第十四話 アルチー
――酔った勢でパンツからチ○コを出したり、そのチ○コを銜えたりしておいて、翌日、
「なにも覚えていないんです」
とか言い張る君たち。もしそれが本当なら、アルコール性痴呆症の可能性が高いぞ。略して、〝アルチー〟だ。
特に女の〝アルチー〟で、かつ、酔うとすぐ「はいはい」とおマ○コ開いてしまう君。これはかなり重篤な病状、その名もずばり〝アルチハイマン病〟だ。すぐに病院へ行けぇ。手遅れになるぞ。急げぇー。
*
そんなこわぁい、お酒にまつわる思い出を一つ。だいぶ前のことなんですが――。
横浜の伊勢佐木町で、会社の忘年会があったんです。関連会社の女の子たちも参加すると聞いて待ちきれず、早々と横浜入りしてしまいました。ところがスタート時間が二十時ごろと、あまりにも時間があり過ぎて、伊勢佐木町の商店街をぶらぶら見て歩くことにしたんです。
そんな中、ふと古い店構えのペットショップが目に入りました。
当時、なぜか小鳥を飼っていて、そろそろ餌が切れかかっていました。飲み会で邪魔になるし、酔って忘れてくるかも知れないし……と、いろいろ葛藤はあったんですが、値段も安かったので買うことにしました。
この店は餌の種類が豊富で、しかも、今どき桝で量り売りしてくれるんです。さっそく一升桝で量ってもらい購入。紙袋に詰めて、更に白いビニール袋に入れて渡してくれました。
カバンと一緒に、手にぶらさげて歩いていたんですが、思った以上に邪魔になりまして、
『こりゃぁ確実に明日の朝までに、なくなっちゃうな』
などと後悔しつつも、
『ま、落としたところで、大したものでもないか』
と思い直し、宴会会場へ向かいました。
*
いよいよ待ちに待った飲み会がスタート――。
会場では、手にさげた小鳥の餌を見て、
「それなに? え! 小鳥の餌。なんで飲み会にそんなものを持ってきてるの?」
と、みんな興味津々でした。いちいち説明するのも面倒くさいなと思っていたら、意外にも関連会社のおねえちゃんにバカウケで、
「え! 小鳥飼ってるんですか? 文鳥? それともインコですか?」
と、黄色い声に、テンションダダ上がり。調子もすっかりよくなり、冷酒をガンガン浴びて、踊りまくっていたことをなんとなく憶えているんですが……。
(で、でたぁ! アルチー)
次に気が付いた場所は、深夜二時のJR大宮駅。改札外の大きな階段の途中でした。終電はとっくに去り、人通りも少ないなか、どっしりと座りこんで茫然としておりました。
ふと我に返って、見ると、なにがあったのか? スーツの片袖が見事に引き千切られて、どこにも破片が見当たらないんです。腕には擦り傷があり、血がワイシャツを赤く染めていました。
――あれ?
通勤カバンがありません。中には、定期券、財布、免許証、保険証など、もろもろ重要なものが入っていました。熟睡して電車を乗り過ごしたことは明白で、スリにあった可能性も否めませんでした。
更に、これだけでは終わりませんでした。電車の中で聴いていたオーディオプレイヤーも、高かったカシミヤのマフラーもありません。なによりショックだったのが、二十万円もしたツイードのロングコートまでもが、跡形もなく消えてしまっていたのです。あのおねえちゃんたちと、楽しく盛り上がったはずの記憶とともに。
しかしまだそのときは、頭が朦朧としていて、事の重大さを実感できていませんでした。
*
そこへ、階段の下からものすごい勢いで、二人のお巡りさんが、駆け上がってきたんです。
二人のうち、若いほうのお巡りさんが、ひとの顔を無遠慮に懐中電灯で照らし、怪訝そうにたずねます。
「どうしました? 大丈夫ですか? ケガしてるのかな? 酔っぱらっちゃった? それ、なに持ってんの?」
言われて、ふと見た自分の手には、底の破れた白いビニール袋をしっかり握りしめ、足元には小鳥の餌が山になっておりました。




