第26話〜煙〜
その汚泥は二人を捉えるやいなや、すぐさま飛びかかってきた。
雷は咄嗟に躱したが、その際泥が掠めた肌に熱を帯びる感覚を覚える。
(速いな…)
一度距離を離す。相手は体を蠢かせながらジリジリと近寄ってくる。しびれを切らした雷は斬撃を放ち見事に両断したかと思われたが、刀を握る手には命を討ち取った感覚が残っていなかった。普段ならば感じていた手ごたえが一切感じられないのである。そのまま2、3度刃を滑らせ、全く歯が立たない。
「こっちに刀を向けろ。」
気がこちらに煙を吐きながら呼びかけた
言われるまま刀を差し出すとみるみるうちに刀身が煙に包まれていく。
「“ガワ”でなくヤツの“目”を見ろ、次は斬れる筈だ。」
「“目”とは何だ!ただのヘドロにしか見えんぞ!」
「いいから目を凝らせ!次に仕損じたのならば命は無いぞ!」
その汚泥は既に目前に迫っていた。だがそのことがかえって雷を奮い立たせていた。生死の瀬戸際に、その怪異の核を見抜く術を見出したのである。
雷は大きく踏み込み、そして正確な袈裟斬りを放つ。
ガキィィン!!
雲散霧消 汚泥はこれ以上無いほど綺麗に姿を消してしまった。
気は言う
「迷いが生じたか」
「常であれば一度や二度見ることのあろう物の怪だろうと殺してしまえばもう逃れることはできんぞ。一度怪異と遭った者は現世と妖の間を生きることになるのだ。」




