やっと、追い付いたぜ。たく、馬を狙わず俺を狙って欲しいもんだ」
「おい、お前、馬車を止めな」
御者の主かの如く。命令する。
「はい、止めてください」
御者の主からも同様の命令が下り、すぐさま馬車を停車させる。
ぞろぞろと馬車の中から降りる三人。
「おい、子供ばっかじゃねえか。それとも御者が逃走犯って奴なのか?まあ、全員捕まえるが」
まずい、僕に巻き込まれた人だとしても、御者の人は一番関係がない。
「僕が逃走犯だよ。僕だけにしてはくれない?お願いします」
あっさりとしたお願いごとを言ってはみるユイト。
「お前か、まあ大人しくついてくるなら乱暴はしないさ。全員連れて行くのは変わらないがね」
「それは、なりませんね」
「だめだね」
ネルーロとマロイトが断固として断りをいれる。
「なら、やるしかねえな。俺はエレディアナだ。さあ!かかってくるといい!」
「勝てるとは思ってないよ。・・・ユイトは少し離れて逃げる準備を」
後ろの言葉だけ小さな声で言われた。なので、少し離れた位置にじりじりと向かっていく。
お互い身構える。だが、かかってこいと言いながら先に動き出したのはエレディアナであった。
まず狙われるのはネル。とんでもない速さでネルの近くまで迫って一撃を加える。咄嗟に防御が間に合ったようだが、御者の方向に吹っ飛ばされ御者諸共ダウンする。さらに、近くにいたマロイトの腕を引き寄せ。的あてして遊んでいるかのように、ネルに気を使いながら起き上がろうとした御者の頭に的確に投げつける。
「これで、あいつは気絶したかね」
狙ったかのようにマロイトの膝が後頭部に直撃したのか確かにピクリともしなくなった。――こ、殺してないよね!?
ここまでお世話になった一人の安否を心配する。
「次は――」
「僕だよ」
突然の戦闘で呆気にとられた僕に変わり、ネルが起き上がって宣言する。
「まあ、か弱い素手での殴りだ。すぐに起きれはするが、子供が痛みを我慢して勝てない相手に向かってくるとはな。気に入った!」
「今度はこちらから」
手から火や土を出しエレディアナに向けているが、素早く回避されたり、土の壁で防がれたりと接近されていく様子を――
見ている。
ここまで。眠気を我慢し、痛みを耐え、不安に勝ち、心配を重ね、嬉しさが溢れ、申し訳なさが募る。もうたくさんだ。なんなんだ。なにをしたというのか。誰か教えてほしい。言ったところで仕方がない。考えるだけでは意味がない。そんなこととっくにここまでで学んだだろう....!
だから!
騎士団長を真似するように神速の速さで迫り殴る。
「な!?!?」
驚愕どころではない。真似?違う。エレディアナの速さを越えたスピード。腕力で殴られたのだ。自分よりも速さで勝てるとは思ってもみなかった。子供が腕力で勝るなど考えてもいなかった。そんな一撃を食らって吹っ飛び。あえて飛んでいく方向に壁を作り無理やり止める。
すぐさま、向かう。対等な相手の元へ。
「てめえ...!ふ、フッハハハハハハ!!!効いたぜ俺の装備じゃなきゃ死んでたかもな!そんなことはいいか、久しぶりに人間との闘いだ!」
「手加減しねえからな?ここからは本気で行く!」
手から黒い塊を出しながら形作る。モゾモゾというよりガチャガチャと変形していく物体は剣・・・黒い大剣となる。
「この世で一番かてえ鉱物、アダマンタイト。この鎧と同じな。だがよ、これには欠点がある。途轍もなく重いってな。だが、俺なら軽いッ!」




