9ー16
今日の更新でシャルトル家のタケルは完結となります。
日本時間13時55分
昼食後、早速開始した組み合わせの実験と研究。ちゃんと成分が混ざり合い、効果を持つようにするまでに、全力を尽くした。
途中で抽出水が不足する事態に陥り、残しておいた薬草の半分を追加消費。合計失敗回数が4571回に到達。それでも、何とか成分を混ぜ合わせる事に成功。
テロル草とミッティ草にセルゲン草の抽出水を7滴、時間を15分経過させた後にローレン草のを12滴。時間を37分経過させてから最後にアーブ草のを4滴。これで成分は完全に混ざり合った。
今度はこれを大急ぎで増産してから、灼熱土竜の血と涙。そしてユニコーンの血を混ぜての最終仕上げへと現在挑戦中なのです。
そして今回は俺とセリーヌだけじゃなく、協力者にシャロンとリュシー。アルフォンスとクロエは、俺達が失敗した原因を考えた内容を清書。セリアとクロードは、宮廷魔術師団に向かっている。
ナナミとノエルの2人は、俺の代わりに来客対応。メイド達には通常業務を命じてあります。
「先に灼熱土竜の血を入れて様子を見る。薬瓶1本ずつに入れる量を変更。振り混ぜと軽く揺すっての攪拌を任せるから」
「はい」
「……任せて」
シャロンとナナミが頷いたのを確認し、俺は最初に用意した20本に1滴、2滴、3滴と1本毎に入れる量を増やしていく。20本で20滴を入れた後、シャロンとリュシーが振り混ぜと攪拌を行ってくれる。
「セリー、次の20本を用意してくれ」
「どこに置く?」
「そっちに」
俺は指差して場所を指定した後、混ざったかの確認に差し出された薬瓶を受け取って解析を実行。1本ずつ確かめていく。
全く変化なしだったので、時間経過による反応待ちを行う事にもなった。そして次から次からと、量を調整しながら入れていき、作業にどれだけ時間が掛かるか不明と判断。
「同時進行で灼熱土竜の涙を入れようか。管理が大変になるけどセリー、協力してくれるか?」
「任せて」
セリーが頷いたので、血と涙をそれぞれ別に入れていく。そして随時、俺が解析を行ってその結果を確かめるの繰り返し。
これを133回繰り返した時に、ようやく反応があった。血よりも先に涙を混ぜた方が見事に混ざり合ったんですよ。なので急遽、血を混ぜた物は時間経過観察用に15本だけ確保し、残りは全て破棄。
正解だった物をまた増産して、どちらの血を入れるかで悩んだ。
「セリー、灼熱土竜とユニコーン。どっちの血を先に混ぜた方がいいと思うか意見を聞かせてくれ」
「私には分からない。でも、何となくだけどユニコーンの血は最後の方がいいと思う」
「なら、そうしよう。それと灼熱土竜の血も、熱で温めた物と、そうでない場合と実験してみるか」
「タケル様なら、きっと完成させられます。わたくしに新しい魔法薬が完成するところを見せてください」
「……見たい」
シャロンとリュシーから激励(?)があり、俺とセリーヌはすぐに開始。
「セリー、こっちのは3滴から7滴の順番で入れてくれ。俺は血の方を熱で加熱する」
「分かったわ。どのくらいの時間にしておく?」
「とりあえず5分から15分の間。どれをどのくらいの時間放置するかはセリーに任せる」
「タケル様、攪拌が終わりました」
「貸してくれ。解析。……変化なしか。その砂時計で3分間を追加してくれ」
「はい」
「……振り混ぜた」
「どれ。……これもダメか。そしたら、セリーが涙を入れたのを振り混ぜてくれ」
「……任せて」
「ヴォン」
「ウォルフ、この紙をっと。……よし、アルフォンスとクロエに届けて清書を頼んでくれ」
「ヴォフ」
「ヴァーフ」
「ヴォルフ、後で遊んであげるから今はベアトリスやシルヴィたちに相手をしてもらってくれ」
「キュウゥン」
「後でちゃんと遊んであげるから」
「ヴァフン!」
ウォルフが影から出てきたタイミングで、失敗した組み合わせと、その理由と原因を簡単にまとめた紙をアルフォンス達に届けるように依頼。
続いてウォルフの影から浮上してきたヴォルフに、後で必ず遊ぶからと約束してベアトリスを呼んで相手を任せたりと忙しい。
しかもこの間にも試した熱で温度を上げた血を数十本の薬瓶に滴数を調整しながら投入。これを混ぜてもらいながら、解析したりと本当に忙しく実験し続けた。
そして2時間が経過して、ようやく完成したのです。淡い光を放つ赤銀色の魔法薬が。解析を行って判明した。
「完成だ。回復薬じゃなくて“欠損部分再生薬”の完成だ。まず半分を飲んでから、残りの半分を失った四肢の断面に掛ければ、早くて1日。遅くても3日で完全再生する」
解析結果を口にすると、調薬室にいた俺以外の全員が大喜び。
「タケル様、お疲れ様でした。本当に見事な実績と功績であると同時に、史上初の偉業達成おめでとうございます」
「ありがとう。皆の協力があってこそだ。早速、人数分を追加で作って王城に届けよう。そして、すぐに騎士たちの失った手足を再生さてあげないとな」
「……でも、問題は心。……廃人状態」
リュシーの言葉に居合わせたメイド達が、残念そうな表情を浮かべる。だけど、これに関しては俺も対策を講じる準備は密かにしておいたんです。
夢香草と心強草を組み合わせた、過去の辛い経験を乗り越えさせるための克服の魔法薬。まずは四肢を再生させてから、手足が再生する事を何度も言い聞かせてから、克服薬を飲ませる。
そうすれば、後は夢の中でトロールとサイクロプスから何とか無事に逃げ延びられるという経験を何度も刷り込ませる事で完了させるんです。
そして効果が切れた瞬間に騎士達の心と精神は、以前よりもずっと強くなった状態で起きるという魔法薬なのだ。
すぐにアルフォンスが馬車を用意してくれるとの事なので、俺達は増産した人数分の“欠損部分再生薬”を持って王城へと向かう事にした。
□
完成した欠損部分再生薬を持って、王城を訪問。陛下を呼び出してから、医務室へと向かった。そこでは相変わらず何の反応も示さない騎士達が。
しかし、まだ話せる騎士達が俺達に気付いて声を掛けてきた。ずいぶんと久しぶりに会ったけど、しっかりと覚えていたようだ。
「タケル殿じゃないですか。どうしたんですか?」
「失った手足を再生させる魔法薬を完成させたんだよ。だから飲ませに来た」
「「「「えぇーーーーーーーーーー!!!!????」」」」
「うるさい!」
俺が放った言葉にかなりの衝撃を受けたらしい医師達と、この場に来ていた魔法薬師達が揃って大声を上げた。あまりにもうるさかったから、つい怒鳴ってしまいましたよ。
「この魔法薬を半分飲ませてから、残りを欠損部分に掛けてやれ。そうすれば早ければ1日。遅くても3日で完全再生するから」
「そ、そんな夢のような魔法薬が!?」
「タケル殿、貴殿は魔法薬師の神様か!?」
「す、すぐに騎士達に飲ませましょう!!」
騎士、医師、魔法薬師があんまりにも騒ぐように言ってくるもんだから、俺は「さっさとしろよ!!」と促して作ってきた魔法薬を強引に渡す。
そして、俺自身も同行していたナナミとシャロンの2人と協力して無理矢理にでも飲ませて、包帯を無理矢理に剥がしてそこに振り掛けた。
「ナナミ、シャロン。余は幻かそれとも、不思議な夢でも見ておるのだろうか?」
俺と医師、魔法薬師達が次々に治療を行っていると、後ろの方で陛下が娘達に質問を開始した。
「タケルがどんなに優秀であろうと、欠損した四肢を再生する魔法薬を完成させられるとはな」
「お父様、夢ではなく間違いなく現実です」
「お父様、タケル様は何度も失敗を重ねながらも決して諦めずに努力を続けたんです。だからこそ作成に成功したんですよ」
「う、うむ。しかし、ナナミとシャロンとの会話も夢なのではないかと思えてな」
「なら陛下」
「む?」
あんまりにも信じていなさそうだから、声を掛けて振り返らせた。そして、振り返った陛下に思いきりのデコピン。
「ぐふぉら!」
容赦ない威力を放ち、それを真っ正面から受けたせいか、陛下は奇妙な悲鳴(?) を上げると額を押さえて床をのたうち回った。
「その痛みが夢じゃなくて現実だって教えてくれているだろ?」
「陛下!」
「大丈夫ですか?」
「タケル殿、陛下が夢を見ておられるかもしれないとの発言をしたからと言って、何も額を指で打つなど必要などないのでは?」
「他に現実だとわからせる方法あったか?」
「ご自分で頬をつねっていただくとか」
「この水を飲んでいただくとか」
うん、実に平和的な対応方法だけど、何となくそれさえも夢だって片付けそうな感じがしたんだよね。
「とりあえず陛下は放置しておくとして。早ければ明日には数人の手足が綺麗に再生しているはずだ。一応、ちゃんと動くかとか、痛覚があるのかの確認をしておいてくれ」
「承知しました」
「お父様、いつまでも痛がっていないで、早く起き上がってください」
「お父様、大丈夫ですか?」
ナナミは突き放すような感じなのに対し、シャロンはちゃんと心配している。陛下は額に手を当てながら起き上がってから、俺に確認をしてきた。
「タケルよ、本当に早い者なら明日には再生しているのか?」
「もちろん。それと、この魔法薬を飲ませておいて。寝ている間に廃人状態を治すから」
「助かります。同僚がこのような状態のままでは、我々も安心して退院が出来ませんので」
「そうかい。それで、お前さんの全身打撲と全身骨折は?」
「打撲は治りましたが、骨折に関しては何とも」
ベッドに横たわったままの騎士が、残念そうな表情を浮かべた。俺は自分の影に手を突っ込んで、そこから1本の魔法薬を取り出す。
「上級生命薬だ。これで骨折も完治するだろう」
「ありがとうございます」
「おう。それじゃ、騎士たちの経過観察をしっかりとな」
「はい」
「それじゃ陛下。俺たちはもう帰るから」
俺はナナミとシャロンを連れてさっさと王城を出る事にした。陛下が後ろから「本当に助かった。感謝するぞ」と言ってくるから手をヒラヒラと振って、さっさと屋敷へ帰る。
□
屋敷に帰ってから最初に行ったのは、俺が出来る臨時講師としての最後の仕事。実際に最後かどうかはともかく、教えられる限りは教えたから最後という表現で良いだろう。
1限目から3限目まで全てテストに回そうと思っている。だらかそのテスト問題の作成だ。今までに教えてきた事の中から、覚えておくべき基本知識から応用編。
薬草の効果、下処理、加工時の注意、どんな魔法薬になるか、他の薬草との組み合わせと保存管理に関する知識確認。
これだけじゃなくて、魔法薬以外にも普通の市販薬にも使える花の種類。どこに生えていてるかとか、基本価格に取り扱い時の注意事項。
魔獣材料の取り扱い注意、生息地にどんな外見なのか。魔獣を殺さずに血や涙を穏便に回収する為の方法。さらに鮮度管理に必要な知識に技術も盛り込んで作っていく。
それと実技テスト用の課題の準備。初級編(入門編とも言う)の本当に簡単な魔法薬から、中級魔法薬までのリストを作っておいた。
どれも繊細な取り扱いが必須である物ばかり。俺がどうしてそれを選んだのかと言うと、3人にどれだけの魔法薬師になりたいという想いがあるのか。
そして、ただ完成させるだけではなく、他人に教える場合においての説明力を身に付けさせる事も目的として含まれているんですよね。
「タケル様、リック王子様からお手紙が届きました」
リビングで行っていたテスト作成の手を止めて、俺はベアトリスから渡された手紙を受け取る。封を綺麗に剥がしてから、中に入っていた便箋に目を通した。
「帝国と皇国が、ぜひとも2人の王女を妻に迎えようとしている俺に会っておきたい、と。厄介だけど、避けては通れないか。
それに一方的に襲ってくるなら、全力で叩きのめして実力差を悟ることの大切さをわからせるとしよう」
俺の呟きにベアトリスは「ご参加のお返事でよろしいですね?」と確認を取ってきた。俺は頷いて肯定を返したのち、再びテスト問題作成と実技リストの作成に戻った。
この1時間後にヴォルフやアンコ達からの、遊んで構って攻撃に合い満足するまで相手をした。その後、俺はウォルフとシュックスを呼び出してモフっておきましたとも。
「タケル様、当主様よりお手紙が届きました」
「父上から?」
ノエルが持ってきた手紙に目を通すと、実家のシャルトル邸からある程度の距離にある土地に“移ろいの森”を確認したという内容だった。
それと、次回の旅先とその日程を知らせるようにという文章も。これに返事を書いてから、翼竜郵便を呼んで手紙の速達を頼んだ。
返事の内容は、まだ旅先を決めかねているという事と、今度行われる国家間の交流会に俺も参加する事になったという報告を。
そして、この後にアルフォンス達を呼び集めて次回の旅先を決める話し合いを行った。この段階ではリエヴァン公爵領か、あるいはクレイユ海洋辺境伯爵領という話に。
この日は俺が大仕事(?)を終わらせた事もあり、日中から笑い声の絶えない時間を過ごしましたよ。夕方頃は陛下から俺が“欠損部分再生薬”を完成させた事を聞いたらしい貴族達が次々に訪問してきて称賛の嵐。
夜は夜でベアトリスとシルヴィが張り切ったのか、非常に豪華な食事になって和やかな時間を送りました。
□
あれからしばらく経った。騎士達の四肢は見事に再生されて、今では普通に騎士として復帰している。エリク、ララ、ロラの3人も俺が用意したテストで、十分に合格基準の成績を叩き出してくれた。
なので俺は陛下とアデライド学院長に、3人を見習い講師として雇うようにとアドバイス。見習い講師として採用されて、ブリアック講師や他の教え上手な講師の元で授業方法を学んだりしている。
俺の方は国家間における交流会に参加した。あまりにも見事に帝国と皇国が、ナナミとシャロンだけではなくリュシーにセリーヌ、そしてノエルを引き渡せと言ってきたのです。
お前には似合わない、我ら優秀な血を引く人間にこそ相応しいと。断った途端に実力行使に出てきたので、彼らの騎士団を壊滅させました。目の前でね。
激昂した王子や皇子達が襲ってきたので、全員を超絶殴打にしたよ。それでも権力を使って来ようとしたので、とりあえず四肢の骨を砕いてから2度と逆らわないと誓約するまで殴った。
帝王と皇帝が弱肉強食をいきなり実行し、襲い掛かってきたけど返り討ちにしてから男の象徴を空気刃で細切れにしておいたとも。
必死に謝罪と慈悲を求めてきたけど却下。どうしてもと言うなら両国とも、王国にではなく俺に絶対服従を誓うなら治してやると言ってみた。
そしたら土下座で絶対服従を誓ったので、魔法薬で治してみたんです。そうしたら「バカめが!!」と言ってきたので両国の継承権第一位の身体を“紅蓮獅子”で塵も灰も残さずに燃やした。
それと念話で会話可能な距離に待機させた赤竜に命じて帝国は帝都が完全な焼け野はらに。皇国の皇都は“風切巨狼”で大破壊。
帝国と皇国の国民達が非難してきたから「俺に絶対服従を誓いながら、即座に裏切ったばかりか実力至上主義と弱肉強食を訴えてきたので制圧したまで。
絶対服従を誓いながら、平然と裏切ろうとしたことによる代償がお前に起きたまで。恨むなら無謀にも俺に挑んで返り討ちにあった、自分たちの国をトップにしろ」と言っておきましたとも。
もちろん帝王と皇帝は自分達の敗北を認めず、卑怯な奇襲攻撃を受けたと主張。しかし、これは現場に居合わせた周辺の諸外国が証人として俺を擁護し彼らを批判。
俺達は今後一切において帝国と皇国の人間は、どの国も受け入れず、また輸出も輸入もしないと発表。これには国民も焦ったようだ。
懸命に俺への謝罪と服従をと迫ったものの、全く聞く耳を持たない帝室と皇室は国民達によって攻め滅ぼされる結果に。その後、両国の優秀な公爵家が新帝室と新皇室を作り出した。
そして、俺への絶対服従は無理だけども、不可侵条約の締結を実行。これと同時に、輸出と輸入の再開を申し込んできた。
この件に関しては多いに揉めたけど、陛下が「タケル、何か一言頼む」と俺に言ってきたので「帝国と皇国が高い関税を支払うなら、再開させてもいい」と回答。
2国はトゥーロンのみならず、周辺諸外国との貿易に多額の関税を支払う事となったんだよね。
俺の方はこの件が片付いた後に、新男爵領や海洋辺境伯爵の領地、三公爵の領地を旅したりと動いた。旅の間にも作り続けた様々な魔法薬と魔獣討伐や退治の実績と功績により名前が知られていく。
トゥーロン国内のあちこちを旅した後に、ナナミとシャロン王女姉妹、リュシーにセリーヌとも結婚。幸せでありながら忙しい生活を送っていくうちに、更に名前が知られ渡っていった。
いつしか俺は、このファンタジー世界でこう呼ばれている事を知る。
「神様のような魔法薬師であり、凶悪な魔獣を平然と退治し討伐して従える。流石は“シャルトル家のタケル”」だと。
完結
連載開始から9ヶ月もお付き合い下さいまして本当にありがとうございます。
累計総合pv15万を超えられたのは、読んでくださった皆様のお陰です。
今まで読んでくださった方、ブックマーク登録をしてくださった方、評価をしてくださった皆様に心より感謝を。
次の作品を年内に出せるか、それとも来年になるかは分かりませんが、次回作でもお付き合い頂ければと思います。
異世界召喚の話か、それとも近未来的な話にするかで検討しています。現状ですと、召喚物になるかと。
繰り返しになりますが、今までこの作品にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
次回作の方もよろしくお願いいたします。




