【第1話・刀剣オタク、入学式後で能力を知る】
更新できました。戦闘描写はイマイチ、この作品の内容がなんか見たことある内容だなって思うかもしれませんが楽しく読んでくれれば幸いです。
場所は体育館の中、その中では多くの在学生と新入生が席についていた。奥の壇上でこの学園の理事長が立つ。
「新入生の皆様、よくぞこの『ダンジョン学園・東海道』に入学してくれました。」
壇上に立つのは淡い茶髪を下ろした容姿端麗の理事長、山本佳織が凛としつつも優しい笑みを浮かべながら口を開く。
「皆様も知っての通り、このダンジョン学園・東海道は日本にある学園の一つの学舎として知られています。数あるこの学園に入学してくださったことに心から感謝いたします。」
そう。ダンジョン学園・東海道だけでなく、日本には畿内、東海道、東山道、北陸道、山陰道、山陽道、南海道、西海道という8つの学園があり、その地方のうちの一つが東海道である。
「そしてこれもご存知のはずです。ダンジョン学園とは約20年前に起きた『大災害』と呼ばれる歴史に残る災害を機に突如として発生したダンジョンという異界に通じる迷宮が出現したことも。」
『大災害』
それは20年前、なんの前触れもなく出現した異界の迷宮『ダンジョン』から溢れ出た怪異生物『モンスター』が人類を蹂躙した。その対策のために日本を始め世界中にダンジョン学園が設立された。
「そしてこの20年間で人類はダンジョンから出現するモンスターに対抗できる力を得て、今こうして人類を守護するために入学してくれた貴方達を心から歓迎いたします。」
佳織はそう言って頭を下げて壇上から降りる。そこからは学園の詳細などの説明で入学式は終わった。
◇
体育から在学生と新入生がそれぞれの教室へと戻り席に着く。この俺、帯刀剣司も自身の教室に戻り席に着いた。
「よし、お前ら。よく入学してくれたな。俺はここのクラス1-5組の担任を務める角川猛だ、よろしくな!!」
黒の短髪でジャージ姿の男性教師、角川先生がニッと笑みを浮かべて挨拶をする。
「それじゃあ、出席番号順から自己紹介をしていってくれ。」
角川先生から新入生の自己紹介が始まる。この教室にいる人数は24人、その出席番号7番の自己紹介が始まった。
「僕は神崎恭弥と言います。皆んなと仲良く、そして共にダンジョンを攻略できるよう一生懸命、努力していきたいと思います!!」
濃い茶髪のイケメンである神崎が落ち着きがあり、それでいて強い意志を宿した瞳で自己紹介をする。その自己紹介だけで何人かの男子は関心を持ち、女子は頬を赤らめていた。ありゃ、カリスマがある奴だな。それから次の自己紹介では……
「橘瑠璃です。皆さんと同じくこの学園でダンジョンを攻略し、救いを求める人々を助けるために入学しました。どうぞ宜しくお願いします。」
朝に俺を起こしてくれた黒髪サイドテールの美少女、橘が自己紹介をした。なんかお嬢様ってああいうのを言うのかな?そこからは暫くして出席番号18番まで自己紹介が進んだ。
「私は黒河れみって言います!!このクラスで強くなっていつかはトップに立ちたいと思ってるわ、皆んなよろしくね!!」
赤毛の短髪を少し結った美少女、黒河が元気溌剌と自己紹介をする。随分と自信ありげに言うな、腕に覚えでもあるのか?そしてとうとう俺の番が来た。
「帯刀剣司だ、特技は料理と剣術で趣味は刀剣鑑賞だな。まぁ、死なないように努力するよ。」
高校の自己紹介って無難なのはこんな感じだよな?だが、少しだけ周りを見ると何やら微妙そうな表情をする奴らが殆どだった。え?なんで?
「ま、まぁ、悪くない自己紹介だった。それじゃあ次の奴、頼む。」
なんだったんだ、さっきの反応は?そして自己紹介が一通り終わり明日には本格的な授業が始まると伝えられて20分の休憩後に学園に関するパンフレットや教科書を配られ最後にデバイスを渡された。
「全員に行き渡ったな?今、渡したデバイスにはそれぞれのステータスが入っている。表示されるまでは自身のステータスや職業は確認できないからな、くじ引きみたいで面白いだろ?」
角川先生がそんなふうに言って全員がデバイスを起動してステータスを確認する。
◉ ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ ◉
NAME:帯刀剣司 AGE:16
JOB:兵 REVEL:1
HP:500/500 MP:20/20
WEAPON 0/2:なし
CONDITION:正常(異常なし)
SKILL 0/5:なし
MAGIC 0/3:なし
UNIQUE:経津主神
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表示されたのはこんな感じだった、ゲームかよ。それに職業が兵ってなんだ?意味は武士とか戦士って意味だったよな。それにこの固有能力の経津主神ってのは、アレだよな?刀剣の神様で香取神宮に祀られてる。そんな神様の名前と全く同じなのが俺の固有能力ってかなりラッキーなのか?
「全員、確認できたな?デバイスは無くすなよ。もし万が一に壊したり、無くしたりしたら2週間くらい期間を空けてからじゃないと支給は出来ないからな。気をつけろよ。じゃあ、また明日な。」
金かかってるんだな、このデバイス。角川先生はそう言って教室を出て行く。さて、俺も直ぐに帰るか。早く色々と整理しなきゃいけないことが大量にあるし。そんな考えていると他の皆んなは直ぐに幾つかのグループを作って自身のステータスを見せあっていた。俺はサッと教室を出て学園を後にする。
◇
「なんの疑問もなく帰路を歩いてたが家はそのままか。」
最初に目が覚めた場所が桜や湖がある場所からこの日本であった日本じゃない世界で色々と考えなきゃいけないことが多すぎる。
スマホで調べてみたところ、ダンジョン学園は入学式で言ったとおりに八つの地方に設立されており、その他にも全世界で数多くのダンジョン学園があるとのこと。日本はその全世界の中でもダンジョン対策に力を注いでいる国だと記されていた。
俺は書かれている内容を見て自身の顔を片手で覆った。
「ハァ、どこの異世界漫画だよ。と言いたいが……」
俺はデバイスを操作してステータスを確認する。
◉ ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ ◉
NAME:帯刀剣司 AGE:16
JOB:兵 REVEL:1
HP:500/500 MP:20/20
WEAPON 0/2:なし
CONDITION:正常(異常なし)
SKILL 0/5:なし
MAGIC 0/3:なし
UNIQUE:経津主神
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これを見ちゃえば現実だと自覚するしかない。
「これを見たところで本当に能力が使えるのか?それ以前に詳細も分からないのにどう扱えと?」
UNIQUE として表示されているこの経津主神。
【経津主神】
それは日本神話に登場する一柱で刀剣と武の神として知られており、かのもう一柱の武神である建御雷神と共に出雲へ下って武力と交渉を用いて国土を平定したと伝えられている神様だ。名前にある『フツ』とは刀剣で斬る際に起こる音から取られているとか。
「そんな凄そうなのをどうやって扱うんだ?まったく分からんし、方法も見つからないんじゃ今日はもう寝るか。明日の授業で教わるだろ。」
俺はそう片付けて寝ようとしたが視界に刀剣雑誌が映り、気分転換に少しだけ読もうと考えて手を伸ばしパラパラと頁を捲って気づけば一冊を読み切って時間を確認したら1時を回っていて慌てて俺は寝た。
◇
翌日、若干の眠気を覚えながらも俺は灰色と赤で彩られた制服に着替えてダンジョン学園・東海道に向かう。校門を潜り玄関で履き替えると後ろから声をかけられた。
「おはよう、帯刀くん。」
振り向くとそこには黒髪のサイドテールの美少女、橘瑠璃がいた。
「おはよう、橘。」
「どう?家で自分の固有能力は把握できた?」
「それやりたかったがどう確認するのか分からずに今日を迎えたよ。」
「え?普通は分かるはずなんだけど、もしかしてまだ『禅』を済ませてないの?」
「禅?なんだそれ?」
坐禅の禅か?
「嘘でしょ?普通は小学生に入る前から教わることよ。それを済ませてないなんて……」
なんか橘が物凄く呆れた表情とため息を吐いた。いや、本当に禅ってなに?
「はぁ、なら運がいいわね貴方。今日の授業で『禅』をおさらいするからそこで学ぶといいわ。」
「おう、そうする。そういえば橘のステータスはどんなだったんだ?」
「本当に、貴方は……」
すると橘が無言で俺の頭を小突く。
「痛っ、え?なんで?」
「なんでじゃないでしょ?貴方もしかして世間知らずなの?他人のステータスを知ることは御法度、つまり罪に問われても文句を言えないのよ。」
「えぇ!?その程度で!?」
「程度な訳ないでしょ!?例えてあげましょうか?貴方、面識もない女性にスリーサイズを教えてなんて言えると思う?普通は言えないし、相手も教えないわ。極端だけどそれと同じくらい自身のステータスの開示は重いの。この学園でやっていきたいなら、最低限このルールだけは守りなさい。いいわね?」
橘の言うことに最初は驚いて理不尽とも思えたが話を聞いていくうちにその心遣いに感謝した。
「橘、教えてくれてありがとう。下手したら、入学して2日後に退学になってたかもな。」
「本当よ。それに日本が誇るダンジョン学園・東海道から入学して間も無く退学者が出たなんて知られたら私も困るもの。」
「って、良心からじゃねえのかよ!?」
「それは2割、後の8割は学歴に影響を与えないための方便よ。」
「はは、強かな奴だなお前は?」
「ふふ、まぁね。」
俺と橘はそんな会話をしながら教室に向かう。
そこからは続々とクラスメイト達がやって来て席についていく。何人かのグループで固まって談笑したり、読書したり、少し寝たりとする者がいた。俺も少しだけ仮眠をしたが5分ほどですぐおきた。担任である角川先生がやって来てクラスメイト全員が自身の席に戻りSHRをした後に授業が始まった。
一限目は『現代国語』、二限目は『数学』、三限目は『世界史』と前世では普通に学ぶ当たり前な学科があって少し安心した。そして四限目の授業、今回は初めての授業で午前だけしかないがこの科目だけは例外なく2時間続きで行われる。その科目は……
「よし、皆んな着替え終えたな?それじゃあこれより『戦技』を行うぞ。」
『戦技科』
この科目はダンジョン学園では必須で受ける授業であり、基礎的な武器の扱いや戦い方、魔法やスキルの訓練などをする科目だ。
「昨日、渡したデバイスで自分のステータスや職業は確認したと思うがその職業にあった訓練を行う。じゃあ身体能力組と魔法力組で分かれろ。」
言われた通りにそれぞれ自身のステータスに表示された職業に分かれる。全員が体育着に着替えているが腰や腕にデバイスを嵌めている。訓練を受ける上で経験値がどの程度、得られたかを確認するために身につけている。
「分かれたな?まず最初の1時間は『禅』を行ってもらう。まぁ、小学生にやったから別に必要ないだろうがこれも復習だと思ってやれ。」
朝に橘から聞いたこの『禅』とはやり方としては坐禅と変わらないが本質は固有能力を良く知るために、向き合うために必要なことらしい。しかもかなり幼少の頃からやっておく事だったらしい。なんでも高校生に成長するまでに禅を行う事でより自分に秘められた固有能力をより深く知るために必要なことなのだとか。
「よし、じゃあ始めろ。」
見渡すとクラスメイト全員が禅を行っていた。
「おい、帯刀どうした?お前も早く禅を始めろ。出遅れてるぞ。」
「あ、はい。」
俺も慌てて足を組んで坐禅を行う。深呼吸を数度やって心を落ち着かせて禅を行った。
◇
目を開いて俺の視界に広がったのは大きな桜の木、ベニシダレザクラがあり、すぐ側には一振りの刀剣が淡い光を放ちながら鎮座していた。俺はその刀剣を握って、柄に手をかけて……
次に目を開けると俺はいつの間にか立っており、右手になんの拵えもない刀剣を握っていた。周りのクラスメイトを見渡すと各々には槍や斧、ガントレットと様々な武器を手に持っていた。
「これが俺の固有能力か、最高だな。」
俺は刀剣を納刀する。すると角川先生が口を開く。
「よし、帯刀もできたな。準備ができたなら2人1組になれ。互いに基礎的な武器の扱いと軽い模擬戦をしてもらう。怪我のないように気をつけろよ?魔法力組は的を狙って魔法の扱いを覚えてもらうぞ。」
魔法力組、言うなれば後衛職組が杖やら水晶やらを構えて魔法を放つために集中し始めた。こちらの身体能力組、前衛組も近くにいる者や仲のいい者同士で組んでいく。俺も誰かと組もうと思ったがなかなか相手がおらず困った。と考えていると声をかけられた。
「なぁ、俺と組もうぜ。」
後ろに振り向くとそこには巨大な剣、クレイモアを持つ大柄な男子生徒がいた。確かこいつは……
「長谷川……」
長谷川清という自己紹介の時でもかなり目立った体格の持ち主だ。言葉遣いは荒く、外見から分かるほどの不良という言葉が真っ先に思い浮かぶ印象だ。
「どうよ?どうせ相手がいねえんだろ、だったら俺が相手になってやる。」
正直に言って他の奴と組みたかったが仕方ない。
「じゃあ頼む。」
「へへっ、分かった、ぜ!!」
「なっ!?」
返事と同時に長谷川はクレイモアを握って振り下ろしてきた。咄嗟に横に逃げて攻撃を回避したが俺が立っていた場所にはヒビ割れた地面とクレイモアの剣痕ができていた。
「お前、いきなり斬りかかるって殺す気か!!」
「当たり前だろ?寧ろなんで殺されないとでも思ったんだよ?」
コイツ、明らかに殺す気だ!!俺も刀を抜いて構える。すると長谷川は見下した笑みを浮かべて口を開く。
「ハッ、まさか刀剣なんていうゴミがお前の固有能力かよ?ははは、なんとも不運だな!!」
「あ?」
長谷川はなに言ってるんだ?俺が疑問に思っていると長谷川はクレイモアという大剣を手にしているのに瞬時に接近して斬りかかる。
「くっ!?」
俺が刀で受け流して上手く回避する。だが……
「おらぁ!!」
「ぐあ!?」
受け流した後にクレイモアの側面で殴打されて吹き飛ぶ。折れてはいないが骨に響く衝撃を受けて立つのが辛い。
「教えてやるよ。なんで刀剣がゴミなのかをな?刀剣はずっと昔に、それも15年前の人類が対抗手段を得た力の中でそれだけが使えない武器として広まったからさ!!」
その話を聞いて目を見開く。
「驚いてるみてえだが、常識だぜ?刀剣なんていうマイナーな武器を誰が好き好んで使うかよ。薄くて脆いそんな鈍を固有能力で発現した奴は雑魚なんだよ!!」
「くっ!?」
「ほら、ガラ空きだ!!」
「カハッ!?」
一度は受け太刀で防ぐが無防備な腹に蹴りが入って後ろに吹き飛ぶ。
「くっ、ゴホッ……!!」
「あははは、ボールみたいに吹き飛んだぜ!!」
やばい、もろにくらった。くそっ、骨は……折れてない。が、力を込めると痛みが走る。
「折角だ。俺のステータスを見せてやるよ。」
すると長谷川がデバイスを起動させてステータスを見せた。
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NAME:長谷川清 AGE:16
JOB:重戦士 REVEL:1
HP:800/800 MP:20/20
WEAPON 1/1:クレイモア
CONDITION:正常(異常なし)
SKILL 2/5:剛腕、豪脚
MAGIC 0/2:なし
UNIQUE:暴君
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「技能が、発現してるのかよ……」
それであの腕力と脚力の威力か。
「ははは、その通り!!俺はステータスを表示した時には既にあったんだよ。お前みたいな雑魚とは違くてな!!」
刀を杖代わりに立とうとする俺を長谷川は嘲る。
すると角川先生が気づいて近づく。
「おい、長谷川!!これは模擬戦で殺し合いじゃないんだぞ!!」
「模擬戦?おいおい先生よぉ、趣旨を間違えちゃいけねえよ。ここはダンジョン学園で俺達はモンスターと戦うために鍛えなきゃいけないんだぜ?寧ろ、これくらいは普通だろう。」
「だからって模擬戦相手を痛めつけるまでする必要があるわけないだろ!!加減をしろ、相手はクラスメイトでモンスターじゃないんだぞ!!」
「分かった分かった、加減すりゃいいんだろ?五月蝿えな。」
あまりにも教師に対する態度ではない長谷川。その様子に角川先生は青筋を浮かべる。
「お前は……!!」
俺は痛みが引いた体を刀を支えに立ち上がって角川先生の肩を掴み引き止める。
「先生、俺は大丈夫です。それにコイツは俺がはっ倒します。」
「だが、帯刀。お前の……」
どうやら先生も俺の固有能力が刀剣で、それが現代では鈍として広まっているだろう。だがな?こちとらこれでも刀剣オタクって自称できるくらいに好きだし、たった2年されど2年と武道を通して刀剣の扱いは俺は誰よりも知ってる。その性能、その本質を……
◇
「なんだ?立つのかよ。」
刀を杖代わりに立ち上がった剣司を見て長谷川清はクレイモアを肩に担いで見据える。
「お、おい帯刀……」
「先生、これは俺達の模擬戦です。すいませんけど、退いてください。」
「だが……」
「二度は言いません。俺も今は、集中してるんで。」
剣司の目を見て角川は後ろに下がる。
その様子を見た長谷川はニヤリと笑みを浮かべてクレイモアを両手で掴み斬りかかる。
「ハッ、これで終わりにしてやるよ!!」
技能『剛腕』と『豪脚』を使用して急接近する。剣司は先程のように慌てずに見据えて一歩、後ろに下がり躱わす。
「まだまだぁ!!」
振り下ろしから横薙を繰り出す長谷川の攻撃を次々と躱していく。
「チッ、避けるだけか?反撃してみろよ帯刀!!」
クレイモアという大剣を振るっているにも関わらず長谷川は重さを感じさせないかのように振り続けて猛攻を繰り返す。
その様子を困惑と緊張の様子で眺めるクラスメイト達。誰もが知っていた。この模擬戦で帯刀剣司は長谷川清に負ける、と。世の中の常識で刀剣は武器としての価値は下落してこれが発現した者は『ハズレ』か『雑魚』と罵るだろう。だが、言わせてもらおう。剣司は前世でオタクとも言えるほど刀剣好きであり、果てには数ある刀剣の全てに語られているある話を頭に入れるほどに。
「ハァ、ハァ、ハァ……なんで、当たらねえ?」
「ぷっ……少し口を切ったか。」
「テメェ、いつまで避け続けんだよ!!とっととくたばりやがれ!!」
攻撃が当たらない苛立ちが募って長谷川はクレイモアを構えて真正面から斬りかかる。そこで剣司は刀を構えて見据える。
「(ふぅ、落ち着け。勢いで圧倒されたがよく考えれば長谷川は力任せに接近して武器を振るだけの猪だ。だから……)攻撃を逸らすなんて簡単だ。」
剣司は刀の柄頭で長谷川が振るうクレイモアの剣身側面を軽く小突いて起動をズラす。
「うおっ!?」
「さて、俺もそろそろ自分の固有能力を扱えないとな。確かこうだよな。」
ここで剣司は距離を取り刀を納刀して目を瞑る。すると白鞘に納まった刀剣が淡く光り姿を変えた。
装飾の一切が無い質素な二尺四〜五寸ほどの無骨な鎬造りで『実用剛刀』として知られるかの刀剣の名は────
【同田貫正国】
加藤清正が愛刀として使用した刀剣である。
「はは、こりゃおあつらえ向きだな。」
「ハッ、たかが見た目が変わったくらいで俺に勝てるか雑魚が!!」
長谷川がクレイモアを振るう。迫り来る大剣を見据えて剣司は柄に手を伸ばし同田貫を抜刀する。すると……
「は?」
長谷川の持つクレイモアの剣身が半ばから切先まで斬られていた。
「な、なんで……!?」
同田貫を抜刀した状態をゆっくり解き剣司は静かに見据える。
「これは同田貫。どうだ?散々、馬鹿にしていた刀剣の斬れ味は?」
自身の武器であるクレイモアが斬れていることに長谷川は驚愕していた。その長谷川を尻目に剣司はジッと同田貫を否、刀剣を見て確信した。
「これが俺の固有能力なんだな、本当に最高だ。」
剣司の固有能力である経津主神は彼の知る刀剣を扱えることとその逸話を基にその真価を発揮する。
同田貫は『兜割り』を果たしたという逸話を持つ刀剣で謂わば『斬鉄』を成功したとも言える。
半ばから斬られたクレイモアを手にしてワナワナと震えながら長谷川は再び斬りかかる。
「巫山戯んなぁ!!俺がお前みたいな雑魚に負けるかぁ!!」
そんな長谷川を前に剣司は両手で同田貫を握り、根元まで斬り裂く。そこには最早、武器はなく柄だけの物が残る。
「あ、あぁぁ、嘘だ……」
「じゃあ、覚悟は出来てるな?」
戦意喪失しつつある尻餅をする長谷川の眼前に立ち、同田貫を上段に構える。この後どうなるのかを明確に想像してしまう長谷川は声を震わせて言葉を紡げない。
「いざ……フンッ!!」
「うわああぁぁぁ!?」
全員が目を瞑って待つ事、数十秒後に目を開くとその光景には……
「ぁぁぁ……」
白目を向いて泡を吹いて気絶する長谷川の前に寸止めした同田貫を持つ剣司が映っていた。
「馬鹿が。斬るわけないだろ?」
ゆっくりとした動作で同田貫を納刀して白鞘に戻す。
今このダンジョン学園で刀剣の価値が変わるかもしれない場面に皆が立ち合った。それをどう扱うかはこの少年次第である────




