ep.12
森を抜けるとまた平原が広がっていた。
モンスターと戦う冒険者の姿やモンスターがそこらにいるのが見える。
「あっちに見えるのがリニダーの街だ」
セトルが指さす方向を見ると家が見えるし、通りに人がいるのも遠くから見える。
壁とかはないんだな。
「さて、と。俺たちはここでお別れだ」
「もう? 街まで入ればいいじゃないか」
「せっかくの決心が鈍るからな」
そう言って苦笑いを浮かべるセトル。
「まっ、そういうこったな。俺は地底世界で魔王とスパーリングだ」
「私は王都で魔法研究。篭もりっぱなしだから来ないでよね!」
「私も王都の方で祈りを。その後世界各地を巡ります」
「俺は賢者の塔に行く。爺さんから学べることは徹底的に学んでくる」
『私は……うん、リベットと一緒に世界を旅しようと思う』
色んなところがあるんだなー……って
「初めて聞いたんだが?」
『今初めてリベットに言ったもの』
「リベットが寝ている間に少し、な」
「驚きはしたが……それも良さそうだしな!」
「それにリベットはまだ弱いですからね」
「アンタなんて守られるのがお似合いよ」
チミっ子はいつか目にものを見せてやるとして、
「あー、その、なんだ? よろしく?」
『こちらこそ、よろしく』
左手を差し出すと、少し驚いた表情をした後嬉しそうに、左手で握り返してくる。
「あ、そうそう。ミウロゥに着けてあるブローチなんだけど、魔力が切れたら声が聞こえなくなるから注意してね」
「その時はどうすればいい?」
「私に連絡を頂戴。と言っても他のみんなが会わないのに私だけ会うのもズルだから、私の知り合いを紹介することになるけど」
「その辺しっかりしてるのがヘクサらしくていいですね」
「そ、ソレー!」
ポカポカとソレーを叩くヘクサ。
「ま、まぁいいわ。それに早々魔力が切れることなんてないと思うし」
「どれくらい持つ予定なんだ?」
「そうね……ざっと、500年くらいかな?」
「めちゃくちゃ余裕じゃねぇか」
どんだけ詰め込んだんだよ。宝石の中が魔力でギッチギチになってそうだな?
「まぁ、万が一ってこともあるだろうし、はいコレ」
「なんだ、このカードは?」
「私の連絡先。それを使って連絡を取ってちょうだい。何も無いのに連絡してきたら燃やし尽くすわよ」
「いやしないけど……」
それはそれで怖い。
「なら俺も渡しておくか。もしも賢者の塔に興味が沸いたら連絡してくれ。紹介状をだそう」
「んじゃ俺も! と言っても地底世界だからなぁ……もしそっち方面に来るなら連絡くれ。あそこはミウロゥ1人じゃ危険だし、お前を護りきれるとも限らん! 知り合いに案内をさせるからな!」
「私からも。教会にお世話になることがありましたら、こちらをお見せして頂ければ、何かと融通を効かせるよう通達しておきますので」
『私のも渡しておくね。近くにはいるようにするけど、もしかしたらがあるかもしれないし』
ソレーだけなんか怖いんだが……
【住民カードを入手】
〘連絡先が書かれたカード。使用することで住民と離れていてもいつでもやり取りができる〙
「有難く貰っておくよ。必要になったら使うかもしれないな」
多分その程度でいいんだろう。
「んじゃ今度こそお別れだな!」
「またいつか会おう」
「わ、私が一番最初にミウロゥちゃんの元に行くからね!」
「では皆さんどうかお元気で」
ソレーとヘクサが同じ方向へ。王都に直接向かうんだろう。
セトルは彼女たちとは逆方向に。そっちに賢者の塔があるんだろうな。
で、最後の筋肉バカは
「あー……あれ言ったほうがいいのか?」
『別にいいよ。あっちの方が楽だっていつも言ってるし』
だからといって地面を高速で掘るとは思わんだろ……
ほら、気になって平原にいたプレイヤーっぽいのが集まってきたじゃないか。
『行こう、リベット。まずは最初の街、リニダーだ』
「お、おう」
左手を掴んで、楽しそうに街へと向かうミウロゥ。
まぁ、楽しければそれでいいか。
ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
彼らについてはchapter1の後半に再登場の予定です。
設定だけは全員豪華のくせにその出番がない……




