20.特訓
「あらー、奈波、大きく……」
「おばあちゃん、来てくれてありがとう!」
言下に言う。
「遮るのは良くないと思うわー」
「だって、いつもおんなじじゃん」
「いや、歳をとれば、子供の成長なんて一瞬よ」
「子供じゃな……まあ、まだ二十歳じゃないから、そうかも」
今日この時期は、お盆だ。
墓参り等々済ませ、祖母は我が家に来てくれた。
というのも、魔法の手ほどきをしてもらえるよう、頼んでおいたのである。
夏のこの長い期間。ほとんどは勉強で忙しいが、
こういう日ぐらい、魔法の腕を上げたい。
「さっそく、始める?」
「うん。まあまずは、私の杖魔法の練習の成果を見てよ!!」
我ながら、小さい子供みたいだ。
祖母が来て、嬉しくて、「見てみてー」と、成長を見せようとはしゃいで。
でも、彼女はにっこり微笑んで、私を促してくれた。
まず、喫茶店の壁の模様としておびただしい数描いた、
水の玉と炎を生む魔法陣。
丸、直線、三角、丸……
だいぶ、滑らかな線が描ける。
初めて杖を使った時の、あのいびつでガタガタに震えていたそれとは違う。
最後の線を描き終え、すっと、手を引く。
魔法陣に手を当てれば、くるくると回り、光り出した。
光の中心から、ポンっと、音が出る。
透明の球体。
赤く輝く球体。
二つが同時に生まれ、追いかけっこするように回る。
最後はぶつかって、互いに消しあった。
「どう……かな?」
「うん、これは完璧よ! 私と大差ないわ!」
「え、そんな……」
「だいぶ練習したのねえ!」
魔法の大先輩にそう言われれば、嬉しい限り。
しかし、他の魔法は、もちろん模様に採用したわけではなく、
だから、ここまでは練習していない。
しゃっ、しゃっ、……で、えっと、こう描いて、こうやってこう、こう。
竜巻が出来て、どこかに飛んで行った。
「指で読んだのって、絶対忘れないし頭にはすぐ浮かぶのに、いざ使うってなった時スムーズに再現できるってわけじゃないんだね……」
「うん。それで、途中でちょっと考えたでしょう? それで動きがゆっくりになったら、その部分の力が強まって、バランスを崩してしまうの」
「あー、じゃあ、無意識のうちに描けるくらいまで、ひたすら練習、だね!」
「……まあ、意図的にゆっくりと描いて、魔法の動きをコントロールしたりするから、無意識にってのも考えものだけど」
「ほー、難しそう」
「それと、描いてる方の手の肘に、もう片方の手を添えたら、ブレが少なくなって、いいわよ」
そして、アドバイスを実行しつつ、沢山の魔法を繰り出した。
竜巻や、霧、雪や雷を作った結果、部屋の中が少し荒れてきたので、
外に出ることになった。
公園は、練習にもってこいの場所だ。
何度か、祖母が見本を見せてくれた。
緩急が付いていて、どこかリズミカル。
そっか、このスピードの変化が、魔法をコントロールしているんだ。
本には、形しか載っていない。けど、実際に見て学ぶものも多い。
「ここを、今わざとゆっくり描いたの、わかった?」
空中に浮かぶ魔法陣を指差す。たしかに、線が太い、気がする。
丸い図形の、右側。
それに手を当てれば、くるくる回り、
出てきた光の玉は、私たちの右側に、大きく飛んで行った。
「おおー、なるほど……」
竜巻を、もう一度作る。
肘に手を当て、滑らかに、でも上の方を、過剰なまでにゆっくり描く。
つむじ風が、物凄い勢いで前進した。
ひとつ、また新たなことを知る。




