ep.15
『おー、ギルドマスター。久しぶり』
「久しぶりだな。というかいつの間に声が出るようになったんだ?」
『これ、ヘクサからの贈り物。あの子のお陰でこれを通して声を出してる』
「へぇ? ようやくあのおてんば娘も勇気を振り絞ったか」
クツクツとギルドマスターと呼ばれた女性は笑う。
「そっちは?」
「リベットだ。異界からやってきたばかりでな。この世界を旅したいと思っている」
「ほぅ、異界人か。私の名前はマエロ。ここのギルドマスターをやっている。よろしくな」
カウンターの向こう側からゆっくりと歩いてきて俺の前で手を差し出すマエロ。
握り返すと
「ふむ……随分と面白そうなものを持っているな。精進することだ」
「面白そうなもの……」
『ギルドマスターは自分が触っている相手の情報を見ることができるんだ。ノートとか護符のことを言ってるんじゃないかな』
すげぇな、流石はギルドマスター。
プレイヤーが持ってたら悪用しかしなさそうだが……
「私が言っているのは棍棒のことだ。大方あの筋肉バカが渡したんだろう。アイツはどこだ?」
『みんなバラバラになって旅をしているよ。ミルリは地底世界に潜っていった』
「あぁ、それで平原が少しザワついていたのか。筋肉の代わりに常識を入れるように今度言っておいてくれ」
『詰め込む隙間もないと思うけどね』
筋肉でミッチミチだろうしな……
「さて、ここも少しうるさくなってきた。私の部屋へ2人とも来るといい」
『いいの?』
「良いも悪いもお前が軽率にソレを見せるからザワついているんだろう」
『私には関係の無い話だし』
と言いながら引きずられるミウロゥ。
とりあえず着いていくか。
「全く……ギルドの偉いさんが考えることはよく分からないねぇ」
『押し付けられたんだからしょうがないでしょ』
「それでも軽率に出すなって言ってるのよ。お前は冒険者ギルドの中でもトップレベルで有名なんだぞ」
「そうだったのか」
『そうだったみたい』
完全に他人事じゃねぇか。
「はぁ……で? なんでリベットに着いていくことに?」
『リベットが自由に旅をしたいらしいからそのお供』
ジロリとこっちを見てくるから一応言い訳をしておくか。
「言っておくが俺は何も頼んでないぞ」
「……だろうな。その目を見れば分かる。勝手に決められて勝手に着いてきてる感じだな」
『同意は取ったから問題ない』
「そういう話じゃない」
そしてまた1つ大きなため息。
大変そうだな、この人……
『そんなにため息つくと幸せになれないよ?』
「もうとっくに幸せだからいい。私の話はいいとして、2人に依頼がある」
そう言ってデスクの引き出しから紙を取り出す。
今回もお読みいただきましてありがとうございます。
ギルドマスターは既婚者です。
お相手は世界中を忙しく飛び回っている郵便配達員みたいな仕事をしています。




