腕がしなる少女 後編(1)
寝静まった夜アーネットの屋敷に黒い影が現れた。門番の隙をついて侵入し、易々と屋敷に忍び込む。侵入者は迷いのない足取りで上階に駆け上がりあるドアの前まで来た。ドアの鍵を開けようとしているのか手に何かを持って近づこうとした時に不意に視界が真っ白になった。
「ユリアさんが不安で気になったから来たのですかケリーさん?」
そこにいたのは手に明かり代わりの光魔法「サンライト」をかかげて当たりを照らすクロードとユーリがいた。光に照らされたケリーはすぐに逃げようとしたがすぐユーリに捕まえられた。
「逃げても無駄です。住居侵入の現行犯なので言い逃れは出来ませんよ。」
ケリーは抵抗するが何もできずユーリは勝ち誇った顔をするが、クロードは冷静なまま周囲を確認しユーリにケリーを解放するように言った。
「ユーリ、彼は巻き込まれているだけだから離してあげなさい。ケリーさんの精神をコントロールしてこっちをずっとみているのを気づかないとでも思いましたか?狂気の呪術師ドレッゼ・ケラー。」
ユーリはすぐにクロードのもとに駆け寄り、振り返ると既にケリーは立ち上がりクロードを見つめていた。
「ヒヒッ…なーんで僕のことが分かったのかなぁー!特級秘匿魔法で見えないようにしてたのになー!!」
「秘匿魔法は同じ等級の魔法を扱える者には暴かれる可能性があるのをお忘れですか?」
「へぇー…情報系の実力は僕と同じかー…ならこれならどうだい!!」
ケリーの身体を操り気味が悪い笑みを浮かべさせるドレッゼ。足下に魔力を漂わせクロード達から距離を取ろうと走り出した。クロード達は嫌な予感がしすぐに追いかけるが中々追いつけないでいる。そうしているうちにドレッゼが準備が出来たのかクロード達に振り向き、高らかに宣言する。
「ヒッヒッ、私を追いかけてきたのが君たちの敗因だよ〜。「蒼玉の傀儡師」」
ドレッゼの固有魔法「蒼玉の傀儡師」は自身の魔力を生贄にし、青い骸骨を召喚する魔法だ。青い骸骨は操り糸を飛ばし有機物、無機物関係なしにその場にあるもので生きた人形を都合の良い手駒として無尽蔵に作り変えて生み出す危険極まりない召喚生物だ。ドレッゼの召喚により近くにあった家具や花が作り替えられて出来た魔物達が瞬く間にクロード達を囲む。
「ヒヒッ、ほらほらー早く逃げないと死ぬよー!」
遠くにケリーを操るドレッゼが見えるが近くの魔物でそれどころでないクロードとユーリはどう対処するか考えていた。一つ思いついたクロードはユーリに耳打ちをする。
「先生!!それはリスクの方が大きいですよ!やめた方がよろしいのではN…」
「ユーリそんな悠長なこと言っていられる余裕はもう無いんだ!!この魔物の数だともう床が壊れてもおかしくないよ!!急いで離れて!!」
「はい!!先生も気をつけて…」
そう言うとユーリはクロードから距離をとった。
「ドレッゼ、一つ聞きたいことがある。黄緑色の石と深緑色の紙を置いたのはお前か?」
「知っていたとしても教えたりはしないよー僕は」
「そうか…ならこの魔物達を片付けるとするか」
これを皮切りに2人の戦闘が始まる。