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それいけ!東光学園野球部!  作者: 紅夜アキラ
第一部・第一章
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27/175

第25話 県立川崎総合

 ついに東光学園も準々決勝を迎え、ここ横浜スタジアムで試合をする。


 東光学園は田中から正捕手(せいほしゅ)の天童にスタメンを任せ、ここから一気に甲子園まで行くつもりだ。


 同時に天童を試合で育て上げ、将来プロ野球のドラフト候補選手にする目標も石黒監督にもあった。


 そして今日のスターティングメンバーがこちら。



 先攻・県立川崎総合高校


 一番 センター 前川未来(まえかわみらい) 二年 背番号8


 二番 セカンド 多田李久登(ただりくと) 二年 背番号4


 三番 ショート 城ケ崎充(じょうがさきみつる) 三年 背番号6


 四番 ファースト 諸星(もろぼし)ひかる 二年 背番号3


 五番 サード 穴沢明日太(あなざわあすた) 一年 背番号5


 六 番 キャッチャー 新田美波未(にったみなみ) 三年 背番号2


 七番 指名打者 三村剛(みむらごう) 一年 背番号12


 八番 レフト 双葉杏一郎(ふたばきょういちろう) 二年 背番号7


 九番 ライト 姫川勇気(ひめかわゆうき) 三年 背番号9


 ピッチャー 島村佐津樹(しまむらさつき) 二年 背番号10



後攻・東光学園


 一番 センター ホセ・アントニオ 三年 背番号8


 二番 キャッチャー 天童明(てんどうあきら) 一年 背番号2


 三番 ライト 渡辺曜一(わたなべよういち) 三年 背番号9


 四番 ファースト ロビン・マーガレット 三年 背番号3


 五番 サード 中田丈(なかたじょう) 二年 背番号5


 六番 ショート 島田正道(しまだまさみち) 三年 背番号16


 七番 セカンド 新田彰(にったあきら) 三年 背番号24


 八番 指名打者 清原和也(きよはらかずや) 一年 背番号13


 九番 レフト 尾崎哲人(おざきてつと) 三年 背番号7


 ピッチャー 小野裕也(おのゆうや) 3年 背番号1



 となった。


 川崎総合は赤いアンダーシャツとストッキングが特徴で、黒い帽子がデザイン的にスパイシーで、『レッドソックス軍団』と表現されたほど新暦1990年代では王者だった。


 それが最近になって金浜(かなはま)や常海大相模(じょうかいだいさがみ)がまた台頭(たいとう)してきてしばらく甲子園に行ってない強豪校だ。


 その試合が始まるも、1回の攻撃ではお互いに点が入らず。


 2回では川崎総合にも東光学園にもチャンスはあったものの、結局好守にやられてチャンスを失ったのだ。


 3回の表になり、川崎総合が動き始める。


「九番、ライト、姫川くん」


「何だか雰囲気(ふんいき)がただ者じゃない気がする。この人は何で九番バッターなんだろ?よくわかんないからインコースのストレートで」


「いや、俺ならインコースではなく外れたアウトコースにするよ」


「マジっすか。じゃあそれでいきましょう」


「頼むからキャッチングでストライク取ってくれよ……? ふんっ!」


「……。」


「ボール!」


「石黒監督、今の天童の捕り方……」


「夜月は気付いたか。天童は強肩(きょうけん)で盗塁阻止率(とうるいそしりつ)は100パーセントだが、リードも自信ありげで甘いし、キャッチングも正直ピッチャーに優しくないよな。夜月(やつき)ならどうする?」


「俺キャッチャーなんて少年野球以来なのでよくわかんないです……」


「じゃあ俺が代わりに答えてやるさ。俺なら審判にバレないようにストライクゾーンへ寄せて捕りますね」


「田中先輩いつの間に!?」


「夜月が天童の甘さに気付いたと小耳に挟んでさっき来た。キャッチャーは『ピッチャーを楽にさせて』なんぼだ。際どい球をいかにストライクにさせるかがキャッチャーの腕だと俺は思ってる。夜月、少年野球で経験があるって言ってたな。俺と自主練やるか?」


「えっと……考えておきますね」


「ストライク! バッターアウト!」


「さっすが小野先輩だ。際どい球も精密なコントロールで審判をも味方につけたぞ」


「俺もコントロールを磨かないといけませんね」


「ああ? 園田は充分コントロールいいだろ。少なくとも榊(さかき)よりはな」


「中田先輩、練習で大輔(だいすけ)にデッドボール当てられてから厳しいですね」


「確かに球は速いし、変化球とくにフォークのキレは驚いたぜ。だがコントロールが甘いとそれを活かしきれねえんだ。ただ不器用な分、いざ慣れてきたら園田、お前危ういかもしれねえな」


「だからこそあいつに負けないつもりです。速かれ遅かれ大輔に抜かれる運命かもしれないですから」


「ストライク! バッターアウト!」


「その時は俺が引退するまで面倒見てやるさ。ただし俺は厳しいから覚悟しろよ?」


「はい!」


 園田と中田は小野のコントロールのよさに魅了され、改めてもっとストライクを稼ごうと意識する。


 実際園田は今のところでは榊より実力は上だが、『いつか抜かれる』のではないかという不安もあったのか、今でも最善の努力をしている。


 榊は不器用な反面、慣れてきたり勢いに乗ると急成長を遂げるタイプなので、早かれ遅かれ抜かれるのかもしれないと思っているのだ。


 中田はそんな素直な園田を気に入り、厳しくしつつも嫌にならないように面倒を見ようと決めた。


 姫川、前川、多田を三振にすると、今度は3回のウラで東光学園の攻撃だ。


 島村は新田のリードを信じ、清原を打席に迎え入れる。


「俺は初のスタメンなんだ……俺だって夜月に負けねえ!さあ来い!」


「清原和也くん……この人本当に一年生かな?何浪(なんろう)もしているのかと思っちゃった。フォームからして打撃に自信ありって感じかな。現にホームベースから近いし。アウトコースにスライダーでいこう」


「新田先輩……。俺は甲子園を目指してもっと……頑張ります!ふんっ!」


「来た! そらあっ! あっ……」


「レフト!」


「マジかよ、本当に打球来るなよなあ……。よっと……」


「レフトフライ! アウト!」


「清原くーん! 君はまだ初球に手を出すクセが直らないのー? ホモはせっかちってネットで聞いたけど君はホモじゃないんでしょう?」


「うぐ……すんません!」


「まあ甘い球だと思って手を出したんだろう。現に島村の変化球はスライダーとシュート、スプリットのみだが、全部手元で速く小さく変化するタイプだからな。おそらくあれは『高速スライダー』と『高速シュート』だろう。リリースがストレートと同じだから惑わされないようにね!」


「よし! 俺が塁に出て暴れてやるか」


「頼むぞホセ!」


「最初の打席ではファーストゴロに打ち取ったけど、ホセはそこそこ長打力もあるから嫌なバッターだなあ。初球はスプリットで空振りを狙おう」


「高めのスプリットって甘い球じゃあ……? でも新田先輩の考えはよく当たるから、投げてみよっと!」


「高め……いや、落ちるな。うわっ!」


「スイング! ストライク!」


「なんだあいつ……? 高めの甘い球と思ったら消えやがった……!?」


「そう、これが島村くんの変化球だよ。ただ変化球のキレはあっても変化量自体はそこらへんの公立校のエースと変わらない。つまり攻略されたら一巻の終わりなんだよ。だからごめんね、翻弄(ほんろう)させてもらうから」


「アウトローに……シュート!」


「ギリ届くか……? いや、手を出したらダメだ」


「ボール!」


「ふぅ……」


「やっぱりホセくんは選球眼も鍛えたようだね。ど真ん中と見せかけてスプリットで空振り狙おっか」


「了解です。いけっ!」


「ストレート……! いや、若干(じゃっかん)遅いなら落ちるはずだ……ほら来た!」


「なっ……!?」


 ホセの放った打球はライト線際で落ち、ついに東光学園も初のヒットが出た。


 今まではフォアボールで出塁と盗塁で進塁のみで、送りバントで三塁にまで到達するも得点を入れる事が出来なかった。


 このヒットが東光学園の流れになるのかと思われたが、後続の天童は三振、渡辺はショートゴロに打ち取られた。


 ホセは盗塁で二塁へ、渡辺の進塁打で三塁へ行き、このチャンスの場面でロビンの出番だ。


「よし、僕の出番だ」


「ロビン先輩かっとばせー!」


「一発もいいけど単打でもいいですよ!」


「ロビンくんって、外国人と言うのもあるけど威圧感あるなあ……。でも穴沢くんもロ(・)シ(・)ア(・)の(・)ハ(・)ー(・)フ(・)で外国人の空気には慣れてるから、今更驚く事はないよ。彼はミートが上手くて広角に打ち分けられるから正直投げる球はないけど、インハイで少しビックリしてもらおうかな」


「右バッターならシュートかな? 小さめに変化すれば……いいよね!」


「ちょっと……何か甘い!」


「そこだっ!」


「ファール!」


「あー! ポール際かー……!」


「めっちゃ惜しいですよ!」


「無理せず詰まらせずに引っ張るなんてさすがだね」


「打ちに行き過ぎるとあまりいい球は打てないからね。君は僕を三振にしようと思ってるけど、そうはいかないよ?」


「ううん。三振だけがアウトじゃないから、どんな形でも君をアウトにしてみせるよ」


「だったら僕はホセくんをホームベースに返すね」


「冷静なところもロビンくんの武器かな……。今のファールで堪(こら)えてほしかったな。インローに真っ直ぐでインコースを意識してもらおう」


「インコースはもうさっきので怖いです……」


「ダメ? じゃあアウトコースの方がいいかな?」


「それなら大丈夫です。今のでインコース意識したから……いけますよねっ!」


「スライダーが上手くかかってる。これなら空振り……」


「ごめんね、これは打てそうだよ」


「え……?」


 カキーンと金属バットが球場中に響き渡り、その大きな打球は横浜スタジアムの場外まで飛んでいった。


 ロビンはツーランホームランを放ち、東光学園がようやく先制点を取る。


 ホセもホームベースでロビンを待ち、戻ったところで一緒にベンチへ戻る。


 島村は自信のあったアウトコースが打たれたことでショックを受け、マウンドで少しだけ深呼吸をして気持ちを整理する。


 すると新田はタイムを取って島村に歩み寄る。


「タイム!どう?調子崩れてない?」


「大丈夫です。もっと頑張って甲子園に行くまでは頑張りたいです」


「君の頑張りますは時々無茶をするように見えるからね。ペース配分しっかりしていこう。アウトを取ろうと焦っちゃダメだよ? 島村くんなら大丈夫だから」


「はい!」


 マウンドで会話した後で島村は一旦落ち着き、新田のリードは名捕手並だと田中と石黒監督はふと感じた。


 現に中田という怖いバッターを簡単にピッチャーフライに打ち取り、ベンチに戻って悔しがるのかと様子を見れば、全然取り乱すどころか笑って会話していたのだから。


 そのためか川崎総合はこのままタダでは終わらせない。


 4回と5回は進展がないものの、6回の表で川崎総合の真骨頂が出始める。


つづく!

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