19.日常
祭が終わると、またいつもの日常。
何事もなく、ゆっくり、時間が流れていく。
けれど、この間の一件で、自分の魔法が他の子の役に立つ事がわかった。
魔法をするのは、遊びだけじゃない。ちゃんと、人に貢献できる。
その思いが、私の魔法の勉強の、拠り所の一つになるだろう。たぶん。
しかし、祭が終わるとともに、私たちの前に立ちはだかるもの。
期末テストである。
普段授業を寝ずにきちんと受けていれば、私の受験にとって必要最小限の得点は、楽に超えられる。
提出課題をきちんとやっていれば、八割はとれる。
テスト自体は、簡単なのである。
しかし、その提出課題というものが、多い。多すぎる。
「嫌だぁ……あー、燃やしてやりたい」
弾みでそう呟いてから、あれ? となった。
例の火事の話が、ふっと、思い出されたのだ。
まあ、どうでもいい。大人しく、片付けよう。
魔道書のように、確実に全部覚えられたらいいのに。
いや、今は忘れよう。今大事なのは、定期テスト。そう言い聞かせる。
新しい魔法も、覚えたい。でも、今はお預けだ。
宿題をおざなりにしたら、その報いはそのまま自分に返ってくる。
前回、一夜漬けなんかするから、あんな散々なことになったのだ。
ちゃんと、頑張ろう。魔法は、いつでも出来るではないか。
そう心に決め、休憩時間のすきま時間も惜しんで勉強、とばかり本を開いた時、
ロングホームルームの開始を告げるチャイムが鳴った。
「えー、今日は、テスト発表ですね。このテストが終わったら夏休みです。受験の、天王山って、世間では、えー、よく言われますけれども。まあ、この学校は、受験する人は、あまり、多くないにせよ、周りの、一緒に戦っていく、この時期に死ぬほど勉強した人達に、負けるわけにはいきませんね。だから、この夏までに、弱点をつかんで、……」
以下、聞き流してしまった。わかっていることばかりだ。
問題集を開く。
受け身で話を聞くだけで時間を過ごすより、少しでも、自分のために勉強したいのです。
と言ったら、許してもらえるだろうか。
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テストが返却される。
前より、苦手科目の点がちょっと上がってた。よかった。
嬉しいついでに、下校中、杖で星のシャワーを作る。
金色の砂金のような光が、私をとりかこむ。
って、そんな豪華にするほどの事でもないな。まあいい。
テンションを引き上げて、何が悪い。
もう、太陽が照りつける季節になった。
夏休みが始まるまでには、初級書、一通りは読めているかな。
呪文も、覚え始めている。
お盆までに、ある程度マスター出来ていてほしい。
また、祖母に教えてもらえるから。




