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マジか!?  作者: 夜凪
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腐海の主は兄に輪をかけた変人だった

お久しぶりです。

「あァ、妹ちゃんだ。久しぶり〜」


ノンビリとした口調に下がった眉に落ちた肩。

腐海の主はなんだかヨレヨレのスプリングコートと相まってくたびれたおじさん、って感じの人だった。


片手を上げてへにょりと笑いかけられたけど、久しぶり?

『赤ん坊の時に何回か封印手伝ってもらうために会ってるんだよ』

首をかしげる私の横で、兄が補足。

いや、さすがに赤ん坊の時の記憶はないから「久しぶり」って言われても、困るわ。


「ありゃ、志月もしばらく会わないうちに随分影が薄くなっちゃって」

そして半透明で宙に浮かんでいる兄を見て言うことはそれだけか?!


『影薄いって言うか、そもそも影有りませんけどね〜〜』

「兄貴、それもなんか違うから」

けらけら笑って返す言葉じゃない気がする。

てか、意味わかんない。


「なんでそんなに呑気なの?!」

兄貴は死にかけてて幽体離脱状態で、部屋は腐海で、やっと腐海の主が帰ってきたと思ったら笑って会話、とか。

2人とも絶対変だから!


「う〜ん、って言ってもねぇ」

『もう、僕がこの状況になってるのはどうしようもないし、ねぇ』

叫ぶ私に、顔を見合わせて肩をすくめる2人。

え?まさかの私がアウェイ?

一般常識さん、仕事してください。


「それにしても………霊体で術は使えるのかい?どうにかなりそう?」

『う〜ん、簡単な結界くらいならどうにか出来そうなんですけど。いかんせん、呪具が使えないのが………。僕の力じゃ道具が使えないとイロイロ辛いですね』


頭を抱える私の横では、着々と専門っぽい会話が重ねられてる。

昔なら、「ハイハイ、厨二病乙」って笑って流せてたのに………。

目の前に兄貴(ゆうれい)がいる以上、笑えない……。

と、いうか。


「すみません。兄貴の事もなんですが、私のこの力?もどうにかなりませんか?」


兄の指示に従い封印とやらをといた次の日から、世間は恐怖に満ちていた。

何かというと、兄以外の幽霊まで見えるようになってしまったのだ。

外を歩くと半透明の人たちがフヨフヨと漂っている。

しかも、結構な数で。


兄曰く、ほとんどのモノが他に害をなす事はないって事だったけど、見えてるだけでも結構な衝撃と怖さがあり、私的にはそこにいるだけで十分に「害あり」なんである。


事故にあったらしき腕や足があらぬ方向に曲がり各所から血を流している幽霊が視界の隅をスゥッと横切っていくんだよ?

見たくないから、そんな光景。


とりあえず、兄の「目を合わせるな」の指示のもと、必死で俯きながらここまでたどり着いたんだけど、なかなかの衝撃体験だった。

多分、隣に兄がいなかったら即座に家へ回れ右してた。


「あぁ、妹ちゃんの能力は霊視が1番強く出てるタイプだったっけ。普通は成長とともに無意識に「視る」べきものを選べるようになるんだけど、ねえ」

含み笑いの表情で隣の兄に視線が飛んだ。


「志月がきっちり封印しちゃったから、学習する機会もなくしちゃったんだろうね。まぁ、見えてなかったんだからしょうがない」

「兄貴のせい?!」

『え〜〜、結衣がお化け怖いって泣くから見えなくしただけなのに』

思わず兄を振り返って突っ込めば、唇を尖らせてのブーイングが返ってきた。

20歳過ぎの男が唇尖らせんな!可愛くないし!


「ま、鶏が先か卵が先かって感じだねぇ。とりあえず、目を合わさなきゃ近づいてくる事は無いだろうし、大丈夫だよ〜〜」

「………そういう問題じゃないです。いくら悪さはしないって言ったって、貴方ならゴキブリが目の前横切って平気で生活できますか?!」


そこに居るって知らなければ問題なくても、知ってしまえば気になるし、精神衛生的にも非常によろしくないんである。

力説する私に、何故か2人が顔を合わせた後吹き出した。


「霊体をゴキ扱いとか!まぁ、確かに殆どが百害あって一利なしだけど!」

『あんなに怖がってたのに害虫扱いって!結衣、ゴキなんて余裕で退治してんのに!!』

ゲラゲラと笑い転げられてるけど、非常に不本意だ。

だって、他に適当な例えが思いつかなかったんだもん。


確かに、ゴキブリもムカデも瞬殺だけれども。

だって、悲鳴あげて逃げてたって、他に誰もやってくれないんだもん。自分でやらなきゃしょうがないじゃん。

でも生理的嫌悪感はあるんです!

怖くないわけじゃないもん!


「笑うなんてヒドイ。コッチは死活問題なのに!!」

泣くよ?マジ泣きするからね?

ジト目で睨めば、2人は顔を見合わせた後、腐海の主がポリポリと頭を掻きながら首を傾げた。


「あ〜〜じゃぁ、ちょっと対策取るために頑張ってみる?」

「ぜひ!でもその前に、お風呂に入ってきてください。臭いです!」


キッパリと頷いた後に、ピシリとシャワールームの方を指差した。

だって、そこそこ離れてるのに仄かに臭ったんだもの。

せっかくお部屋は綺麗になったのに、臭かったんだもの!


「女子高生にクサイって言われた」

って、愕然としてたけど、聞こえないったら聞こえない〜〜。

秒で入ってきてください!


読んでくださり、ありがとうございました。

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