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第61話〜無敵の道〜

6畳ほどの和室でしばらく突っ伏していた。参考書が何冊か下敷きになってしまっているが気にもとめない。先日から唐突に立ち上がってフルバーストしたかと思えばまた元通りに布団にフルダイブすることを幾度も繰り返し、毎回その様子を見にくる母もついに自室の戸を滑らせることは無くなった。

まあこうなったのも成り行きではあるのだろう。受験に失敗し、自宅浪人で乗り切ることを決意してから既に半年近くもの時が過ぎていた。今思えば安易な考えだったことは明らかだ。人間の意志は薄弱なものだ。自分の受験番号が見つからなかった時、大きな絶望と落胆を抱えながら明日の自分の姿を想像していた。脳内では規則正しい生活を送りながら朝も昼も夜も勤勉に学び続ける様子が浮かんだ。そんな妄想は必ずすぐに消え去る。幻想と計画は違う。失敗の後に残る悔しさと情熱だけで突き進める人間はとても少ない。突き動かされるような感情による慣性はいずれ惰性に取って代わり、決意(夢想)を決めた日から3ヶ月がすぎた頃、ついにペンを取ることは一時も無くなってしまった。

そこで有り余ってしまった膨大な時間はゲームに注ぎ込まれるようになってしまった。これはすごい、いつまでも成長していくのが目に見えてわかる。勉強では得ることの難しい快楽を、このコンテンツは抽出して脳内に届けてくれる。すっかりハマってしまった自分は時間を忘れてモニターの前に座り続けていた。だんだんと布団とディスプレイとの距離が近くなっていきついに布団の真隣に本体とディスプレイが並ぶようになってしまい、他の生活用品は言うまでもなく自らの周りを囲む要塞のように散乱している。

下の階では父と母が争っているようだ。父は今からでも遅くないから予備校に押し込んでしまえと言うが母はいつまでも自分を信じているようで、させたいようにさせることを望んでいるようだ。しばらく前はしばしば部屋に顔を出して献身的に世話を焼いてくれていたのだが、勉強しなくなったことをつつかれて、つい声を荒げてしまいもう声をかけることはなくなった。もちろん今自分が取るべき行動はこんな生活をやめて予備校に行くことだろう。しかし母親はこのような仕打ちを受けたのにもかかわらず、未だに自分を信じている。そんな手前どのように話を切り出せばいいのだろうか。それともこの理由もただ現実逃避するための言い訳になってしまうのだろうか。

ゲームをしている時だけは不安がなくなる。特に格闘ゲームだけはあらゆることを忘れて熱中してしまう。多くの立ち回りが論理的に成り立っていて、ただの牽制の応酬においても考え続けることを忘れることはない。しかし順調に成長していくかと思えばそうでもなかった。ある程度の相手には余裕に勝てるようになってきた。しかし最上位への昇級が未だに達成できていないのだ。1ヶ月は挑戦を繰り返し、その度敗れ、それでもめげずに腕を磨いてきた。だが、昨日の最終戦がついにその繰り返しに終止符をつけた。


リバサ○竜をやめろ。


試合の中で数回しかない起き攻めの状態、普通なら攻め側が圧倒的に有利でスピードが速いゲームならその時点で勝敗がつくこともある。しかし起き上がる側が無敵技を出すことでターン継続を止めてしまう。これで最終戦を逃した自分は熱意を失い、突っ伏し、立ち上がり、突っ伏すことを繰り返す機械になってしまった。

しかしこれでは意味がない。自分の母親は何度も自分に期待をかけ、裏切られ、それでもなお期待し続ける。現実での出来事だから辛いはずなのに諦めない。起き攻めに期待を乗せて、反撃を喰らうだけのこと何が苦しいのだろう。もうこんな生活は止めだ。部屋から飛び出し、ゲーム機を庭に投げ捨て、アケコンのスティックを折り、父母に深く謝罪した。

「俺は真人間になる。」


g○stやろうね

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