良人…という勘違い
俺はイライラしながら城から逃げるように出て行く。
門番の制止もなんだか知らないが簡単に振り切れた。
俺はどんどんと走り続け、気づくと農村なのか小さな町まで来ていた。
足の速さと体力半端ねぇな…。
その事に驚いてさっきの怒りはだいぶ治まっていた。
なんだ、俺マジですごい?
なんだか、そう思うと安心したのか眠くなり近くにあった山積みの乾燥した草になさ横たわるとそのまま眠りについた。
なんだか、腹もいっぱいだし色々疲れたな…。
朝、割と早い時間だろうか?
俺の周りに人だかりができていていくにんの人達が心配そうに覗き込んで来たので、驚いて飛び起きた。
「な…なんだ!?って、ここは…」
一瞬ココがどこだか忘れてたが昨晩の嫌な思い出が頭をかすめる。
「良かった…生きてた…」
「なんだにいちゃん死んでるんかと思ったぞ」
そう周りの人たちがニコニコと安心していたのでびっくりした。
なんだ…この世界でも良いやつはいるんだ。
俺はホッとしたし、村人の行為でしばらく滞在させてもらうことになった。
もちろん、今の俺には体力があるので力仕事を手伝う代わりにだ。
だけど、あんな事が起こるなんて…。
「オーライ!オーライ!ストーップ!」
大きな丸太を肩に乗せ指定の位置に立てながら下ろすのが今日の俺の仕事だった。
気分は映画ハ◯クである。
周りに人だかりができ始めていたから慎重に見てもらいながらの作業は割と大変だが、その分充実感はある。
「いやー、お兄さん来てから仕事がはかどるよ!もう、このまま住んじまいな!」
現場の親方がニコニコしながらこっちに来た。
「いえいえ、素性も知らなくて名前も名乗らないヤツを滞在させるのだって不安でしょうししばらくしたら出て行きますよ」
そう返しながらも俺は中々外へ足は向かなかった。
ここは、居心地が良い。
「お疲れ様です!」
仕事仲間にお茶を配っているリサと呼ばれる10歳くらい少女が俺にもお茶を差し出した。
親方の娘である。
皆んなに優しく、こんな俺にも普通に接してくれる。
良い子だな…。
俺は微笑ましい気持ちで親方と娘を見ていた…が、さっき俺が立てた柱が少女と親方に向かって倒れて来た!
「いけない!」
グシャ!
軽い…スイカ割りのようや音が響く。
俺は自慢の瞬足で2人を押し…頭に倒れた柱を受けたらしい…頭がいたいし、頭を守らず突っ込んだから目の前が真っ赤に染まる
「キィヤァアアアアアアアアアアア!」
少女の叫び声が聞こえる。
「あぁ、大丈夫大丈夫」
俺は丸太をどかし大丈夫アピールの為その場に立ち上がった。
あれ?俺が立っているのに右目の目線だけは地面のままだ。
アンバランスな感覚…。
「キィヤァアアアアアアアアアアア!」
再び少女が叫ぶ。
「うわああああ!」
「ぎゃー!」
おいおい…大人気ないだろ?仕事仲間や、人だかりも叫び始めた。
うーん?なんか変だ。
俺は頭をかこうとして手を空振りさせる。
スカッと手が抜けて違和感を感じた。
再び頭を触ろうとすると…そこにあるはずのものがない。
え!?
ワシワシと頭を触ると頭が半分なかった。
倒れた場所を見ると潰れた俺の頭と目玉が転がっていた。
あ…リアルスイカ割り。
そんな呑気な事が頭を一瞬よぎるがだいぶグロテスクだ。
周りの人を見るとまるでバケモノを見る目で見ていた…。
「あ…」
血まみれの手を伸ばすとリサはビクッと体を震わせた。
あかんやつや。
「あ…あのっ!すいませんでした!今までありがとうございました!」
俺はそう言うと再び全力疾走で町から出て行く。
まるで逃げ出すように。
俺の目には涙がいっぱいだった。
くそっ!なんだよ!あんな仲良くしてたのに!俺は…俺の事バケモノ扱いしやがって!
悔しさと悲しさとよくわからない感情がいっぱいで胸が締め付けられた。
よろしくお願いします