第33話〜happening napping〜
大男が一人、コンビニへ向かって行く。店内の内、たった一人の店員である青年は訝しそうに自動ドアを通り抜ける男を眺めていた。ずかずか入り込んでくる彼は早速冷蔵庫に向かっていき、何かを探している様子だ。突如動きを止めた彼の視線の先を見てみると、そこには空になった商品棚があった。確かそこには「ペプシ□ーラ 600ml」が入っていた筈だ。数秒静止していた大きな背中には落胆の色が見られるような気がしていたが、気にしない。何故なら今はキャンペーン中で「ペプシ□ーラ 600ml」を一本買うと「ペプシ□ーラ 1.5L」を無料で手に入れられるチケットが手に入るのだ。勢力闘争に敗北した者に慈悲は無い。すごすごと帰っていった様に見えた彼だったが突如引き返し、ク□レッツのガムを持ってきた。背中からもわかっていた様に、顔は落ち窪んでおり、一種の絶望感に包まれている。
「……ア…」
ガムを差し出した時の声はか細く、こちらまで情けなくなってくる。
彼は200円差し出し、自分は数十円のお釣りを返した。彼はお釣りを大事そうに手のひらで受け取った。おこぼれを授かるのも敗北者の権利だろう。そのまま去って行くであろう男を横目で流しながらカウンターの整理をしていた。そういえば品出しもそろそろだな。シフトの終わりまでまだまだ時間がかかりそうだ。
ジャラララッ!!
店内に響き渡る少しくぐもった音。無機物ばかりの部屋にバリバリと張り付く。その音はゲームセンターでよく見られるメダル販売機から、プラスチック容器でメダルを受け取る音に似ていた。ふと振り返ると、男は真顔でお釣りをレシート入れに流し込んでいたのだ。この世の全ての闇を一心に受け、立ち続けているかのような姿は、ある虚無的な概念の象徴であったのかもしれない。その後男はハッと気がついたかの様におぼつかない手で小銭をつまみ終えた後、足早に店を出て行った。残ったのは耳にじゃれつく静けさのみだった。
よく寝ましょう




