ep.EX-0
ミウロゥ達の過去話みたいなものです。
この前に本編を更新しているので、ご注意ください。
あとこの話は読まなくてもいいようになっております。
「おーい、大将!」
薪割りをする手を止め顔を上げる。
そこにはミルリと彼と同じくらい大きな鳥を片手で持ち上げながらこっちに手を振っていた。
鳥がぶらんぶらんしてるけど。
「デケェの捕ってきたからよぉ! 捌いてくれねぇか!!」
少し離れた場所にいるはずなのに、それでも声が聞こえてくる。
私は斧を地面に置いて、左手で振り返す。
「見ろよ、これ! すげぇ立派だろ!!」
私が見上げないと上が見えないくらいには立派だ。
とりあえずミルリの腰を強めに叩いてわかっていることを伝える。
「そうだろそうだろ! コイツならしばらくは持つだろうし、大将なら上手いことやってくれるに違ぇねぇからな!」
まぁ、それはそれとして声が上から落ちてくるからうるさいし、重いんだけど。
まぁいいか。
とりあえずミルリの後ろからなんとか押して……押し、て……
「お、おお? 分かった分かった。さっさと戻ろうぜ。ちみっ子がうるさくて適わんしな」
私をもう片方の手で抱き抱えてミルリが歩いていく。
この体勢は楽でいい。
「……んだありゃ……」
しばらく揺られていると、急にミルリが立ち止まった。
顔を上げると、私たちの小屋……もとい家から煙が上がっていた。
「まーたちみっ子が失敗しやがったのか。直すのはこっちだってのに……」
ヤレヤレと首を横に振っているのがなんとか見える。
いつもお疲れ様。
「帰ったぞー」
「おかえりなさい、ミルリ、ミウロゥ。その鳥は……」
私たちを出迎えてくれたソレーが鳥に驚いている。
うん、気持ちはわかるよ。
「おう、捕ってきたぞ! 大将に捌いてもらおうと思ってな!」
「それはいいが……その前にあれを直してやってくれ」
椅子に座って本から目を離さないまま指だけで扉をさしているセトル。
あーあ……扉が無くなってるよ。
「まーたやらかしたのか、このちみっ子はよぉ」
「う、うるさい! 実験に失敗はげほ、付き物なのよ!」
呆れ顔でヘクサを見下ろすミルリ。
うん、あっちはあっちに任せてこれを何とかしよう。
んー……
「どうした、ミウロゥ? この鳥を……持ち上げればいいのか?」
さっすが私の幼なじみだね。
そうそう、その通り。
それじゃ……
「待ってください。お皿を用意しませんと」
「助かる、ソレー」
おっとそうだったそうだった。
それでこの間叱られたばかりだ。
それじゃ改めて……
「流石だな」
「えぇ、流石ですね」
うん、いい感じに捌けたし、お肉は下に置いてある皿の上に全部載った。
にしても……量多いね。
「ではこちら調理してしまいますね」
「頼む。ミウロゥ、なにか飲み物でも出そう、座っててくれ」
セトルに押されるようにして椅子に座らされてしまった。
それならお言葉に甘えて待っていようかな。
「ったくよぉ……実験だのなんだのするのは結構だが、こっちにまで迷惑かけるんじゃねぇっての」
「仕方ないでしょ。いい所で失敗しちゃったんだから」
「だから、その失敗をしねぇようにするのが実験なんだろうが」
「実験に失敗は付き物ですー! 脳みそが筋肉のバカに教えられるまでもありませんー!」
「へーへー、それなら次からは自分で直してくれや。俺ぁ知らねぇぞ」
「何よ! この間だって私がいなかったらアンタ串刺しだったくせに!」
「お前がいなくても何とかなったわ! 大体あの時もお前が間に出てくるから面倒なことになったんだろうが!」
ありゃりゃ……あれはまた一悶着ありそうだ。
「うるさい奴らだ。静かにすればいいものを」
目の前にコップを置くセトルに片手を上げる。
「いいよ、気にしなくても。俺がやりたくてやってるだけだ」
どうやら伝わったようで何より。
「もー! あったまきた! 表でなさい! 灰になるまで燃やし尽くしてやる!」
「いい度胸じゃねぇか! お前こそ地面のシミにしてやらぁ!」
……とりあえず水を飲んでから。
「どうする、ミウロゥ?」
席を立ってセトルの傍に近寄る。
外へ向けて指をさすと、
「分かった。ソレー、俺達も外へ行くぞ」
「分かりました。恐らく大丈夫だとは思いますが……」
「それでもだ。万が一があるだろう?」
外へ出ると、2人は睨み合っていた。
ヤレヤレ……
「誰でもいいから合図頼む! このガキンチョを分からせてやる!」
「だぁれが、アンタみたいな脳みそ筋肉バカにやられるもんですか!」
近くにあった枝を手に取り、軽く上へと放り投げる。
クルクルと枝は回転しながら私たちから少し離れた地面へと落ちていき、
「喰らいなさい!」
落ちると同時にヘクサが両手を上に構える。
そこには透明で巨大な剣が浮いていた。
「ハッ! その程度の剣で俺とやり合おうってか!! おもしれぇ……かかってこいやぁ!」
ミルリは両手に剣……というかただの棍棒を持つと、空中に浮かぶ巨大な剣に対して構える。
「死になさい!!」
ヘクサが両手を振り下ろすと、その動きに合わせて剣もまた勝手に振り下ろされていく。
速さはかなりあるね。
「どらぁ!」
ミルリが弾き返すも、少し戻っただけでまた剣は振り下ろされていく。
何度も何度も、少しずつ速さを上げていき、ついには残像しか残らなくなった。
けど、うーん。
「随分と速いですね……」
「目で追うのがやっとだな」
なるほど、2人にはそう見えているのか。
剣は大きくて速ければそれでいい、なんてヘクサは考えてそうだけど、実はそうじゃない。
的確に何度も何度も同じ場所に当て続ける技術が必要だ。
だからこそ、
「あ!」
「どっらぁ!!」
こんなことになる。
ヘクサが創り出した剣に大きくヒビが入ったが、もう遅い。
ミルリが両手で持った棍棒をクロスさせながら剣に当てれば、ほら。
「壊れましたね……」
「まさかあの一点だけを狙い続けていたのか」
ようやく分かったか。
そこを見極められなければまだまだだね。
「うぉぉぉぉぉらぁ!!」
「甘いっ!」
1度の跳躍でヘクサの近くまで跳んだはいいけど、当然ヘクサだって対処してる。
あれは魔法の障壁か。
それを自分の周囲を囲うように展開しているんだね。
「ぐっ……こ、この……ッ!」
「放ち貫け、魔法の矢よ!」
頭上から更に矢まで降ってきた。
跳ねるように1度2度、3度回ってようやく離れたと思わせて、そこに矢の大雨。
さてどうするかな。
「うぉぉぉぉぉ!!」
「んなっ、嘘でしょ!?」
ミルリの取った行動はただ1つ。
自分の目の前の地面を持ち上げて上に放り投げること。
確かにそれで矢は防げるけど、魔法の障壁はどうするのかな?
「行くぞぉぉぉぉ!」
おぉ、ジャンプして放り投げた地面を足場に更に上へ飛んだのか。
上からの落下攻撃はかなり強いからねぇ。
私もよく使ったものだよ、うん。
「……あの、ミウロゥはさっきから頷いてますが……」
「彼女にしか分からないことがあるんだろう、多分」
魔法の障壁と棍棒がぶつかる。
さて、勝負ありかな。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ご、『業火よ、今柱となりて敵を』」
「遅せぇ!!!」
あ、追撃で上から棍棒が落ちてきた。
いつの間に投げてたんだ?
「俺の……勝ちだ!」
「そ、そんな……」
ヘクサに棍棒を突きつけるミルリ。
まぁ甘くみすぎた結果だよね。
とりあえず2人の近くに歩いていく。
「おお、大将! 見てたか、俺の圧倒的なパワー!」
とりあえず腰の辺りを思いっきり叩いて、脛を思いっきり蹴り上げておこう。
「いっっっっ!?」
「み、ミウロゥちゃん……あの、その……」
とりあえず手を差し出すと、ヘクサは恐る恐る手を掴んでくれる。
立ち上がったところでギュッと抱きしめる。
背中をポンポンと優しく叩いて……あの、脱出できない……
まずはお読みいただきましてありがとうございます。
息抜きついでに書いてみたかったものを書いた結果がこれになります。
もっと上手いこと書けたのではと思いつつ、ミウロゥは元々呪いで喋ることが出来ないため、彼女視点で物語書く必要があったり……と言い訳をしてみたり。
前書きにも書いてますが、この話は読んでも読まなくてもいいようになっております。
特に本編と関わることもないと思うので。
こういった事が昔あったよ、とただそれだけの話ですので。




