二 公爵令嬢のエスコート
僕が通されていた部屋は王太子殿下の私用の応接室のようだった。あまり大事にしたくなかったのだろう。まあ、王族のプライベートに関わることだからねぇ。
部屋には僕以外に王太子殿下、宰相令息と護衛に騎士団長子息とか、王太子殿下の側近で未来の大臣候補になるだろうと思われる方々がいた。
「それでは、今後の事はミローネ公爵令嬢と話し合うのだぞ」
王太子殿下のお言葉に僕は再度何だろう? と思いつつ部屋から出された。
――お咎め無かった? 良かった! 酒は飲んでも飲まれるな。もう僕は絶対飲まないぞ。
小躍りしかけたところで、僕は固まってしまった。何故なら、部屋を出ると目の前にはあの、公爵令嬢がいたのだ。
そう言えば王太子殿下がミローネ公爵令嬢と話し合えとかなんとか……。
僕の乱入でザネンザ王子と婚約破棄になったので文句を言われるのだろうか?
そう考えると僕は一気に暗い気分に陥った。
「あの……」
「申し訳ございませんでした! 公爵家ご令嬢への数々の御無礼、本当に……」
僕は垂直に頭を下げて謝った。
「かまいませんわ。頭をお上げなさい」
そう促されて顔を上げると、美しい彼女を間近に見ることができた。
華奢だけど豪華絢爛な雰囲気。これだけ近いと何か良い香りまで纏っているのが分かるほどだ。
ああ、僕なんかには本当に高嶺の花だよなあ。手の届かない存在だ。
「それでは参りましょうか」
「は、はい」
僕は彼女に促されて歩き出した。すると彼女以外にも老紳士と女性が一緒にいて、紹介をされると、老紳士は公爵家の彼女付の執事で同じく侍女であることが分かった。
自分だけの専属執事とか、驚くしかない。公爵家は一体、何人の使用人がいるのだろう。
うちは乳母やと下級使用人が数名と派遣契約の時短の使用人だけだよ。
「それで僕はどちらに?」
お詫びに行かされるのだろうか?
ひょっとしたら、王子様達への不敬罪の処分の代わりに公爵家の奴隷になるとか。まあ、それも仕方ないかな。今首がつながっているだけでましだしね。
「そうね。王太子殿下からはお話をお聞きになっているのかしら?」
「は、はい」
――最後は聞きそびれちゃったけど。
「それであなたは本当に良いのかしら?」
「僕の異議はございません!」
ちょっと強めに言ってしまったか?
だけど僕のそんな心配も彼女は気にしていない様子だった。
「そう、安心したわ」
公爵令嬢は花が綻ぶように微笑んでくれたのだった。
う、美しすぎる。直視できない。
「じゃあ。後はご家族だけね」
「はへ、か、家族ですか。家族は……」
もしかして、家族まで、処分を受けるのか。ごめん。父上、母上、兄上達、シャーリーも。皆……。
「ええ、一緒に説明しましょう。わたくしも参りますわ」
「……はい」
僕は一気にどん底まで落とされて項垂れそうになりつつ、しっかりしろと自分を励ました。
歩き出そうとすると、ごほん。えへんと執事の何か知らせるようなしぐさが目に入る。
ああ、エスコートか。ええと肘を突き出せばいいのか? 妹をエスコートする要領で令嬢にそっと差し出した。
僕の肘に彼女の手が添えられたのが分かり、かなり舞い上がった。
今まで、エスコートしたのって、家族か親族だけだった。だからとても気になる女性のエスコートに浮足立ってしまったのは仕方がない。




