42話 救いの道
「な、長くないって…言いたいどういう事なんですの…?」
声が震える。
まさか、自分を助けたが為にゴマちゃんが死んでしまうのか?
自分なんかを…自分なんかを助けるためだけに‥。
どんどんと陰鬱な気持ちがリリの心に直撃していく。
「さっき言った通りだ。穴の開いたこの体は現在かろうじて我の魔力で繋げているが…いずれ魔法も切れ、この体は真っ二つに分離してしまうだろう。」
「そ、そんな…!何か助かる方法はないんですの?!」
ライリーやアルフ、アンゲリカまでもを置いてけぼりにし、リリとゴマちゃんは話続ける。
「いや、助かる方法はあるにはあるのだが‥。」
「な、なら!それを試しますわよ!さあ、善は急げですわ!」
ゴマちゃんを失いたくない。
それが、リリの心の奥底から湧き上がった感情だった。
今まで散々疑って来たというのに、急に意見を変えてゴマちゃんを助けようとしている自分はきっと無視がいいにも程があるのでしょうけど…。
どうしても、失いたくないの…。
リリは今にも部屋を飛び出さんとする勢いで、部屋の扉へ向かおうとするものの…。
「お待ちくださいリリ様!…どうやらお連れ様のお話は終わっていないようですよ。」
アルフがリリの前に立ち塞がり、最後までゴマちゃんの話を聞くように諭してくる。
だが、リリからすればそんな事は気に求める必要はなかった。
だって…ゴマちゃんさえ助かれば、その『お話』とやらも聞くことができるわ。けれど…もし、もしもゴマちゃんが助からなかったら…もう2度と会えないのだ。
リリは何かをなくす恐怖を知らない。
しかし、あの日レオンハルト邸で見たアンゲリカの切なそうな顔が脳裏にこびり付いて忘れられない。
きっと、あれが『大切なものを失った』人の見せる顔に違いない。
リリは自分がそうなってしまう事を恐れた。
何もなかったあの頃とは違う。
今ではそんなに多くはないけど、友達がいるのだ。
「退いて頂戴。私は早くゴマちゃんの体を直さないといけないの!」
「…そもそも、他人の話も聞かずにどうやって治すつもりなんだよ?それに…」
大きな声でアルフをその場から退かせようとするリリに、ライリーが口を開いた。
その声は普段元気いっぱいで、まさに愉快犯と言った風な事をやらかすライリーとは思えぬほど冷え切った声だった。
リリは一瞬、ライリーの普段との差に何か変なものを感じたが、それよりもゴマちゃんを助けたいという思いが強かったため、今にも噛みつきそうな勢いでライリーに言葉を放つ。
「止めないで頂戴!私はゴマちゃんのためにも急いで『直してあげないと』!」
「…まるで、『お気に入りの人形』でも壊れたみたいな事を言うんだな。」
ライリーは先ほどよりもさらに冷え切った声でリリを見つめ、言葉を吐き出す。
リリはライリーの発言に動揺し、さらに勢いを増して言葉を発した。
「何を言っているの?私はただゴマちゃんのためを思って‥。」
「なら、お前はその『ゴマちゃん』とやらの話をちゃんと聞いたのか?」
ライリーの言葉を的確だっった。
実際、リリは『ゴマちゃんが死ぬ』と言う発言だけを聞いて行動に移そうとしただけだ。
しかし、リリにはその言葉だけでは不十分だったようで…
「っ…なら!」
「お前がゴマちゃんを失いたくないと思っているのは…それは本当に『ゴマちゃんのため』か?それとも、『お前自身のため』か?」
「なっ?!」
「……。」
ライリーの冷え切った声は、リリに一つだけ質問して来た。
二人の門答が白熱…いや、この場合はリリ一人で白熱していると言った方が正しいが‥。
二人の様子を横目に見ながら、アンゲリカとアルフは一言も口を挟まなかった。
リリはたっぷりと数十秒の時間をかけてから口を開き始める。
「そ、それは…勿論‥。」
「そこまでだ。」
しかし、リリがライリーの質問に答えようとしたとき、ゴマちゃん本人からのストップが入った。
ゴマちゃんはライリーの援護も、リリの援護もせずに二人を傍観していたが、流石に埒があかないと踏んだのか、ようやく二人の仲裁をしに来た。
「…我が助かる方法は一つあるが…あまりお勧めすることができん。」
「一体何故?」
ゴマちゃんが事の詳細を話し始めた。
多分、自分が早急にどうすればいいか、何かデメリットはあるかなどの話を切り出さなかったのが悪いと見込んだのだろう。
ライリーが冷たい声のまま、ゴマちゃんに質問する。
「この身体に宿る魂を他の生き物に埋め込むのだ。そうすれば、我の体が変われど魂や精神自体は同個体だからな、実質生きていると言っても良いだろう。」
「ほう…それは中々良いではないですか。貴方…えっと、ゴマちゃんさん?は生き続けたまま、肉体だけが朽ち果てる。それであっていますよね?」
「ゴマちゃんで構わないぞ。後、其方の言った通り、ただ体が変わるだけにすぎんが‥。」
ゴマちゃんの魂を他の器に移す。
ただそれだけ。単純な事だと思っていたリリは、次の瞬間目を見開く。
「器との相性がなければ、我の魂は壊れるだろうがな。」




