3.狩り
フェンリルと暮らし始めて半年は経ったのかな。
今私はフェンリルの背中に乗って、いつもの狩り場に向かっている。
魔物は空気中に漂う魔素を取り込んで生きているけど、私は人間だからちゃんとご飯を食べないといけない。
私はまだ幼く狩りなんてまだまだ出来ないので、フェンリルに力を借りている。
「ブギィイィィイ!」
狩り場に到着したら、私達の前には猪型の魔物が単体で出てくる。
するとフェンリルは口を大きく開き、1メートル近くある猪を、遥かに上回る大きさの炎を吐き出す。
森が燃えないのかと心配になるけど、ここは比較的開けた場所なので木に燃え移ったりはしない。
そんなことを考えていたら、いつの間にか猪は丸焦げになって倒れていた。
フェンリルは猪に近付くと、その大きな爪で器用に猪を解体していく。
この解体技術は何処から持ち合わせたのかが凄く気になる。でも私は会話が出来ないから質問出来ない。フェンリルのことを私は何も知れなくて少し寂しい気持ちになる。
あっという間に解体し終わり、いつでも食べれる状態になる。
ここで食べるのは危ないので、私達は肉だけを持って癒しの泉の元に帰る。
初めてフェンリルの背中に乗った時は、飛んでいきそうになってたけど、今では手を離していても余裕で乗っていれる。お陰で足腰がかなり鍛え上げられたと思う。
私達は癒しの泉に到着し、私は早速肉に手をつける。
焼き殺したので調理しなくてもそのまま食べれる。
ほぼ毎日肉で正直飽きてるけど、贅沢は言えないからね。
フェンリルと出会う前の一週間を思い出したら、今の状況に涙が出るよ。
私は肉を手で千切り、そのまま食べる。
血抜きをしてなくて臭いけど、私はもりもり食べていく。
そして腹八分目で食べるのを止め、残った肉はフェンリルによって異空間に収納される。
もしもの時に備えて保存食を常備しておく。
腐るんじゃないかと思ったけど、あの異空間の中では時間の流れがかなり遅いらしい。
今の生活って、フェンリルに頼りっきりなんだよね。
私も少しは力になれるようになりたいな。
フェンリルみたいに強くなって、頼られたいな。
私は目を瞑り、いつも私のことを助けてくれるフェンリルのあの姿を思い出す。
私もフェンリルみたいに……
そして目を開けると、とんでもない光景が待っていた。
視線がまずいつもよりかなり高かった。
まるで、フェンリルに乗っているくらいの高さ。
なんだと思って足元を見ると、そこには白くて太く逞しい足が4つあった。
私は混乱しながら身体を動かす。
私は四足歩行をし、口を開くと視界にとんがった口が入ってくる。
これって……フェンリル?
「オウン?」
フェンリルが私の方を向いて、不審そうに見ている。
いつも見上げていないと見えなかったフェンリルの顔が、私の真正面にきている。
元に戻って、元に戻って!
そう念じたからか、私はいつもの姿に戻った。
それでもフェンリルは不審そうに、私の匂いを嗅ぐ。
私だと分かったのか、フェンリルは私の前にちょこんと座る。
今のは何だったんだろう。
あ、もしかして……
スキル?
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