45話 レスター家へ
リリがバルコニーから戻ってきて、アンゲリカも電話を終え部屋に戻ってきた後、再度5人で話し合った結果、学園の方に休学届を出す事にし、ライリーの家に向かう事にした。
アルフは休学届を出す事に難色を示したが、リリがアルフの意見を押し除けて決行する事に決めた。
その間、ライリーは終始一言も話す事なかった。
「そう言う事でよろしいわね?」
「少々強引ですが…まあ、リリ様が決めた事なら僕は逆らえませんし…。」
「私も異論はないわ。あなたの決めた事なんだし…それに、死にかけている使い魔…魔族?まあどっちか分からないけれども、どちらにせよ彼の死因に間接的にでも関わる事になるなんて…後味悪いもの。」
「……なにを言った所で聞かないんだろうし、異論なんか生まれても言わないさ。」
ライリーだけが吐き捨てるように不満を口に出すが、色々な感情が混ざり合わさって複雑な気持ちになっているリリに、その言葉は届かなかった。
そうしてその日は各自の好きなように時間を使い、明日の出発に備える事にした。
ライリーの実家であるレスター家までは馬車で2日かかるため、明日にでも出発しなければ間に合わ無い可能性があるのだ。
まぁ…転送魔法、もしくは魔法のほうきなどで空をひとっ飛びっできればいいのだが…。
現実はそこまで甘くなく、空を飛ぶにも転送魔法を使うにも、ある一定の素質がなければ魔法の呪文を唱えた所で使えやしない。
素質と言っても単純なもので、個人個人に備わっている魔法属性の話だ。
ほうきで空を飛ぶ、転送魔法を使うなどと言ったものは、風属性と水属性が備わっていなければ使えない。
一応全ての属性自体は備わっているが、得意不得意とするものがあるし、中には属性への適応率が低すぎるが故に、例えば火属性の魔法が使えなかったりと、色々な状況がある。
大人になってくると、属性への得意不得意が堅調になってくるので、将来的には多い人でも4属性くらいの魔法しか使わなくなってくる。
とはいえ、もしもリリに風属性と水属性の素質があったとしても、そもそもの魔力量が少ないためどう頑張っても使えないのだが…。
夜眠る際、リリは自分の傲慢な思いを2度と外に出したくないと思いながら眠りについた。
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翌朝
アンゲリカがレオンハルト邸で雇っていた馭者を呼び、その人にレスター家まで運んでもらうこととなった。
リリは魔王城で2日分の食糧を貰う許可を魔王から得て、馬車の中に積み込んだ。
他の3人もそれぞれ必要最低限の荷物を大きな馬車の中に積み込んだ。
全ての荷物を馬車に入れ込んだ所で、4人は馬車に乗り込んだ。
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今回レスター家への移動には、荷馬車とリリたち4人が乗る用の馬車の二つを用意した。
昨日の会議が終わり次第契約石の中に引っ込んでしまったゴマちゃんは、今だに契約石の中に篭りっぱなしだ。
多分、今にも千切れそうな体をつなぎとめるために相当魔力を消費しているのだろう。
そもそも、本来使い魔とは現世に姿を表すだけで、魔力を消費する。
しかも、現世に現界している時間分だけ魔力を消費し続ける。
とはいえ、現界するために消費する魔力自体はほんの少量に過ぎず、どんなに低級の使い魔であれ1日中現界するのは苦じゃない。
(もしかして…現界する事さえままならない程に、体をつなげるために魔力を使っているのかしら?)
ゴマちゃんがいない。
それだけで、リリは少し不安に感じていた。
前まで散々疑ってかかっていた癖に、自分を助けてくれる存在がいないのは困る。
ただそれだけの理由で心細く感じているのではないか…リリはそう思っていた。
(いいえ…そんなはずないわ…。私はお父様のように冷酷非常な魔族じゃない…。)
頭をフルフルと横に振るい、今し方出てきた考えを振り払う。
そんな様子のリリを心配してか、アンゲリカがリリに声をかけてくる。
「どうかした?うかない顔をしているけれど…。」
「いいえ、なんでもないの。…ただちょっと、レスター家に行くのが初めてだから緊張してしまって…。」
「ならいいけど、具合が悪くなったらすぐ言って。」
「わかりましたわ。」
そういえば最近、アンゲリカが女性らしい言葉を使う頻度が多くなった気がする。
レオンハルト邸の事件を解決する前までは、どこか男らしさを感じる言葉遣いをしている事が多かったが、今となってはまとう雰囲気が柔らかくなり、幾分か女性らしい。
(小さい頃から男の子にするようなしつけをされてきたみたいだし…きっと呪縛から解かれたのね。)
ちょっとアンゲリカが羨ましかった。
自分は今だに父親に縛られ続けていて、毎日いつ殺されるか、用済みの烙印を押されて辺境の地にまで追いやられてしまうかもしれない…そんな不安に駆られる日々を過ごしている。
(でも…きっと見返してみせるわ。)
そう決心するリリの向かいに座っているライリーが、殺意の篭った眼差しで窓の外を見ているとは。
その時、誰も知らなかった。




