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魔法が使えるだけの普通の女の子  作者: まるぱんだ
5.祖母の手ほどき、そしてまさかの遭遇
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21.発見

 それからも、色々と試した。

 指魔法だけでなく、杖魔法も、自分の思い通りにコントロールが効くようになった。

 もっとも、初級の範囲内で、であるが。

「だいぶ、杖が上手く使えるようになったわねー! やっぱり、若いと覚えがいいわ!」

「ありがとう! ……呪文も、言葉だけは覚えてるから、やってみたいな」

「いいわよ……じゃあ、水の矢を作る魔法は?」

 本に書いてあった通り、言葉を唱える。

 目の前に、文字列が浮かび、それをそのまま読み上げるみたい。

 どんなにその文字列を覚えていても、日本語ではないから、口が慣れない。

 舌が回らず、何度か噛みそうになった。

 唱え終わったが、糸のような水が一筋生まれただけだった。

「うひー、難しい……」

「もっと、お腹に力を入れて!」

「ええー、呟くだけで精一杯だよ……」

「心を込めて、力を入れないと発動しないのが、呪文なの!」

「そう頭ではわかってるけど……まあ、がんばろ……」

「慣れれば早いわよ。特に、あなたまだ若いから」

「うん……ところで、呪文魔法って、矢とか壁とか盾とか、そういう系が多い気がするんだけど……」

「呪文は、早く繰り出せるから……昔は、戦いで使ったらしいわよ」

「戦い……?」

「そう。昔むかし、おおむかし、から始まる絵本に、あったでしょう?」

「ああー、後継者争い、みたいな?」

 それにしても、それが今も使えるって、怖いな。

 まあ、護身術として、役立ちそうだ。

 いくつかの呪文を思い浮かべて、カ行など言いづらい音の少ないものを選ぶ。

 かつ、力を入れて発声しやすいもの。

 光の盾や壁が、一番やりやすいかな。


 目の前を、光るものが守ってくれる。

 それを思い浮かべながら、言葉を唱える。

 が、それをすると、呪文をどこまで言ったかわからなくなってしまった。

 もう一度、言い直す。

 なるべく、集中しながら。

 さっきほども、噛まない。


 詠唱が終わり、目の前の光景に意識を移すと、そこには、明るい壁があった。

 触ってみれば、たしかに、そこには物体のようなものがあった。

「おおおー!」

 光は物質でないといえど、魔法により生まれたそれは、ちゃんと壁として機能するらしい。

 叩けば、音が鳴った。


 呪文は、どうやら、完全に唱える回数が多いものほど、顕著なまでに、上達するらしい。

 たしかに、一回唱えた光の壁と、初めて唱える光の盾とでは、言いやすさ、生じたものの持続時間がかなり違った。

 ただし、同じくらい練習して、同じくらい詠唱に集中して、同じように唱えた場合、盾と壁では盾の方が防御力が大きく、壁の方が防御範囲が大きいらしい。

 それは、火、木や水の盾や壁でも言える。

 また、攻撃に使う矢と弾丸も、矢はより鋭く、弾丸はより強い、と聞いた。


 そういう説明も聞きつつ、だいたい全部の魔法を、満遍なく練習していく。

 初級編の呪文魔法を、だいたい全部、スムーズかつ始めよりは強力に、繰り出せるようになった。

「凄いわ! やっぱり、若い子は物覚えが良いのねえ!」

「自分でもびっくりだよー!」

 そして、少し苦手だった、水の弾丸を出した……出そうとした。

 しかし、言い終わる前に、顔に水滴を感じる。

「あれ?」

 ぽっ、ぽっ、と、感じたそれは、みるみる増えていく。

 空が、いつしか暗くなっていた。

「あ、やばい。そろそろ帰った方がいいかな」

「そうね。」

 二人して、家に走る。


 玄関に着き、外を見ると、豪雨が始まった。

「ふう、間に合ってよかったわね。」

「そうだね……」


 部屋に戻る。

 祖母が、改めて魔道書を手に取った。

「あら?」

 裏表紙を、手で撫でて、何かに気づいたような顔をした。

「どうしたの?」

「ああ、いや……なんでもないわ」

 でも、私は、祖母の顔が少し曇った、ような気がした。

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