LoveLetter
今回は恋愛に重きをおいてみました。が、ミステリーです。
学園の生徒達が、おのおの挨拶を交わしながら登校して来る。あくびをする者もいれば、妙にテンションの高い者もいる。至って普段と変わらない朝の光景だが、探偵倶楽部部長大崎レイにとっても、靴箱を開けるまではそうであるはずだった。
内履きを手に取った大崎の足元に、ひらひらと何かが舞い落ちた。
「ん?」
拾い上げてみると、ハートのシールで閉じられた、淡いピンクの小さな封筒だった。香水が振りかけてあるのか、微かに甘い香りがした。紙の感触を確かめるように、慎重に中身を取り出す。
大崎にとってはまだ見ぬ世界。瞬間大崎を取り巻くように、バラの花が咲き誇った。
「こ、これは! ラ、ラブレ、ブラ、ブレ……」
「ブラがどうかしたか?」
大崎は聞き慣れた声に、咲いたバラはアッと言う間に枯れ散り、いきなり現実世界へと引き戻された。そこには、ミステリー研究会部長小谷圭祐が、にやつき顔で立っていた。
「朝っぱらから変態街道まっしぐらだな、大崎」
「こ、小谷か」
大崎はすかさず封筒を、制服のポケットにねじ込むと、何ごともなかったかのように平然を装った。
「今、何を隠した?」
小谷は含み笑いをしながら、全てお見通しとばかりに大崎の元に詰め寄る。
「な、なんの事だ?」
「あ、かごめちん」
「え?」
咄嗟に気を取られた大崎のポケットから、小谷はヒョイと封筒を抜き出した。
「おい、よせ小谷!」
「大崎にラブレターねえ? 酔狂な奴も居たもんだ」
小谷は可愛らしい封筒を、まじまじと観察した。
「もういいだろう? 返してくれ」
「フッ。慌てんなって。ラブレターを貰ったのは、初めてか?」
嫌に余裕のある小谷の態度に、大崎は怪訝そうに尋ねた。
「君は、誰かにラブレターを貰った事があるのか?」
「おいおいそんなもん、あるわけないだろう」
「だろうな」
「だが、恋愛研究会会長でもある俺くらいになると、文面や文字を見ただけで、どんな女かは直ぐにわかる」
「ほんとか?」
小谷は任せておけとばかりに、封筒から便箋を出し広げると、ゆっくりと読み始めた。
「おもえかし いかにおもわれん おもえぬを ただおもうよに あなた様をお慕い申し上げております されば 後の時間に探偵倶楽部部室にてそうろう……。 なんじゃこりゃ?」
小谷は被りを振ると、大崎に封筒を渡す。辺りを見渡し、ある人物の姿を視野に入れると溜め息を付いた。
「なるほど、俺の頭の中じゃ、八割方解決してる」
「なに?」
「いたずらだな」
「お慕いしていると、書いてあるじゃないか」
「まず差出人の名前がない。文字は典型的な丸文字だが、文面は言うに及ばずだ。意を決して出したラブレターともなれば、当然相手の反応が気になる。しかし、それらしい女生徒が見当たらない。それどころか、たった今若林と目が合った」
「新聞部部長の若林幸一か?」
「前回の件で、お前の事を相当恨んでるらしいからな。十中八九ヤツの仕業だ」
「いくら羨ましいからと言って、人のセリフを使ってまで勝手な推理をするなよ」
「舞い上がる気持ちはわかるが、こういうことに関しちゃお前は素人だ。仮に本物のラブレターだったとしても、オカメにマロの眉毛した、とんでもない女が来るぞ」
「僕はそうは思わない。この文面に、大和撫子の心を感じた」
「いつの時代だよ。まあいい、放課後になれば嫌でもわかる。これがいたずらか、それとも本物か。掛けないか大崎?」
「掛ける? 何を掛ける?」
「そうだな、探偵倶楽部の存続……」
「え?」
「冗談だよ。丸坊主にするってのはどうだ? お前のぼさぼさの頭は、前々から気になってた」
「角刈りの君は、僕よりリスクが少ないじゃないか」
「なら、俺は眉をそぎ落とす」
「本気か小谷? お互いキャラが変わるぞ!」
「自信がないなら、やめてもいいぜ?」
「くっ。いいだろう。放課後が楽しみだ。後悔するなよ小谷」
誰かが書いた、たった一通のラブレター。それが探偵倶楽部を揺るがす、とんでもない騒動に発展するとは、この時の大崎レイにわかるはずもなかった。
想ってくれたら果てしなく好きになる。想ってくれなくてもこんなに好きなのだもの。心にしみる素敵な歌です。思わず書いてしまいました(てへぺろ)




