第ニ章 更なる戦い 2 力の差
「一人仲間が増えたくらいで、私を倒せると思ってるの? だったら、それは甘い考えね。いくら仲間がいたって、私に勝つのは到底不可能よ!」
そう言うジュリンに、俺は攻撃を仕掛ける。
「くらえ! 『斬り上げ』!」
すると、ジュリンは、俺の刀を避けようともせずに、俺に向かって来た。そして、俺の刀は、ジュリンに当たる。しかし、その直後に、俺は、樹木となったジュリンの腕に巻き取られてしまう。
「これは……まさか!?」
「まんまと罠にかかったわね! このまま動けなくして、毒漬けにしてあげる!」
そう、俺は、ジュリンの作戦に引っ掛かってしまったのだ。その間にも、俺の体力は、どんどん削られていく。
(どうすればいいんだ……このままでは、死ぬのも時間の問題だ……かといって、召喚したジョンまで巻き込む訳にはいかない……ジョンだけでも逃がさないと……)
俺はそう考え、ジョンに声をかける。
「ジョン、わざわざ召喚しておいてすまないが、お前の為だ。俺のことを見捨てて、逃げてくれ。頼む。」
それを聞いたジョンは、悩ましい顔をする。恐らく、俺を見捨てて逃げるのか、もしくは、俺と一緒に戦うのか、迷っているのだろう。ただ、俺としては、前者の方を選んで欲しい。ジョンが一緒に戦ったとしても、ジュリンを倒せる確率は限りなく低いと思うからだ。
果たして、ジョンの決断は――
「楽夜、やっぱり、俺は、お前を見捨てて逃げるなんてことはできない! 俺は、お前と共に戦う!」
ジョンは、そう宣言する。が、俺にとっては、とんでもない大問題なのだ。もし、ジョンがこの戦いで死んでしまったら……申し訳ないどころの話ではすまない。ジョンが死なないように、俺が頑張らなければならない。そして、この戦い、絶対に勝たなければならない。
「分かった。ジョン、あまり無理をするなよ。時間はあまり残されていないが、自ら死にに行くようなことはしないようにな。」
俺は、ジョンにそう言うと、ジュリンの腕から抜け出そうとする。が。
「くそっ、この樹木、全然離れないな……」
樹木となったジュリンの腕は、俺を離すどころか、さらに強い力で俺を締め付けてくる。
「何をしたって無駄よ! もうあなたは、私の手から逃れられない! いい加減に諦めなさい!」
そうジュリンが、嘲笑うように言い放つ。その様子から、圧倒的な余裕が見てとれる。事実、ジュリンがそう言っている間にも、俺は毒のダメージを受けており、どんどん不利になっていた。このままHPの減少が進めば、俺の敗北は確実だ。しかも、俺は、自由に動くことができない。もしも一人だったなら、この時点で、俺は敗北していただろう。だが、今、俺には仲間がいる。ジョンという仲間が。彼が、俺の唯一の希望だった。
と、その時。ジョンが行動に移る。
「いくぞ! 『心臓突き』!」
そうジョンが唱え、突剣を突き出す。その突剣は、ジュリンの心臓に刺さる軌道で突き出されており、その突剣がジュリンの心臓に刺されば、致命傷間違い無しだった。
が、ジュリンには、俺という盾があった。ジュリンは、突剣の刺さる先、ジュリンの心臓の前に、俺の移動させる。そして、その顔に、不気味な笑みを浮かべる。
俺は、慌てて盾を翳し、ジョンの突剣を防ぐ。その行動のお陰で、俺は、死を免れた。ジョンの突剣は、俺の盾に突き刺さっており、ジョンも、追撃をする様子はなかった。
「楽夜、すまん。危うく、お前を殺すところだった。」
と、ジョンが謝って来た。
「いや、ジョンが悪い訳じゃ無い。この調子で、攻撃を続けてくれ。」
「分かった。」
と、ジョンを許し、そう指示した。
「反射神経はいいのね。でも、そうしてるだけじゃ、私は倒せないわよ?」
ジュリンがそう煽って来たが、俺はそれを聞き流す。こういう挑発は、聞かずに無視するのが一番の正解なのだ。
と、ジュリンが、俺の無視に反応してきた。
「無視してるんじゃ無いわよ! こうなったら、無視した分も含めて、痛め付けてあげる!」
とジュリンが言う。どうやら、無視したことで、要らぬ怒りを買ってしまったようだ。これは、俺も本気を出さねばな。
と、戦闘は、どんどん過激になって行くのだった。




