6.邂逅
フェンリルに出会って、5年は経ったと思う。
今も昔とあまり変わらない生活をしていた。
そういえば、昔と比べたら出来ることもかなり増えた。
人の姿のままでも猪を狩れるようになったし、フェンリルにならなくても詠唱無しで高威力の魔法を使えるようになった。
高威力と言っても、フェンリルの時よりも威力はかなり下がるけど。
私は魔法が好き、だから上手く使いこなせるように頑張って練習する。
私は癒しの泉の近くで、手のひらに小さな炎を生み出す。
私の周りに風を起こし、その風に炎を乗せる。
すると炎の渦が私を囲う。
何度もしたことがあるけど、この熱さには慣れない。
暫くして、魔法を使うのを止める。
何をしていたかと言うと、生み出した炎を消してしまわないように力の加減を調整しながら、身体が燃えないようにギリギリまで身体に炎を近付けていた。
これは、二属性の同時使用、加減の仕方とコントロールを良くする練習だ。
色んな練習方法を模索したけど、この方法が一番効率が良かった。
危ないから集中も出来るしね。
始めた頃はよく服に炎が燃え移ってたな~。
今でもたまにやっちゃうけど。
もし燃え移ったとしても、癒しの泉に飛び込めば良いから大丈夫だけど。
私は魔力が切れるまで練習し続ける。
「な!?貴様、人間か!?」
いきなり後ろから聞き慣れない声が掛かる。
私は魔法を使うのを止めて後ろを振り向き、声を掛けてきた人物を警戒する。
そこに立っていたのは、軽い荷物を持っただけの、エメラルドのような綺麗な長い髪を持つ美しい女性だった。
一見武器を持っているようには見えないけど、油断は出来ない。
全く気配を感じさせずに私に声を掛けた。
それにこの森を軽い荷物を持っただけの女性が、傷一つ付けずに一人でいることが出来るなんてただ者ではない。
私達は動かず睨み合う。いつ相手が仕掛けても動けるようにだ。
このままじゃ均衡を破れない。なら私が仕掛けるしか……!
「ウォン!」
フェンリルが私を飛び越えて、女の人の前に立つ。
「フェ、フェンリル!あの人間は何だ?」
女の人が私の方を向き直したフェンリルの背中から、ひょこっと顔を出して私を睨み付ける。
なんだか私が怪しい人みたいになってるんだけど。
ていうか、フェンリルはこの人と知り合いなの?
さっきからしっぽをぶんぶん振ってるけど。
本当に何者なんだろう、この人。
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