ep.8
「あ、あの!」
ヘクサが少し大きめの声を上げる。
「これ……持ってもらっても、いい、かな……?」
「これは……ブローチ?」
「頑張って開発したんだ……その……ミウロゥちゃんって喋ることが出来ないじゃない? だから自分が考えていることをそのブローチを通して声に出せるような魔法がないかなって。凄く時間が掛かったし難しかったけど……なんとか完成したの。で、でも……自分勝手かなって思って……その……渡せ、なくて……」
手のひらのうえに乗せられたブローチを眺める。
クローバーの形をしていて4つそれぞれ違う宝石が嵌められていた。
ダイヤモンドと黒い色をした石?
で、オレンジと……ピンクか? が混ざったような色をした石とルビーか。
「これをどうすればいいんだ?」
「ミウロゥちゃんのむ、む、どこでもいいから付けてあげて!」
自分でやれっていうのは……まぁナシだわな。
「ミウロゥ、少しじっとしてろよ」
どうしてそこで胸を張るんだ……
とりあえず襟近くに取り付けて……
「付けたぞ。あとはどうするんだ?」
「あとは―」
『あ、あー、おー、すごい。ちゃんと声が出てる』
どういう仕組みなのか本人の口は動いていないのに声がでていた。
『これ面白いね。ありがと、ヘクサ』
「う、ううん! 私こそもっと早くに渡してれば!」
『それでも私はこうやって喋ってなかったと思うよ。喋ってる……喋ってるのかな? ちょっと微妙だね』
そう言って少し微笑むミウロゥ。
『キミが来てくれたお陰だよ、リベット』
「1歩踏み出したのはお前とヘクサだ。俺じゃない」
『それでもだよ。キミと話しているうちに思い出したんだ。確かにあの旅はキツくてつらいものだった。でもね』
そこでミウロゥは立ち上がって円を描くように座っていた俺たちの真ん中まで歩いていく。
『それ以上に楽しかったんだ。とんでもなく熱い火山の奥に棲むドラゴンの王様と出会ったり、地底のさらにその先にある奥底でふんぞり返ってる魔王と戦ったり、迷いの森の奥で人嫌いな妖精と友達になったり、暗闇の国で1人閉じこもっている吸血鬼をなんとか連れ出したり、ある時は東の果てまで旅をして国を巻き込んだ大騒動に巻き込まれて、またある時は西の果てで破壊神との大決戦ときたもんだ。いやぁ……あの時は辛かったねぇ……』
……充実しているのは結構だが、結構ハチャメチャだな?
『セトルがずっと傍に居てくれたから私はここまでやって来れたんだ。セトルの言う通り、村の外にでたら楽しいことだらけだったよ』
「ミウロゥ……それでも、俺は……」
『次に会ったのはソレーだったね。ちょーっと硬すぎるモンスターにどうしようもなく困ってた私たちを助けてくれたのを今でも覚えてるよ』
「ミウロゥ……」
『その次にミルリ。傭兵を募集したらやってきた強者。全くの考え無しかと思ったら全然そんなことなくて、今でもこうして私を守ってくれている』
「大将の方がよっぽど強ぇけどな!」
『そしてヘクサ。砂漠の街で魔法の罠から私を助けてくれた恩人。あなたの秘密を不意に知ってしまった時は驚いたけど、それでもヘクサはヘクサ。今もこうして私を助けてくれている』
「ミウロゥちゃん、私は……ッ!」
『だからこそ』
4人の顔をそれぞれ見渡してからミウロゥは言葉を1度きり
『皆は皆の人生を歩んで欲しいんだ。助けられてばかりの私が言えたことじゃないのは分かってる。でも、それでも、私なんかのために最後の時まで自分を犠牲にして欲しくない。あの戦いで世界は平和になったんだよ? もう、私のワガママに付き合わないでいいんだよ』
今回もお読み頂きましてありがとうございます。
宝石はちゃんと宝石言葉を吟味してから選んでいます。
愛ですよ、愛。
というかそんな旅してきたの……?(他人事)




