表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/31

第29話 一時の安らぎ

永遠に続くんではないかと思われていた大宴会もおひらきとなり、三人の魔王がそれぞれ迎えに来た従者を連れて自分の治める国へと帰った後、


私は、一人、色々な木々が立ち並ぶ噴水広場の中央にある噴水の台座に腰かけ、果実水の入ったグラスを片手にぼんやりと夜を明るく照らす月を眺めていた。



「復讐は、しない・・・か」

ダンとの会話や宴会の席でのにぎわっていた魔族たちのやりとりを見て、あらためてわからなくなってきた。


「私は、人間に・・この世界の私を虐げてきた者の全てに復讐がしたい。 でも・・・ここに暮らす皆は、それを望んではいない。」

復讐の事だけを考えるのであれば、なりふり構わず人間界に赴き蹂躙すればいい。それこそ自分の知る地球の伝承の魔王のように


だが、魔界に来て、温かく接してくれる人々、世話を焼いてくれる元同郷の魔王たち、そんな人たちを裏切るような事なんて出来なくなっていた。


「私は・・・どうすれば」


「こちらにいらっしゃったのですね。」


「・・・ティターニア・・・さん。」

月に照らされ、一際美しいエメラルドグリーンの髪の美精霊がゆっくりと私の元に歩いてくる。


「ティターニアっと敬称無しで御呼びくださいな・・・して、どうなされたのですか?もう、御休みになられたのかと思っていたのですが?」

そう言いつつ、私の空になったグラスに果実水を注ぎ込む。


「ねぇ、ティターニア・・・ティターニアは、私が魔王になって嬉しいんだよね?」


「えぇ・・・それは、もう・・長年の悲願でしたからねぇ。成就して天にも登る思いでございます。」

私が、魔王と分かった時の事を思い出しているのか、横目で見たティターニアの笑顔は女である私でも見惚れる程の美しさだった。


その姿を見た後だからこそ余計に躊躇われた。 私の復讐は間違っているのだろうか?復讐など忘れてこの国を守っていくべきなのではないのか・・・と


「・・・・・・」


「猊下?・・・・もしや、躊躇われていらっしゃいますか? 自分が復讐を果たすべきかどうか?」


「!!・・・な、なぜ」


「我らの世界の魔王様は大なり小なり全てに等しく恨みを抱えてお生まれになられます。それに関して我々、魔族は重々承知の上なのです。」


「けど、私が・・・復讐を果たそうとすると皆に迷惑が!・・・それに、これは、私の自己満足・・・だし。」

落ち込む私の手をそっと握りながらティターニア優しく言った。


「いいですか?猊下の望みは我々の望み、猊下の痛みは我らの痛み・・・猊下は我らの望みを叶えるだけでなく、愛し愛される為にお生まれになったのですよ!!

・・・ですので」


私の手を放し、私の前に跪き


「どうか、復讐がしたいのならば我ら花の国の民も同行させてくださいまし、御身のなさる全てに従いますれば、復讐を果たされた後も猊下が幸福であるように精進いたしましょう。」


「・・・・・・・。」

私は、自分の復讐は、拒絶されるべき悪だと心のどこかで思っていた。拒絶され否定されるべきものだと、だからそれを行使する恐るべき存在である”魔王”に転生したのだと

けど、この世界の魔王の意味は全くの別物だった。


己が守護する全ての魔族を統率する者、自分だけが重荷を背負うのではなく、その重荷を一緒に背負ってもらえる愛され慈しまれるべき存在


「一人は皆の為に、皆は一人の為に・・・か」

「猊下?」


「いや、なんでもないよ! さ~てっと!! 明日から、国の事とか復讐に向けての特訓とかで忙しくなりそうだし、そろそろ寝ようか! ティターニア!」

「ふふ・・そうですね。猊下」

ティターニアの見た月夜の明かりに照らされた私の顔は、きっと・・・笑顔だっただろう。






これにて、一章終了になります。次回、二章は、前後しますが、一週間後ぐらいにあげたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ