第十三話 女がSEXを許すのに必要な、最低限の大義名分
女ってなぜか、エッチな関係に大義名分を求めるよね。たとえば〝体の関係〟を生業にしている風俗嬢も、プライベートは意外と身持ちがかたいもの。
「私、仕事だから許してるけど、そんな女じゃないわよ」
『仕事』が、大義名分というわけだ。
よくわからないのが、チューやボディータッチは許すのに、なぜか挿入だけNGという女。
「私、そんな軽い女じゃないから」
(意味わかんねぇし)
最後までいかなければ、それでなにかが許されると思っているのか。いや、たぶん彼女の中では、なにもしなかったのと同じなのだろう。
その点、男は単純。なんとか女の子を、エッチへ誘おうと、必死に口実を作るのだ。それが笑っちゃうような茶番だとしても、当人たちは、いたってまじめだからおかしい。
たとえば〝カラオケ〟。
岡山県で初めてカラオケボックスが誕生して以来、全国のプレイボーイたちは思っているはず。
――有難う、カラオケボックス――
と。
この偉大な発明によって「カラオケに行こうよ」と一言いえば、自然に女の子と二人きりになれるのだから。
そして更なる期待にむね膨らませ、茶番へと向かう男どもが現れる。
「カラオケボックスって周りうるさいし、店員が頻繁に出入りするからウザくない? ラブホにもカラオケあるからそっちに行こうよ。絶対ヘンなことしないから」
「えぇぇ! 絶対ヘンなことしない? 唄うだけならいいよ」
――で、でたぁぁぁ! 茶番中の茶番。
《絶対ヘンなことしないから!》
ヘンなことするに決まってるやん!
チンコ出すに決まってるやん!
唄うだけなら公園行くわ!
ラブホテルですよラブホ!
スマホの仲間じゃないですよ!
十人が十人、エッチするとこですよ!
子供やないねん!
子作り好きやねん!
絶対、わかって言ってるよね?
え!
天然?
いやいやいや!
ありえへんありえへん!
そんな天然、絶対おれへん!
天然っていうのは、《ウニが黄色いまんま海を泳いでいて、どうして水に溶けないのか不思議に思っているような人》のことですよ。
「さぁ、俺のマイクで熱唱や」
「なにもしないって言ったぁやぁぁんぃやぁぁんぁあぁん……」
て、やる気マンマンか?
いい加減こんなやり取り、やめません?
「させて」
「どうぞ」
でええやん。
(ええわけないやん)
――信じられないような茶番は、ほかにもたくさんある。
「うちの猫、アッパーでネコパンチ打ってくんねんけど、見にけぇへん?」
「えぇぇ! 見たいぃ」
(て、絶対そんなネコ、いないよね。ネコの前足の構造考えろや)
「あ! 終電、行ってもうた」
(て、君。確実に終電出たのを確認してから言ってるよね)
「え! 帰られへんやん。どないすんの?」
(君もわかってて困ってるし。ほんま帰りたかったら、タクシー乗らんかい)
「しゃぁないな。この時間やとラブホくらいしかないから……。風呂にだけ入りに行く?」
「えぇぇ! 絶対ヘンなことしたらあかんよ。お風呂だけやで」
(ええかげんほかにパターンないのんか?)
でも最も理解に苦しむのが、チューやボディータッチは許すのに、なぜか挿入だけNGという女の子に、
「お願い。先っぽだけ」
の一言が、意外と通じてしまうこと。
「大丈夫。全部入れたりせぇへんから。先っぽだけ。な、ええやろ? 先っぽだけやから」
「えぇぇ! 絶対に全部入れたらあかんよ」
「もちろん」
「ん? ちょっと! 先っぽだけって言ったやん」
「俺、先っぽ、長いねん」
(お前のさじ加減やろ)
「そっか……」
(納得するんかい!)
茶番は、いつまでも続くのであった……。




