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それいけ!東光学園野球部!  作者: 紅夜アキラ
第二部・第一章
87/175

第83話 市立浦乃星

 合宿も6日目になり、ダブルヘッダーの練習試合が行われる。


 東光学園の最初の試合は沼津(ぬまづ)市立浦乃星(うらのほし)高校だ。


 かつては強豪だったが今や中堅校になり、高海(たかみ)を中心としたチーム作りが成されていたところだ。


 今回のスターティングメンバーは……




 先攻・東光学園



 一番 セカンド 山田圭太(やまだけいた) 二年


 二番 ショート 志村匠(しむらたくみ) 三年


 三番 センター 夜月晃一郎(やつきこういちろう) 二年


 四番 サード 中田丈(なかたじょう) 三年


 五番 ファースト 清原和也(きよはらかずや) 二年


 六番 ライト 本田(ほんだ)アレックス 三年


 七番 指名打者 片岡(かたおか)龍一郎(りゅういちろう) 三年


 八番 レフト 尾崎哲也(おざきてつや) 一年


 九番 キャッチャー 田中一樹(たなかいつき) 三年


 ピッチャー 松井政樹(まついまさき) 三年




 後攻・沼津市立浦乃星



 一番 センター 渡辺要(わたなべよう) 二年


 二番 セカンド 津島善夫(つしまよしこ) 一年


 三番 キャッチャー 黒澤大弥(くろさわだいや) 三年


 四番 ファースト 小原万里(おはらばんり) 三年


 五番 サード 松浦来南(まつうらこなん) 三年


 六番 ショート 渡辺月季(わたなべつき) 二年


 七番 ライト 黒澤紅弥(くろさわこうや) 一年


 八番 レフト 桜内梨人(さくらうちりと) 二年


 九番 指名打者 国木田花江(くにきだはなえ) 一年


 ピッチャー 高海橙樹(たかみとうき) 二年



 ――となった。


 高海は投球練習で既に全開で行き、東光ナインにとっては威圧的な二年生エースに見えた。


 高海は手元で急に伸びるストレートが武器で、スタミナ限界まで投げ切れる本格派だ。


 山田が打席に立つと高海は同い年なのか意識して投げ込む。


 すると山田はセーフティバントを決めて一塁へ駆け出す。


 ところが……


「バントなんて想定済みだよ!」


「くそー! オイラのセーフティがバレるなんて!」


「へへっ! どうだ!」


「あの松浦って人、バントが通用しないです!」


「だろうな。あいつ初速が速すぎるし、バスターで揺さぶってもすぐに対応しそうだ。だとすれば相当な高速チャージの持ち主だろうな」


「ですね。それよりもあの応援を耳にしても動じないなんて、あの学校すごいですね」


「あのブラスバンドや歓声を聞いても動じないなんてどんな練習してるんだろうな。どれ、ちょっと打ってくるよ」


 志村は浦乃星が何故あんな応援を耳にしても平気なのかを確かめる。


 そのためには塁に出てチャンスを作って点を取り、そして歓声をより大きくしようという作戦だ。


 実際に志村はツーベースを放って夜月にチャンスで回す。


 しかし夜月は高海に意識されて三振、中田も続く事が出来ずに攻守交代。


 1回のウラでは松井は安定の打たせて取るピッチングで、早打ちもあってかすぐに三者凡退に終わらせた。


 2回の表では清原が三振、本田がサードゴロと凡退するも、片岡が確実に当てるミート力でレフト前に放った。


 バッティングが苦手な尾崎は、高海に舐められたのか置きに行ったボールで挑まれ、挑発(ちょうはつ)ととらえた尾崎はクールに振る舞いつつもムキになり、本当にライト前ヒットを放った。


「俺を舐めてもらっては困るんだけどね?」


「あいつ打ったら打ったでいい気になって生意気……!」


「気にしてはなりません! 高海さんは高海さんらしく投げればいいのですよ!」


「大弥さん……そうですね。俺らしくを失いかけてました。一年でも打つときは打ちますもんね。反省します」


「わかればそれでいいんですよ?さあここからはうちのターンですよ!」


 黒澤大弥がナメプをしていたことを(とが)めず、自分らしく投げれば問題ないと諭して高海の調子を取り戻させる。


 田中はそれがきっかけでファーストゴロに抑えられ攻守交代。


 2回のウラでは小原にツーベース、松浦にはセンターフライながら進塁される。


 ただし渡辺要の従兄弟(いとこ)である渡辺月季はムービングによりピッチャーゴロ、小原もさすがにホームスチールする事が出来なかった。


 先ほどのキャッチャーの黒澤大弥の弟である黒澤紅弥がオドオドしながらもスクイズを決めてきて先制された。


 それもホームで刺そうとするも小原の気迫あふれるホーム突入に田中も威圧されてタッチし損ねる。


 ツーアウトでスクイズという普通ならありえない奇襲をされ、松井も田中も『こんなの聞いてない』と言わんばかりにベンチを見つめる。


 石黒監督も『そう来たか~……』とため息をついて相手にナイススクイズだと褒め称えた。


 しかし黒澤紅弥ははじめてスクイズを決めたのが嬉しかったのか少しだけ上の空になり、左投げの松井の牽制に引っ掛かって攻守交代。


 さすがの兄である大弥も頭を抱えた。


 3回と4回はとくに進展がなく、5回も満塁になるもチャンスを活かしきれなかった。


 しかし7回の表でツーアウト満塁のチャンスで東光学園は動き始める。


「タイム! 尾崎に代わって代打、(パク)!」


「俺ですか?」


「君の勝負強さは夜月並みだ。守備が苦手というなら三田に交代も出来るが、守備もやってみるか?」


「俺にチャンスがあるなら是非やらせてください!」


「ほら朴、バットだぞ」


「ありがとうございます……いくぞぉっ! 来いっ!」


「何ですかこの人……? バットを持ったら人格が変わっただなんて……! 朴ということは韓国人留学生でしょうか……? どのみちこの身体だと一発がありそうです。警戒して慎重に攻めていきましょう」


「この子、本当に後輩なのかな? ちょっとベテランの威圧感を感じるよ。大振りしそうだからそれに期待して空振り狙おう……! あ……」


「初球でど真ん中に失投……!?」


「もらったぜ! グレイトォーッ!」


 カキーン!


 朴のフルスイングは意外にもコンパクトで、全く無駄のないスイングを放った打球は左中間(さちゅうかん)に飛んでいった。


 ランナーはツーアウトというのもあって全員で飛び出し、このまま落ちれば一気に逆転できるチャンスだ。


 その打球はだんだん伸びていき……


 ボンッ!


「フエンス直撃だ! ランナー走れ!」


「あいつやるじゃんか……!」


「よし! 一気に2点取ったぞ!」


「おっしゃー! 俺の……いや、皆さんが繋いでくださったおかげですよ」


「おいおいー! まーた人格変わってるぞ!」


「一塁踏んだりアウトになったら元に戻るとか変わってるな朴!」


「オイラそういうやつ嫌いじゃないぞ!」


「やられましたね。あそこまでチャンスに強い新入生が来るなんて……」


「留学するって事はそれほどの気持ちでそこに来てるんです。だからあの勝負強さは本物ですよ。失投してすみませんでした」


「私もあの威圧感には理性を失いかけました。フォローできずに申し訳ありません。でもここからは一切怖がらずに行きましょう」


「はい!」


 2対1になり、7回のウラでは渡辺要がセンター前ヒットを放ち、打つ直前に『ヨーソロー!』と叫びながら打つ斬新(ざんしん)な打法に惑わされる。


 次に津島という小柄ながら強打者が打席に立ち、豪快なフルスイングで威圧するも三振に抑える。


「津島だっけか? お前のスイングはわかりやすいくらいに大振りだな。脇が開きすぎてインコース苦手だろ? 次会う時は克服してみせな?」


「ふっ、この先輩、言ってくれますね……? 我にかかれば弱点克服など……って何で相手校なのにアドバイスしてるんだよ!」


「合宿で練習試合だから合同練習みたいなもんだろ? それに敵からアドバイスもらってうろたえるの見るの結構好きだし」


「ムキー!」


「はいはい! アドバイスされたら素直にお礼を言うの!」


「要先輩……ふっ、仕方あるまい。礼を言うぞ、東光の名捕手よ」


(こいつ、いわゆる中二病(ちゅうにびょう)だな)


 津島の変わったキャラ性に田中は困惑しながらも後続を打ち取った。


 8回ウラには松井から綾瀬に交代し、急激に球速が変わったので浦乃星は適応できずにすぐ凡退した。


 最後の9回の表は中田がソロホームランを放って3対1、清原もツーベース、本田がタイムリーツーベース、片岡がシングルヒットで4対1になる。


 朴から交代した三田がスクイズを決めて5対1になる。


 9回のウラになり、綾瀬から道下に交代して抑えに入る。


 道下は小柄で中性的な見た目に反して球威が冬の合宿で増し、見た目に騙された浦乃星は手に負えずに凡退しゲームセット。


 結果は5対1で勝利し、高海一人で投げ抜いては勝てないとわかった浦乃星は投手の育成をしようと踏んだ。


 こうして6日目の第1試合は勝利し、第2試合の山手(やまのて)芸能学校高等部との試合が始まる。


 つづく!

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