表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/175

第49話 臨時デート

 *今作では正規ルートですが、ここからは別で本格的な分岐ルートに突入します。


 どのヒロインが分岐ルートに出るかお楽しみください。








 夜月(やつき)がいつも通り練習をこなし、秋の関東大会に向けている中で、中田は関東大会の抽選会に参加し、次の対戦相手は栃木(とちぎ)作新(さくしん)大学付属宇都宮(うつのみや)高校だ。


 その前に11月には文化祭というのがあり、その準備に取り掛かった。


 硬式野球部も例外ではなく、練習だけでなくグラウンドでの硬式野球体験アトラクションの設置をしていた。


 この学校の文化祭は特殊で、生徒も教師も指導者もみんなスタッフとして参加しなければならず、文化祭当日は遊ぶことを禁じられている。


 代わりに前週のリハーサルでは1週間かけて展示会という形で全生徒がライブなどをすべて見る。


 そしてこの学校は大企業の講習会やアイドルのライブ、プロの劇団の舞台などゲストも豪華だ。


 夜月たちのクラスも出し物の会議が行われた。


「これよりクラスの出し物の会議を行います。司会は長田有希歩(ながたゆきほ)が進行致します。皆さんは何か案がありますか?」


「はい! 俺お化け屋敷希望!」


「水谷くんはお化け屋敷ね……。他はありますか?」


「俺はそうだなあ……ホストクラブとキャバクラ!」


「飲酒系は未成年は禁止よ河西(かさい)くん」


「じゃあソフトドリンクのみでいいと思うぞ!」


「それなら大丈夫ね。でもホストやホステスは誰がやるの?」


池上荘(いけがみそう)メンバー全員で!」


「おい! 俺たちまで巻き込むなよ!」


「そうだよ。河西くんは明るいイケメンだからともかく、僕みたいな(いん)キャには厳しいよ……」


「阿部に至っては無口だぞ大丈夫か?」


「……。」


「ちぇー……いいと思ったのに」


「河西くん相変わらず猪突猛進(ちょとつもうしん)なんだからー」


「でも池上荘ってみんなマドンナクラスの女子だからいいと思う!」


郷田(ごうだ)くんや黒崎くんもカッコいいしね!」


「夜月くんはカッコいいんだけど、本人は大会があるしなあ」


「河西……お前ってやつは突っ走りやがって。一応硬式野球部で人気投票で唯一0票だったの忘れてないだろうな?」


「それは前の話だろ夜月。今は10票も入ってるじゃんか」


(あ、私が(こう)ちゃんに入れたやつだ……)


(私が入れた票ね……)


(あたしが入れたのだ……)


(わたくしが入れたものですね……)


(クリスが入れた……)


(私が入れたのは夜月くんなんだよね……)


(私が入れたのは秘密なんだよね……)


 偶然にも池上荘の女子メンバーは全員夜月に投票していた。


 しかも全員『学園のアイドル』と言われている人気者ばかりで、夜月は数よりも質でモテていた。


 ただし残りの2票は純子と真奈香だが、もう1票は果たして誰なのか……?


 実際に他にも純子や真奈香も入れていて、『好き嫌いはわかれるが本音で語れるところで付き合ったら退屈しない』との事で隠れ人気なのだ。


 クラスのみんなは池上荘に負けるなと言わんばかりに男女そろって美容に気を使い、ホストやホステスに選ばれるように頑張ると言った事でホストとキャバクラの案が通った。


 有希歩は叔母(おば)の理事長にクラスはやりたいと言ってますが、学生的に大丈夫でしょうかと不安視しながら報告する。


 すると理事長は意外にも許可を出す。


「いいでしょう。お触りとお持ち帰り禁止で、ただドリンク飲んで会話やお悩み相談するというルールをきちんと出した上でなら許可します。これは社会でも交渉術や取引先との営業などに役立ちそうですしね」


「ありがとうございます叔母さま……理事長!」


「何でも頭ごなしに否定せず、何を目的にしたかを逆転の発想すれば、きっと誠意は伝わりますよ。ただし如何(いかが)わしい理由で風紀を乱す行為はしないようにね」


「はい」


 こうして夜月たちのクラスは『ホストクラブ・キャバクラ』となった。


 クラスの出し物発表では夜月のクラスはホストクラブ・キャバクラだと聞いた全校生徒はざわめきつつも目的を有希歩が詳しく話すと、みんな納得したのか如何わしい事は起きないだろうと安心もした。


 こうして麻美(あさみ)は吹奏楽部の、クリスはチア部の、優子は茶道部の部活系出し物の準備へ。


 クラスの出し物はジュース系とお茶系、ソーダ系など子どもでも飲めるものにした。


 そして展示会のリハーサルになり、夜月は文化部の発表を一週間かけて見る。


 すると時間が空いて休憩に入ると車いすの女子生徒と。その介護をしている女子生徒が夜月に声をかけた。


 純子と真奈香だ。


「あ、先輩方。こんにちは」


「こんにちは、夜月くん。また会ったわね」


「たまには外の空気を吸わないと息が詰まるんで……」


「そうね。ずっと密室だと苦しいものね。そう言えばアイドル研究部にいい逸材がいるの。長田有希乃(ながたゆきの)って子なんだけど、一年生ながらセンターを勝ち取るほどの子なのよ。私の父はアイドルのプロデューサーをやってて、いずれ私は父の跡を継いでプロデューサーになるの。ジャズは趣味で部活で入ってるだけだけど、いずれは仕事でアイドルたちを導く存在になるわ。真奈香は『新聞記者になって公平性を保った報道をして世の中のみんなに伝えたい』と言ってたわ」


「ええ。私は白黒ハッキリさせないと気が済まない性格なのよ。グレーは私が一番好きな色だけど、物事がグレーだと議論という名の喧嘩が勃発(ぼっぱつ)するでしょ?SNSなんかがそうじゃない?」


「確かにそうっすね」


「だから私の報道で真実を伝えたいのよ。あなたの夢は?」


「俺の夢は……わからないんです。自分が何をやりたいのかはっきりしなくて、プロ野球選手も考えたんですが、どうも現実的じゃないって思えて……。でも、これだけはわかります。自分に出来る事があれば何でもやるって気持ちはあります」


「なるほどね。もしあなたさえよかったらだけど、私はいずれ父から独立して芸能事務所を立ち上げるの。そこで働いてみない?きっといい仕事っぷりになると思うわ。あなたの他人を見る目があればどんな逸材も見逃さないって思えるの」


「考えておきますね」


 純子は夜月の人を見る目が優れていると判断し、自分がいずれ事務所を立ち上げたら一緒に働かないかとスカウトをした。


 こうして夜月はやりたい事や夢がないので保留になったが、悪い話ではないなと思ったのかその手の勉強をしようと思った。


 すると純子はまた大胆な事を言った。


「今日がリハーサル最終日だし、ジャズ部ももう終わったからあなたも私たちと一緒に展示会を散策しましょう」


「いいんすか? 灰崎先輩も邪魔じゃないんじゃあ……?」


「介護は力仕事でもあるから、男手があると助かるわ」


「だったら是非同行させてもらいます」


 こうして夜月は純子と真奈香と一緒に展示会に参加し、最後のステージであるアイドル研究部の長田有希乃というアイドルを観に行く。


 有希乃は黒髪のミディアムロングで、サラサラなので透き通った髪と肌が特徴だ。


 瞳もワインレッドとどことなく有希歩と似ているが、有希歩は文芸部で活動している双子の姉妹だとトークで語られた。


 夜月は似ているのが納得し、入学式でもそんな名前がなかったから転校生なんだろうと思ったのかノータッチにした。


 その後は書道部や陶芸(とうげい)部、美術部、華道部の展示会を回る。


 夜月は純子にある案を出す。


「黒田先輩、出来れば文芸部と茶道部にも行きたいです」


「池上荘の子たちね。確かに気になるから行きましょう」


「私も気になってたのよ。池上荘の子たち、なんだか不思議な力をみんな持っているから」


「プラスエネルギーかしら。もし本当なら今はおかしくなった川崎市を変えられるかもしれない……」


「先輩方……?」


「何でもないわ。さあ行きましょう」


 こうして夜月たちは真奈香の介護付きとはいえほぼデート状態になり、夜月は純子にすごく照れていた。


 純子も真奈香の前だから表に出さないが、『夜月に好意を抱いているけど決して叶わない恋だとわかっている』ので、残念そうにしつつ楽しんだ。


 茶道部の和室に入り、夜月たちは早速おもてなしを受ける。


「お待たせいたしました。これより茶道部のお茶会を開始いたします。あら? 夜月さん、いらしたのですね。歓迎いたしますわ」


「ああ、よろしく」


「車いすの先輩ですわね。正座や胡坐(あぐら)も厳しいでしょうから、車いすのままお茶をお楽しみくださいませ」


「ええ、ありがとう」


 こうして優子はお茶を淹れて夜月たちをおもてなす。


 優子の実家は茶道の家元で、大和流(やまとりゅう)という日本でも有名で老舗(しにせ)なブランドだ。


 大和流は京都にある茶道の流派で、戦国時代に千利休(せんのりきゅう)の弟子が大和流を名乗って京都でひっそり茶道を教えたのがきっかけだ。


 新暦(しんれき)になってから徐々に拡大しはじめ、鎌倉や千代田区にも分家があるほどだ。


 優子は本家の一人娘で、跡継ぎが期待されている。


 優子の淹れたお茶は非常に絶品で、どこの流派にもない独特の苦みと甘みがあった。


 和菓子をもらって食した後は礼をしてお茶会を終える。


 しかし夜月は足が痺れてしまい、しばらく和室の休憩室で痺れが治まるのを待った。


 しばらくして治まり、今度は有希歩がいる文芸部へ足を運んだ。


 文芸部が書いた小説はとても物語性があり、文学部とは違った文豪(ぶんごう)たちが揃っていた。


 とくに有希歩が書いた恋愛物語は男の夜月でもドキドキした。


 小さい頃に婚約したにもかかわらず、女の子の両親が交通事故で亡くなり、そのショックで記憶をなくしたまま再会して記憶を取り戻していくうちに恋に落ちる話だ。


 王道ながらも感情に訴えた書き方で物語の世界へと引きずり込まれたのだ。


 真奈香もそんな書き方があったのかと有希歩の小説を読んで感心した。


 こうしてリハーサルを終えて、ここから1週間で本番に向けてスタッフに全生徒と全職員は集中する。


 だが残念な事に硬式野球部は秋の関東大会と被ってしまい、参加出来ないので代わりに硬式野球部の卒業生が有志で集まって運営する事になった。


 こうして秋の関東大会が栃木で行われ、作新(さくしん)大学付属宇都宮(うつのみや)との試合が始まった。


つづく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ